胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第二章

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朝日が昇る頃、鉄堅は目を覚ました。ひんやりと空気が冷たくて、思わず隣で寝ている葉月のことが心配になった。手を伸ばして葉月が凍えていないか確かめる。葉月は、ちゃんと、頬は赤く、ぬくぬくと気持ち良さそうに寝ていた。その健康そうな寝顔にホッと安堵のため息を吐く。

「良かった、葉月ちゃん、熱もないね」

おでこをそっと、触って、乱れた前髪を整えて、鉄堅は手を戻した。

時計を見ると朝の5時だった。まだ起きるには早い。しかし、もう目が覚めてしまったので、そのまま、ぼんやりと葉月の顔を見ていた。

葉月は、自分の派手な顔が好きでは無いとよく言っていたけれど……鉄堅は葉月の顔がとても好きだった。今は閉じて見えないパッチリとしたはしばみ色の二重の瞳も、品の良い鼻梁も、薄い唇も、柔な頬も、ニキビ一つない綺麗な肌も葉月を作る一つ一つのパーツがこの世で一番美しいと思えた。

小さな頃は、女の子に見間違えられて、よく憤慨していた葉月だったが、正直、どんな女の子よりもずっと可愛いと思ってた。
しかしそんなことを言おうものなら、憤怒された上に絶交を言い渡されるのが目に見えていたので、鉄堅は懸命に我慢して葉月を褒め称えないようにしていた。

こんなに心の底から欲しいと思う人にはもうきっと会えないだろうと子供ながらに知ってた。思ってたんじゃない、知っていたんだ。

小さな頃から葉月への想いは変わらない。見つめるだけで、ドキドキして、勝手な好意を向けるのに罪悪感を覚えるほど想いは募る一方だ。

鉄堅の焦がすような視線が居心地が悪かったのか、葉月の目蓋がヒクヒクと動いた。

「うーん、ふぁ、ん?鉄堅、おはょ」

葉月が、目を覚ました。横にいた鉄堅を見つめて、笑うその笑顔にくらくらしながら、咄嗟に鉄堅も、今、目が覚めたふりをした。

「おはよう葉月ちゃん」
「寝袋快適だったな、割りとぐっすり寝れた、ちょっと首が痛いけど」
「湿布はる?」
「そこまでじゃないけど、お前は何でも持ってるな、その鞄は何が他につまってるんだ?」
「必要になりそうなものは全てだよ。備えあれば憂いなしだからね」
「用心深いなぁ」

葉月がケラケラと笑う。確かに自分でも用心深いと思うが、葉月を笑わせる事ができたなら良かった。

無精にも寝袋に入ったまま鞄からパンと水ををだして、朝食とすることにした。少し昨日よりは固くなってしまっていたが、水と飲み込めば大丈夫だった。

食べ終わった後は、どちらからともなく、荷物を片付けはじめた。リュックにまた重いものは上軽いものは下の法則で詰め込んでゆく。だいたい片付いたところで、葉月が立ち上がった。

「さてと、受付に挨拶して、行くか」
「うん」

楽しかった初日キャンプ。次の目的地は、京都だ。ここからは一気に長丁場になる、乗り換えも何回かあるし。練りに練ったプランに抜かりはないはずだが、旅にハプニングはつきもの、心して行かなければならない。

京都では、鉄堅の親が二人に宿の予約を取ってくれていた。老舗の結構良い宿らしくて楽しみである。





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