胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

文字の大きさ
57 / 120
第二章

55 彦根城

しおりを挟む
静岡駅から、京都までは、まず静岡駅から浜松まで17駅通過したのち、豊橋駅行きに乗り換え8駅、大垣駅行き14駅、米原まで6駅、米原から19駅でやっと京都だ。

「葉月ちゃん、6時33分に乗れれば静岡から豊橋まで25駅一気に行けるけどどうする?」
「25駅えぐいな……まぁ、それに乗るか」
「そうだね、じゃ、ちょっと早足でもいい?」

「おぅ、なんなら走っても良いよ、元気だし」

葉月がそう言うなり、ばっと走り出したので、鉄堅もついて走る。

「葉月ちゃん、坂だから気をつけて」
「お前、俺を運動音痴みたいに言うなよ、短距離走者だったけど、山登りダッシュくらいやってんだからな」

太ももの筋肉をつけるために、坂道ダッシュは運動をする者の嗜みのようなものだ。

「でもそれって……あ、あぶない」

言ってるそばから、葉月が転びそうになったので、鉄堅が急いで後ろから葉月のリュックを引っ張って助けた。

「うおぉ、さんきゅ」
「葉月ちゃん、坂道ダッシュは登りだから」
「……下りの荷物背負ってダッシュあぶねぇな、うん、早足にしよう」
「そうだね」

ホッとしつつ、鉄堅は時計をみた。少し走ったお陰でだいぶ余裕をもって駅につきそうだ。コンビニでまた何か買って乗り込むのが良いかしら。

「葉月ちゃんお腹すいてる?」
「いや、さっきパン食べたしな」
「軽めに何か買って、京都に昼過ぎに着く予定だから、お昼を奮発しようか」
「それ、名案。そーしよ、お菓子とかまだあるし、またパンで良いや」

昨日からパンばかり食べてるけど、男2人、バランスの良い食事にあまり興味がない。野菜や彩りよりも、どちらかといえば、肉である。

「京都って何がうまいのかなぁ、八つ橋しか知らない」
「湯葉?」
「湯葉……まぁ、湯葉はうまいけど、なんだろう、俺の腹は今は湯葉を求めてないなぁ」
葉月が、うーんと、首を傾げた。それはヤバい。

電車に乗るなり、鉄堅はスマホを取り出し、リサーチを開始する。

あぶない、あぶない、湯葉専門店を巡る計画を立てていた。予定変更である。

「にしん蕎麦とか、京都ラーメンとか……あとはやっぱり和食が有名みたい」
「うーん、ラーメンかなぁ」
「だねぇ」
「ラーメンがいい、めちゃラーメンの気持ちになってきた」

 葉月がラーメンラーメン言いだしたので、鉄堅は微笑んだ。今晩泊まる宿屋の夕飯はおそらく和食だから、ラーメンなら被らないし。
素晴らしい選択だ。流石葉月ちゃん。

「じゃぁ、お昼はラーメンだね、ちょうど駅に有名なお店が」
「混んでそうだけどな」
「だねぇ」
「ま、観光地だしどこも混んでるか」
「だねぇ、ラーメン食べた後行きたいところある?」
「清水寺とか?」
「バスでだいたい30分くらいで行けるかな」
「おお、あ! あと、あそこ行きたい、鳥居がズラーってあるとこ」
「伏見稲荷大社かな、千本鳥居がある」
「それそれ」

「じゃぁ、清水寺行った後に行こう」
「鉄堅は? 行きたいとこないの?」
「どっちも行きたかったから」
「そっか、ならいっか、楽しみ」

ワクワクが止まらない。何だかんだ計画をたててたら、25駅があっという間、豊橋に着いた。




◆◇◆

京都までは、まだ電車に乗るわけだが、豊橋から飯田線に乗ると、鍾乳洞とか、長篠・設楽原の戦い決戦場跡、色々と面白そうなスポットがある。スマホを見つつ、東海道本線をひたすら進む。大垣、米原ときて、琵琶湖線に乗り変えた。

葉月がふと、琵琶湖線に反応する。

「琵琶湖見たいかも」
「じゃぁ、彦根で降りて、彦根城みて琵琶湖見に行こう、地図見るとすぐだよ」
「ほんとだ」

彦根駅で降りて真っ直ぐいくと、お城がすぐ見えた。

「わー立派だ」
「国宝だよ、凄い石垣だね」
「昔の人って凄いな、こんな大きな石を積んでその上に城を建てるなんてさ」
「本当だね」

写真で見るのとは違う、実際に自分の目でみた彦根城はとても美しかった。

「彦根城、20年かけて築城されたんだって」

「20年! 今ってさ、家すぐ立つじゃん、それも凄いんだけどさ……何年も何年もかけて作る情熱って凄いよな」
「本当だね」

何年も何年もずっと一つの事をやり遂げる壮大な計画。本当にできる保証なんてない、やったことが無駄になるかもしれない怖さに打ち勝って、悠然と建つ城はかっこ良かった。

葉月は、隣に立つ、鉄堅の手をぎゅっと、握った。

色んなことにゆらゆらと揺れる心、だけれど、何年も何年もずっと同じ想いで、共に立っていたい。
諦めないで、くじけないで、投げ出さないで、二人で乗り越えていきたい。

「この城みたいに……ずっと」
「うん」

全部を言葉にしなくても、二人は同じ気持ちだったので、見つめ合うだけで、お互いの望むものが同じだとわかった。

悠久の時を、二人で歩いて行きたい。何度約束をしても、結果だけが本当になるのだろう。嘘つきになりたくない。逃げたくない。簡単なことに価値も意味もない。築き上げていくんだ。一つ一つ、重い石を運びながら、石を運ぶことにくじけないで、大きな何かを成し遂げるための布石だって誇りがきっと城になる。


























しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。 ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。 「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」 そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。 完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか? 初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

処理中です...