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第二章
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大阪環状線、今宮乗り換えの難波で降りた。道頓堀川まで歩いて行ってみる。
「さすがに観光客が凄いな」
「だね」
「お、ここら辺がテレビでよく見る場所だな」
お菓子のパッケージの有名な絵を見つけて、葉月がパリャリと写メを取る。
「葉月ちゃん……聞きたかったんだけど、いつもメール誰に送ってるの?」
「ん? 父さん」
「あ、お父さんか、そっか」
鉄堅は、何気にずっと気になっていた、葉月がそんなに頻繁にメールを送る相手の事。
父だと聞いて、ホッとする。友達じゃなかった。いやべつに、葉月ちゃんが誰と仲良くしてても、文句なんか言う気はないけれど、心の中にどれくらいの割合でその人が居るのだろうと気になって仕方がなかったから。
完全な嫉妬だって解ってるけれど。するなと言われても、こればかりは勝手にしてしまうもので。
心狭いのは重々承知。
でも、どうしても、怖いのだ。葉月が幾ら好きだと言ってくれても。
明日には居なくなるかもしれない。
何度約束しても、何度誓い合っても、信じていても。
こんなに葉月が居なくなることを怖がるなんて情けないと思うし、ばれたら怒られるかもしれないし、それこそ嫌われるかもしれない。
自分はずっと葉月が好きだと確信があるのに、葉月が自分を好きでいてくれる自信がない。
どんなにどんなに葉月の情報を集めて、葉月のことを知っても、心の中までは覗けない。いつか葉月を奪っていく人が現れるのが怖くて仕方ない。
ツガイになりたい。結婚をしたい。唯一になりたい。替えのきかない存在になりたい。
葉月がもっと依存して、僕だけを求めてくれたら───。
「なぁ、鉄堅。お好み焼き」
「ハッ、あ、うん。どこ行こうか、この路地裏に有名なお店の本店があるよ」
「じゃ、そこ」
「良いの?」
「良いよ、お前が調べてくれたとこに行きたい」
「は、葉月ちゃ……僕、これから、幾らでも調べるからずっと何でも調べるからね」
「なにそれ、お前もうちょっと、そんなに……俺を大事にしなくて良いよ」
葉月の発言の意図が解らなくて、鉄堅は戸惑った。
「え?」
「なんか、大事にされ過ぎて怖くなるから」
「怖がらせてる!? やっぱり、僕、気持ち悪い?」
サッと顔色が変わる。気持ち悪がらせていたなんて。何処を直せば良いだろう、調べるのがだめなのか?
「いや、だから、なんか、お前に頼ってばかりでカッコ悪いから……ほどほどで良いっていうか、お前がいなきゃだめになりそうでさ」
葉月が、かぁっと顔を赤らめて、視線を反らす。
「お前は何だって一人でできるのに、俺は頼ってばかりとか、かっこ悪いから……いつか、あきれられるんじゃないかって、ちょっと、こわい」
「あきれたりしないよ、するわけない、絶対ないよ」
あきれる処か、日に日に好きになって、どうしたらもっと独占できるかばっかり考えてる。
「だって俺、もうお前に嫌われたくないもん」
嫌う? 嫌う要素がどこに?
「嫌いになんかなれないよ、あっ、記憶がなかった時はごめん!! あれは本当に僕が悪くて、嫌ってなんかなかったのに、自分の気持ちが解らなくて嫌な思いさせてごめんね」
あの時は本当にどうかしてた。葉月ちゃんのことが解らないなんて本当に万死に値するくらい愚かな。
「鉄堅は何も悪くないだろ、悪かったのは俺なんだから」
「葉月ちゃんが悪かった事なんてないよ、僕が全面的に悪い、記憶がなかった時も、あった時も……嫌がってる葉月ちゃんを追い回したり、本当に、昔はひどかった、自分の事しか考えてなくて、でも、どうしてもそばにいたくて、子供だったからどうしたら良いか解らなくて、短絡的に実際にそばにいればずっといられると思ってて……でも、嫌だったよね」
北風と太陽みたいに、ずっと葉月が嫌がることをしてて、それで拒絶されたのだから自業自得なのに。
もっと好きになって欲しいなんて強欲すぎた。
「あーーなんか、だめだな俺達」
「エッ」
鉄堅の顔がサァっと青ざめる。本当に嫌われた? やっぱりだめだった?
葉月が鉄堅の顔をみて、へへって笑う。
「過去に囚われすぎて、今を見失うっていうか……よし、お好み焼き食べよ」
「えっ、えっ、葉月ちゃん」
「だーから、今を積み重ねてこ、もう過去は変えられないから、後悔してたって仕方ないから、今、もっとお前に好きになってもらえるように俺も頑張るから」
ぐいっと、葉月に手を引かれる。暗い店内に、葉月が先陣をきって入ってく。
「ずっとお前と生きたいから、頑張るよ」
「!!」
「俺についてこいって言える人間になれるよう頑張るから、お前ばっかり頑張るな、一緒に……悩んでも惑っても、ずっと一緒にいたいから」
「うっ……葉月ちゃ……ん、大好き」
だめだ、好きすぎてつらい。本当に好きだ。気持ち悪いくらい好きだ。君が好きだ。
感動で心が打ち震える。好きで心が一杯になる。
目の前の清々しい人に、怨念みたいな気持ちでまとわりついてるのに、許してくれる。ずっと一緒に居たいから頑張るなんて言ってくれる。
嫉妬も独占欲も許されていく。君だけを求める気持ちを許される事が、どれだけ嬉しいか。
「一緒に……どこまでも」
「おぅ!! よし、お好み焼きともんじゃ頼も、お前って、もんじゃみたい、あはは」
「エッ」
目の前に運ばれてきた、もんじゃを見つめる。べちゃぁ、ぐちゃぁ。確かに。僕みたい。
「こうやってさ、土手をつくって、中に流して焼くんだよ、お前みたいだろ?」
「え?」
「中身が熱いっていうか、優しいっていうか、周りは固そうなのに、んーー意味解んないか、やっぱ、なし」
「……」
べちゃぁ、ぐちゃぁの方じゃなくて? 中身を褒めてくれてるの? う、嬉しい。
「じゃぁ、葉月ちゃんはお好み焼きだね」
「はぁ?」
「まん丸お月様みたいに、綺麗で完璧で素敵で……凄く美味しそう」
「……お前にいつか食われそう」
チロッと葉月に睨まれて、血が沸騰する。そうだよ、食べちゃいたい。いつか君が欲しい。
「さすがに観光客が凄いな」
「だね」
「お、ここら辺がテレビでよく見る場所だな」
お菓子のパッケージの有名な絵を見つけて、葉月がパリャリと写メを取る。
「葉月ちゃん……聞きたかったんだけど、いつもメール誰に送ってるの?」
「ん? 父さん」
「あ、お父さんか、そっか」
鉄堅は、何気にずっと気になっていた、葉月がそんなに頻繁にメールを送る相手の事。
父だと聞いて、ホッとする。友達じゃなかった。いやべつに、葉月ちゃんが誰と仲良くしてても、文句なんか言う気はないけれど、心の中にどれくらいの割合でその人が居るのだろうと気になって仕方がなかったから。
完全な嫉妬だって解ってるけれど。するなと言われても、こればかりは勝手にしてしまうもので。
心狭いのは重々承知。
でも、どうしても、怖いのだ。葉月が幾ら好きだと言ってくれても。
明日には居なくなるかもしれない。
何度約束しても、何度誓い合っても、信じていても。
こんなに葉月が居なくなることを怖がるなんて情けないと思うし、ばれたら怒られるかもしれないし、それこそ嫌われるかもしれない。
自分はずっと葉月が好きだと確信があるのに、葉月が自分を好きでいてくれる自信がない。
どんなにどんなに葉月の情報を集めて、葉月のことを知っても、心の中までは覗けない。いつか葉月を奪っていく人が現れるのが怖くて仕方ない。
ツガイになりたい。結婚をしたい。唯一になりたい。替えのきかない存在になりたい。
葉月がもっと依存して、僕だけを求めてくれたら───。
「なぁ、鉄堅。お好み焼き」
「ハッ、あ、うん。どこ行こうか、この路地裏に有名なお店の本店があるよ」
「じゃ、そこ」
「良いの?」
「良いよ、お前が調べてくれたとこに行きたい」
「は、葉月ちゃ……僕、これから、幾らでも調べるからずっと何でも調べるからね」
「なにそれ、お前もうちょっと、そんなに……俺を大事にしなくて良いよ」
葉月の発言の意図が解らなくて、鉄堅は戸惑った。
「え?」
「なんか、大事にされ過ぎて怖くなるから」
「怖がらせてる!? やっぱり、僕、気持ち悪い?」
サッと顔色が変わる。気持ち悪がらせていたなんて。何処を直せば良いだろう、調べるのがだめなのか?
「いや、だから、なんか、お前に頼ってばかりでカッコ悪いから……ほどほどで良いっていうか、お前がいなきゃだめになりそうでさ」
葉月が、かぁっと顔を赤らめて、視線を反らす。
「お前は何だって一人でできるのに、俺は頼ってばかりとか、かっこ悪いから……いつか、あきれられるんじゃないかって、ちょっと、こわい」
「あきれたりしないよ、するわけない、絶対ないよ」
あきれる処か、日に日に好きになって、どうしたらもっと独占できるかばっかり考えてる。
「だって俺、もうお前に嫌われたくないもん」
嫌う? 嫌う要素がどこに?
「嫌いになんかなれないよ、あっ、記憶がなかった時はごめん!! あれは本当に僕が悪くて、嫌ってなんかなかったのに、自分の気持ちが解らなくて嫌な思いさせてごめんね」
あの時は本当にどうかしてた。葉月ちゃんのことが解らないなんて本当に万死に値するくらい愚かな。
「鉄堅は何も悪くないだろ、悪かったのは俺なんだから」
「葉月ちゃんが悪かった事なんてないよ、僕が全面的に悪い、記憶がなかった時も、あった時も……嫌がってる葉月ちゃんを追い回したり、本当に、昔はひどかった、自分の事しか考えてなくて、でも、どうしてもそばにいたくて、子供だったからどうしたら良いか解らなくて、短絡的に実際にそばにいればずっといられると思ってて……でも、嫌だったよね」
北風と太陽みたいに、ずっと葉月が嫌がることをしてて、それで拒絶されたのだから自業自得なのに。
もっと好きになって欲しいなんて強欲すぎた。
「あーーなんか、だめだな俺達」
「エッ」
鉄堅の顔がサァっと青ざめる。本当に嫌われた? やっぱりだめだった?
葉月が鉄堅の顔をみて、へへって笑う。
「過去に囚われすぎて、今を見失うっていうか……よし、お好み焼き食べよ」
「えっ、えっ、葉月ちゃん」
「だーから、今を積み重ねてこ、もう過去は変えられないから、後悔してたって仕方ないから、今、もっとお前に好きになってもらえるように俺も頑張るから」
ぐいっと、葉月に手を引かれる。暗い店内に、葉月が先陣をきって入ってく。
「ずっとお前と生きたいから、頑張るよ」
「!!」
「俺についてこいって言える人間になれるよう頑張るから、お前ばっかり頑張るな、一緒に……悩んでも惑っても、ずっと一緒にいたいから」
「うっ……葉月ちゃ……ん、大好き」
だめだ、好きすぎてつらい。本当に好きだ。気持ち悪いくらい好きだ。君が好きだ。
感動で心が打ち震える。好きで心が一杯になる。
目の前の清々しい人に、怨念みたいな気持ちでまとわりついてるのに、許してくれる。ずっと一緒に居たいから頑張るなんて言ってくれる。
嫉妬も独占欲も許されていく。君だけを求める気持ちを許される事が、どれだけ嬉しいか。
「一緒に……どこまでも」
「おぅ!! よし、お好み焼きともんじゃ頼も、お前って、もんじゃみたい、あはは」
「エッ」
目の前に運ばれてきた、もんじゃを見つめる。べちゃぁ、ぐちゃぁ。確かに。僕みたい。
「こうやってさ、土手をつくって、中に流して焼くんだよ、お前みたいだろ?」
「え?」
「中身が熱いっていうか、優しいっていうか、周りは固そうなのに、んーー意味解んないか、やっぱ、なし」
「……」
べちゃぁ、ぐちゃぁの方じゃなくて? 中身を褒めてくれてるの? う、嬉しい。
「じゃぁ、葉月ちゃんはお好み焼きだね」
「はぁ?」
「まん丸お月様みたいに、綺麗で完璧で素敵で……凄く美味しそう」
「……お前にいつか食われそう」
チロッと葉月に睨まれて、血が沸騰する。そうだよ、食べちゃいたい。いつか君が欲しい。
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