胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第二章

62 大阪

テーマパーク内に、大荷物を担いで行くわけにいかないから、パーク前のコインロッカーに預けることにした。

葉月は、ぎゅうっとロッカーに二人分のリュックを詰め込んでバタンと、蓋を閉じた。

「よし、身軽になった、今日は名古屋で宿泊予定だから15時くらいで切り上げだな、時間内めいいっぱい遊ぼう」
「うん」

早速行こうとした時、鉄堅に腕を取られた。ぐいっと引っ張られて、ちと、よろける。

「おぃ、何だよ」
「ごめ、待って葉月ちゃん、先に予約しとかないと入れないエリアがあるらしい」

壁に書かれた注意書きをガン見している。ご親切にQRコード付きだ。よく、気づいたな。

「まじか」
「スマホで予約しちゃうね」
「鉄堅……お前、仕事できるやつだな」
「葉月ちゃんとの時間を最大限に楽しみたいだけだよ、余計なこと省いて葉月ちゃんに集中したい」

何故そんなに……と、思わなくもないが、二人の時間を大切に思ってくれてるなら良いか。

「できた、じゃ、行こうか」
「よっしゃ、片っ端から乗ってやる」

パンフレット片手に、手近な所へ入っていく、見たことが有る映画と、知らない映画と、長蛇の列とすぐ入れる所と、鉄堅が言うように予約まで必要なエリアや、とにかく色々。中でも、小さい頃よく遊んだゲームの世界を模したエリアは最高に楽しかった。
チュロス、ポップコーン、ピザを食べ歩き、乗り物はジェットコースター意外ほとんど制覇、陽気に被り物なんかも土産物で見たり、あっという間に時が過ぎていく。
「流石にちょっと疲れてきたな」
「そうだね、名残惜しいけど、そろそろ出ようか」
「まぁ、だいたい制覇したし、満足」
「だね、かなり効率よく回れた」
「来たかったんだよ、鉄堅と来れて良かった」
「僕も、夢みたいに楽しかったよ」

鉄堅は、葉月と過ごす遊園地デートに感動していた。遊園地デートなんて、自分にできると思ってなかったから。非日常な世界観の中で、葉月と過ごすのは、なるほど凄く楽しい。
結婚前に旅に行けと昔からよく言われるが、確かにお互いを知るという意味では、最適かもしれない。

なんせ、一日中、葉月を見ていられるのだから。どんな時にどういう行動をとるか、確実に鉄堅は、葉月のデータを心に貯めてゆく。

もちろん、今まで貯めてきたデータに上書きされて、葉月がより良く快適に暮らせる判断材料になるのだ。

「はぁ、今日もたくさん葉月ちゃんの情報が手に入った」
「は?」
「ごめん、独り言」
「あ、そぅ」

独り言にしては、不穏な。スパイか探偵くらいしか口にしない様なこと言わなかったか?俺の情報を集めてどうする?趣味とやらに使うのだろうか。

葉月は、隣でホクホクしてる恋人を一瞬不審な目でみたが、昔から鉄堅は……ちょっとずれてるから仕方ないと、諦めた。

散々、パークの中で食べ歩いたけれど、大阪といえば……。

「俺、お好み焼き食べたいな」
「そうだね、道頓堀川の方に行ってみようか」
「うん」

すぐ要望に、提案を返してくれる鉄堅との行動がこんなに楽しいとは、昔は知らなかった。
ただ付いてくる影みたいなやつだって、思ってた。
あの頃、もしも今みたいに隣を歩いていたら、きっと楽しい少年時代を送れただろう。

過去を悔いても仕方ないが、やはり、節々で、葉月は思い出してしまう。自分の愚かな行動で、鉄堅を傷つけたこと。

こんなに優しいやつだったのに。

「葉月ちゃん、荷物重くない?」
「大丈夫だよ、お前こそ、傷はもう痛まないのか?足の打撲とか」
「へっちゃらだよ」

痛くても痛いと言わないような気がした。我慢ばっかりさせているような気がして、葉月は、鉄堅の手をとった。

「辛かったり、痛かったり、嫌だったらちゃんと言えよ」
「うん」
「俺はもう、お前に我慢ばっかりさせたくないからな」
「うん」
それでも、言わないであろう恋人の優しい手を。葉月は、ぎゅうっと握った。



◆◇◆

 




















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