胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

文字の大きさ
80 / 120
第二章

78 理想

しおりを挟む
今回の風呂には男風呂、女風呂しかなかった。まぁ、だいたいそうなんだけど、男風呂の混み具合によってはちょっとな。
  
  鉄堅は、葉月に風呂の暖簾をくぐる前に、廊下で待っていてもらおうと声をかけた。

  「葉月ちゃん、ちょっと中見てくるからここで待ってて」
「いいよ、大丈夫だって、もぅ、お前は心配し過ぎだよ、二人で行けばいいよ」

    むしろ、その二人の一方の僕がもしかしたら一番の危険人物かもしれないしね。
    仕方なく、脱衣場にいくと、子供連れの親子が入ってるみたいで、子供の声が聞こえる。

「子供とお父さんなら大丈夫そうだね」
「おう、ちゃっちゃと入っちゃお」

    鉄堅は、なるべく葉月の脱衣をみないようにして、湯気が立ち込める風呂のドアをあける。三歳くらいの男の子と、お父さんが湯船に入ってた。しっかり腰にタオルをまいた葉月を確認したあと、二人で中に入った。 
    ペコッと頭を下げて失礼しますと、挨拶をする。男の子は誰かきたと、大きな声を出したので、お父さんは、シーッてやり取りが微笑ましい。

    身体を洗う所が丁度三つあったので、葉月ちゃんを端に寄せて身体を洗った。男の子が、興味津々でお兄ちゃんたち洗ってるねぇなんてあどけない声に癒される。

「あ、ママ来た」

    その一言に二人は同時に固まった。まて、ここは男風呂だったはず……。頭の泡を流すのが怖い。

    チラッと、鉄堅は、葉月をみた。葉月も鉄堅をみた。どうしよう。このまま頭を洗い続けて家族が出ていくのをまつか?いやだがしかし、男の子が、空気を読まずに、お兄ちゃん達ずっと洗ってるねぇ、なんて発言する。やめて。

「ママ、遅かった」
「ごめんごめん、スマホを部屋の何処に置いたか探しててさ、わりぃ」

まって、ママの声男の人なんだけど。二人はまた固まって、視線を交わす。つまりそういうことなのか。

三つ目のシャワーに、ママ?がきて、鉄堅達に声をかける。

「すみませんね、騒がしくて」
「あ、いえ、こちらこそ……親子水入らずのところへ」

「貸し切り風呂じゃないから、気を使わせたね、なに?大学生?」
「や、まだ高校生です」
「へぇ、何処から来たの?」
「東京です」
「あら、一緒だ」

ママ、凄い喋りかけてくるんですけど!?

「マーマはやくっ!! 」

男の子がトテテテと、こちらに来て、ママに抱きついた。

「ごめんごめん、ちょっとまってね、君達も遠慮せず温泉に入ってね」
「はい、ありがとうございます」

    そっか、僕たちが固まってたから気を使って話しかけてくれたのかと、ホッとする。

   ようやく、鉄堅と葉月は、頭を洗い終え、湯船へ浸かった。いっしょに、男の子を抱っこしたママらしき男性も入ってくる。予想以上に背が高くてびっくり。長い髪に隠された顔は、なかなかのイケメンだった。

「あ、あのっ」

珍しく葉月が、ママに声をかけた。

「あの、その子、あなたが産んだんですか?」

ママは、一瞬、表情を固くしたけど、葉月の真剣な様子に、こくりとうなずいた。

「そうだよ、俺が産んだ」
「あのっ……俺も、えっと、オメガで、その、あなたもオメガなのかなって」

ママは、優しい顔で、そっかと、呟いた。

「男オメガって、あんまりいないもんな、うん、俺もオメガだよ、そんで旦那がアルファ、チビはまだわからないけどアルファぽいと思ってる」

「そうなんですね」

男の子をあやしながら答えてくれて、葉月はニコッと男の子に微笑んだ。

「ママ、お兄ちゃん可愛いね」
「あらら、一目惚れか? だめだぞ、この子はもう恋人いるから、後ろの子、恋人?」

ママが、鉄堅をみる。鉄堅は、すぐに頷いた。その様子をみて、ママはそっかそっかと、旦那にもたれかかった。

「高校生のカップルだってさ、可愛いね」
「懐かしいな、俺達も高校からの付き合いなんだよ、もう10年前か」

旦那さんが、ぽんと、ママさんの頭を撫でるのが愛し合ってる感じが滲み出てる。

「そうなんですね、ずっと……素敵だな」
「ありがとう、君達も早くツガイになれるといいね、彼氏君がんばれよ」
「はい」

鉄堅は緊張した面持ちで頷く。自分の理想が具現化したみたいな家族に、憧れを抱かずにいられなかった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【短編】初対面の推しになぜか好意を向けられています

大河
BL
夜間学校に通いながらコンビニバイトをしている黒澤悠人には、楽しみにしていることがある。それは、たまにバイト先のコンビニに買い物に来る人気アイドル俳優・天野玲央を密かに眺めることだった。 冴えない夜間学生と人気アイドル俳優。住む世界の違う二人の恋愛模様を描いた全8話の短編小説です。箸休めにどうぞ。 ※「BLove」さんの第1回BLove小説・漫画コンテストに応募中の作品です

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。 一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。 ✤✤

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

処理中です...