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第一章
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熱い、苦しい、嫌だ、身体が言うことを聞かなくて、悔しくて、涙が溢れた。もがいても、もがいても抜け出せない繭の中に閉じ込められてる様だった。
「葉月、葉月しっかりするんだ」
父親の声が聞こえた、重い目蓋をあけると、心配する父が、俺を覗き込んだ。
「父さん……苦しい」
「大丈夫、これを飲むんだ」
「うっ、うぇ、ゴクッ」
「大丈夫だから、ここにいるから」
「ううっ、父さん、ごめんなさい。オメガなんかに産まれて、ごめんなさい」
「何を謝るんだ、謝るんじゃない、葉月は葉月だ、俺の大切な息子だよ」
「うっ、ううっ、ごめ……」
深い穴の底へ落ちていくように、俺はまた意識を失った。でも、さっきまでの恐怖は和らぎ、閉じ込められた世界からは抜け出せたような、安心があった。何度も心の中で謝った。オメガなんかに産まれてごめんなさいと。
父親は、謝るな、大丈夫だからと頭を飽くことなく撫でてくれた。高校生にもなって、迷惑かけてごめんなさい。
謝っても謝っても、申し訳なかった。
それからどれくらいの時間が経ったのか、薬が効いたお陰で、葉月は目覚めた。
汗をかいたベットは、湿っていて、シャワーを浴びたいと思った。
部屋の中には既に父がいなくて、時計をみると、夜の4時だった。もう明け方だ。
この時間にシャワーは流石にうるさいかと、仕方なく、リビングへいって水を飲もうと、ベットから降りた。
その時、ぱさりと、自分の身体から落ちたのは、真っ白な上着。
「これ……鉄堅の? なんで」
なぜ、鉄堅の上着が自分のベットにあるのか謎だった。もしかして、助けられたとき、掴んで離さなかったのだろうか。
顔が、カァッと赤らんだ。
恐がって、服を離さないなんて、そんな子供じみた事を自分が鉄堅にしたと思ったら、恥ずかしくて何とも言えない気持ちになった。
落ちた服を拾う。何故か、ふいにそれを抱き締めたいと思った。身体が勝手に動いて、鉄堅の服を抱き締めると、凄く安心したような、満たされたような気持ちが心に広がって、動揺した。
これが、本能なのだろうか。
オメガが本能でアルファを求めるというのは、こういうことなのかと、ガッカリした。
あぁ、やはり自分は、父を捨てた母と同じオメガだったのだ。
いつか自分も母のように、優しい人を裏切る人間になるのだろうか。
どんなに抗っても、アルファに惹かれてしまうのだろうか。
鉄堅の上着を抱き締め、葉月はポロポロと泣いた。
◆◇◆
朝の6時過ぎ。学校に行く準備をしていると、ボサボサ頭の父が起きてきた。
「葉月、起きたのか」
「うん……昨日は、ごめんね、俺あんまり記憶がないけど、ひどかったかな」
どんな恥態を晒したか解らないけど、普通でなかっただろうと情けなくて、うつむいた。
「ひどくなんか無かったよ。ただ、熱があったから、鉄堅君も心配してたよ」
「鉄堅……やっぱり、俺を助けてくれたの?」
「覚えてないか? 路地でうずくまってたお前を家まで運んでくれて、運んだあとは、私に連絡をくれたよ。自分は家の外の玄関でずっと私が帰ってくるのを待っていてくれたんだ。中々できることじゃない、お礼を言わないとな」
「外? だって、上着着てなかったのじゃ?」
「あぁ、薄着で、外にいた。春先とはいえ、夜10時を過ぎていたから、寒かっただろうね、遅くなった事を詫びたけど、大丈夫の一点張りで、本当に立派な態度だったよ」
夜の10時って、1時間も外に居たって事だ。そんなこと、頼んでないのにと、また無意識に反抗的な事を考えてしまって、奥歯を噛み締めた。
そうじゃない。
頼んでないとか、そんな風に思ったらいけない、むしろ、頼んでないのにやってくれたことを感謝しないといけない。
「鉄堅君に、お礼を言わないとな、葉月?」
「うん」
お礼を言わなくちゃいけない。上着を奪ったことを謝らないといけない。
「父さん……俺、シャワー浴びたら鉄堅の家に行ってくるよ」
「大丈夫なのか? 今日は無理せず学校は休んだ方がいいぞ」
「うん、上着を返したらすぐ帰ってくるよ」
熱はもう無いし、あの鉛を飲んだような気持ち悪さも無かった。薬って凄いなと思う。たった1粒で、こんなに楽になるんだ。
シャワーを浴びたあと、普段着を着て、紙袋に折り畳んだ鉄堅の上着を入れた。
お菓子か何かも持っていった方が良いかなと一瞬思ったけど、朝だし、後で父が菓子折りを買ってきてくれるといっていたので、とりあえず、制服だし無いと困るだろうと思って、それだけを持って家をでた。
鉄堅に会ったら、何て言おう。
あの日、中学卒業間近のあの日以来、喋ってない。
《離れるならツガイになって》
《ずっと好きだった》
《これからもずっと好き》
鉄堅に言われた言葉を思い出して、脳内で勝手にリフレインされる言葉が、心の中で暴れて、顔が赤くなる。
はぁっと、気持ちを整えて歩き出す。
「葉月、葉月しっかりするんだ」
父親の声が聞こえた、重い目蓋をあけると、心配する父が、俺を覗き込んだ。
「父さん……苦しい」
「大丈夫、これを飲むんだ」
「うっ、うぇ、ゴクッ」
「大丈夫だから、ここにいるから」
「ううっ、父さん、ごめんなさい。オメガなんかに産まれて、ごめんなさい」
「何を謝るんだ、謝るんじゃない、葉月は葉月だ、俺の大切な息子だよ」
「うっ、ううっ、ごめ……」
深い穴の底へ落ちていくように、俺はまた意識を失った。でも、さっきまでの恐怖は和らぎ、閉じ込められた世界からは抜け出せたような、安心があった。何度も心の中で謝った。オメガなんかに産まれてごめんなさいと。
父親は、謝るな、大丈夫だからと頭を飽くことなく撫でてくれた。高校生にもなって、迷惑かけてごめんなさい。
謝っても謝っても、申し訳なかった。
それからどれくらいの時間が経ったのか、薬が効いたお陰で、葉月は目覚めた。
汗をかいたベットは、湿っていて、シャワーを浴びたいと思った。
部屋の中には既に父がいなくて、時計をみると、夜の4時だった。もう明け方だ。
この時間にシャワーは流石にうるさいかと、仕方なく、リビングへいって水を飲もうと、ベットから降りた。
その時、ぱさりと、自分の身体から落ちたのは、真っ白な上着。
「これ……鉄堅の? なんで」
なぜ、鉄堅の上着が自分のベットにあるのか謎だった。もしかして、助けられたとき、掴んで離さなかったのだろうか。
顔が、カァッと赤らんだ。
恐がって、服を離さないなんて、そんな子供じみた事を自分が鉄堅にしたと思ったら、恥ずかしくて何とも言えない気持ちになった。
落ちた服を拾う。何故か、ふいにそれを抱き締めたいと思った。身体が勝手に動いて、鉄堅の服を抱き締めると、凄く安心したような、満たされたような気持ちが心に広がって、動揺した。
これが、本能なのだろうか。
オメガが本能でアルファを求めるというのは、こういうことなのかと、ガッカリした。
あぁ、やはり自分は、父を捨てた母と同じオメガだったのだ。
いつか自分も母のように、優しい人を裏切る人間になるのだろうか。
どんなに抗っても、アルファに惹かれてしまうのだろうか。
鉄堅の上着を抱き締め、葉月はポロポロと泣いた。
◆◇◆
朝の6時過ぎ。学校に行く準備をしていると、ボサボサ頭の父が起きてきた。
「葉月、起きたのか」
「うん……昨日は、ごめんね、俺あんまり記憶がないけど、ひどかったかな」
どんな恥態を晒したか解らないけど、普通でなかっただろうと情けなくて、うつむいた。
「ひどくなんか無かったよ。ただ、熱があったから、鉄堅君も心配してたよ」
「鉄堅……やっぱり、俺を助けてくれたの?」
「覚えてないか? 路地でうずくまってたお前を家まで運んでくれて、運んだあとは、私に連絡をくれたよ。自分は家の外の玄関でずっと私が帰ってくるのを待っていてくれたんだ。中々できることじゃない、お礼を言わないとな」
「外? だって、上着着てなかったのじゃ?」
「あぁ、薄着で、外にいた。春先とはいえ、夜10時を過ぎていたから、寒かっただろうね、遅くなった事を詫びたけど、大丈夫の一点張りで、本当に立派な態度だったよ」
夜の10時って、1時間も外に居たって事だ。そんなこと、頼んでないのにと、また無意識に反抗的な事を考えてしまって、奥歯を噛み締めた。
そうじゃない。
頼んでないとか、そんな風に思ったらいけない、むしろ、頼んでないのにやってくれたことを感謝しないといけない。
「鉄堅君に、お礼を言わないとな、葉月?」
「うん」
お礼を言わなくちゃいけない。上着を奪ったことを謝らないといけない。
「父さん……俺、シャワー浴びたら鉄堅の家に行ってくるよ」
「大丈夫なのか? 今日は無理せず学校は休んだ方がいいぞ」
「うん、上着を返したらすぐ帰ってくるよ」
熱はもう無いし、あの鉛を飲んだような気持ち悪さも無かった。薬って凄いなと思う。たった1粒で、こんなに楽になるんだ。
シャワーを浴びたあと、普段着を着て、紙袋に折り畳んだ鉄堅の上着を入れた。
お菓子か何かも持っていった方が良いかなと一瞬思ったけど、朝だし、後で父が菓子折りを買ってきてくれるといっていたので、とりあえず、制服だし無いと困るだろうと思って、それだけを持って家をでた。
鉄堅に会ったら、何て言おう。
あの日、中学卒業間近のあの日以来、喋ってない。
《離れるならツガイになって》
《ずっと好きだった》
《これからもずっと好き》
鉄堅に言われた言葉を思い出して、脳内で勝手にリフレインされる言葉が、心の中で暴れて、顔が赤くなる。
はぁっと、気持ちを整えて歩き出す。
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