胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第一章

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《成瀬は良いやつなんだけどな》

ポチポチと、メールを打つと、しばらく鉄堅から返事が返ってこなかった。よく考えたら、今頃は塾からの帰り道で、夜道を歩いてる訳だから、スマホのながら歩きは危ないな。

《危ないからもう良いよ、帰り道気を付けろな、また》

また、の後、また明日とメールすべきか、また今度とすべきか迷って、またで止めた。

いや、別にどっちでも良いんだけど、明日っていうとなんか毎日メールしなきゃなんないみたいな? 妙なプレッシャーになるし、また今度だと、だいぶ放置しますよって言ってるみたいだし。

学校であわないヤツとのメールって、割りと気使うな。

《うん。また明日》

葉月の気遣いを一気に無視するメールがポンと飛んできた。明日もするんかいって、突っ込みたくなる。だけど、そういうノリでもないんだよ。

「鉄堅の扱いがいまいちわからん!」

長い時を共にしてきたけど、友達じゃなかったから今さら、友達みたいになれるのか解らないし。

でも、友達よりも信用はできるのが不思議なんだよ。なんだろ、家族? 親戚? みたいな、位置なのかな。

無条件で味方みたいな。

「ま、いっか」

鉄堅の立ち位置なんか、この先も変わらないだろ、隣で歩くより、後ろからつけてくる。それが崩れる日なんかこないだろ。

実際は色々と先を行かれてるけど、でも、いくら先にいても俺がそっちへ行かない限り、意味が無いんだよな。

同じ道を歩いてると思ってたけど、先に行っても、あいつはぐるぐる回って結局俺の後をつけてくる。

だから、道を慎重に選ばなきゃならなかった。ついてくる鉄堅の分も。

(俺についてきたって、お前の望む未来に連れてってやれないかもなのに……)

沢山ある選択肢の中から最後に選ぶなら良い。最初から決めるのは違う。それはきっと恋じゃない。別のなにかだろ。思い込みと人を好きになることとは違うのだし。

スマホに映る、また明日という言葉を見つめながら、葉月は瞳を閉じた。



◆◇◆



5日間きっちり休んで、葉月は学校へ行く準備をしていた。一週間近く休んだ訳だから、クラスの雰囲気が変わってたらどうしようなんて、流石にそんな小学生みたいな心配はしないけど……なんとなく、成瀬に会うのが緊張するというか。

自分の身体をフンフンと嗅いでみるものの、やはり自分では香りは解らない。鉄堅だけが気にしてると思ってたけど、成瀬にも、匂うって言われたし、いったいどんな匂いなんだよ。オメガのフェロモンらしいけど……見えるものじゃないし、困った。


鉄堅は、良い匂いだって言うけど、それも、怪しい。本当に良い匂いなんだろな? あいつ、何でも俺の匂いなら、いい匂いって言いそうで、いまいち本当かわからん。臭かったらショックなんだけど。
葉月は、シュシュと、消臭スプレーを学ランにかけてみた。これで消えるなら苦労しないのだけどな。

ピンポーンと玄関のチャイムがなって、父がなにやら話している。こんな朝っぱらから宅配便でも来たのかと思ってたら、父に呼ばれた。

「葉月、鉄堅君が迎えに来てくれたよ」
「は?」

意味が解らなくて、玄関へ行くと、なんと鉄堅がたってる。

「は? お前、学校は?」
「駅まで一緒に行く」
「ええ? だって、まだ早いだろ?」
「大丈夫だよ、本当は帰りも迎えに行きたいけど」
「なに言ってんだよ、そこまですること無いよ」
「葉月ちゃん」

葉月がやだやだ言い出しかねないと思ったのか、倒れた事を思い出してと言われ、うっと、言葉に詰まる。

「葉月ちゃん、発情期がきたばかりで不安定な時期だからお父さんと相談して、しばらく協力して様子をみることにしたんだよ、お願いだから軽く考えないで、夜はお父さんも早く返ってきてくれるから」

昔ならふざけるなって、怒るところだけど、流石に素直にうなずいた。実際、あの時、鉄堅に助けられてなかったら、どうなっていたか。

あの時の恐怖は正直、トラウマものだった。

「なんか、迷惑かけてごめ」
「迷惑なんかじゃないよ、さ、行こう、荷物は?」
「鞄だけ。じゃ、父さん行ってきます」
「あぁ、気をつけてな、鉄堅君よろしく」
「はい」

鉄堅がすっと、葉月の背中に手を回し、ドアから出す。その紳士のような仕草に、少しだけドキリとした。

(なんか、こいつ、本当に……俺のこと大事にしてくるんだよな、俺なんかのこと何でそこまで好きなんだよ)

葉月がいつも通り前を歩く。そして、少し後ろを鉄堅が付いてくる。いつもの歩調。

「……なぁ、隣、歩けば?」
「え」

振り向いて、鉄堅を見ると大きく目を見開いて、そして、こくりと頷く。なんだよ、友達なんだから普通だろ。そんなに驚くなよ。

「葉月ちゃんと初めて並んで歩く、なんか、違和感凄いね」
「確かに、肩がめちゃ当たる、なにこれ、おま、わざとかよ」
「違うよ、あんまり離れても変かと思ってそっちへ行くと同時に葉月ちゃんも来ちゃうから、まって、言ってるそばから、ごめ」

ガンガン肩が当たって笑える。

「こんな不器用な歩き方はじめてだわ」
「だよね、ごめんね」
「いいよ、なんか、うける」

ゴチ、ごちっと当たる度に、ふふって笑いながら駅まで歩くうちに、次第に、隣に居るのが気にならなくなって、肩も当たらなくなって、歩調が合っていった。なんだよ、隣……歩けるじゃん。少しだけ二人の関係が深まったような気がして、葉月は満足げに微笑んだ。











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