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第一章
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鉄堅の、ピリピリした気配が、葉月に伝わってきて、さっきまで鉄堅へ向けていた複雑な気持ちが弱った。
なんでお前が怒ってるんだよ。成瀬の姉と鉄堅が付き合ってるんじゃないのか? 聞くに聞けないんだが。だって、そんなのまるで俺が気にしてるみたいじゃん。
葉月は、もはや大混乱しながら、間を繋ぐためだけに、ボリボリと目の前のクッキーを食べた。
しかし、話題の中心人物、鉄堅は、絶対零度みたいな瞳をして、成瀬をまだ睨んでいる。成瀬は余裕のある顔で、にこりと笑う。
「で、どっちと?」
「誰とも付き合ってません」
「そうなの? おかしいな、姉は告白したと言ってたような気がしたけど」
さらに成瀬が爆弾を投げ続ける。成瀬はにこやかな顔をしながら、割りと攻撃力が高い言葉を吐くな。
「まさか、適当に返事したとか? 不誠実だなぁ」
ニコニコ。成瀬……なんて、殺傷能力が高いんだ、巻き込まれて葉月はふるふると、リビングの机の端で二人のやりとりを、ひきつって聞いている。
鉄堅は、はぁと、しょうもなさそうに、ため息を吐いた。
「僕は、お二人に何も答えてません、告白はされたような気もしますが、僕が好きな人は……」
「ワーーっ! 鉄堅、お前、もう、塾の時間じゃないのか? 塾の!」
何を言い出す気だ! バンッと机を突然葉月は叩いた。時計の針が18時を指していた。鉄堅は、高校へはいってから、駅前の塾へ通っている。
鉄堅は、チラッと時計をみて、眉をよせた。畳み掛けるように、成瀬にも帰宅を促す。
「成瀬も、今日はワザワザ来てくれてありがとな、おもてなしも出来ずにすまん、今度ゆっくり来てくれ」
成瀬は葉月の様子を面白そうにみて、素直に空気を読んでくれた。
「そうだね、そろそろお暇しようかな。でも、戸村は、明日も休んだ方が良いよ、そんな良い匂いさせて学校来ちゃったら、色々ヤバイからね、もちろん、送らなくていいよ、じゃ、またね」
「エ?」
成瀬は意味ありげに微笑んで、席を立った。鉄堅も無言で席を立つ。えーーっと、最後にまた爆弾を投げなかった?
成瀬が外へ出た後で、鉄堅は葉月を振り返った。
「葉月ちゃん、ちゃんと鍵かけてね、後でメールする」
「あ、うん……あのさ、お前」
出ていこうとする鉄堅の、袖を掴んだ。
「本当に付き合ってないの?」
誰と誰がと言わなくても解るだろうと、睨んだ。鉄堅はさも心外だという顔で、首をふる。
「当たり前でしょ、僕が好きなのは、葉月ちゃんだけだよ」
さっき、阻止した言葉をさらりと口にして、鉄堅は真顔で葉月を見つめた。
あんまり、当たり前みたいに言うから、葉月は、それ以上言葉を上手く紡げず、カァッと顔を赤らめ下を向いた。
「え、あ、そ、そう」
「惑わされないで、あいつ……気をつけてね」
鉄堅は、そう言い残して、ドアから出ていった。
◆◇◆
夜の22時、ピロロンとメールが来た。
《葉月ちゃん、明日もちゃんと休んでね》
塾へ行った後に、ちゃんと、と送ってくる辺り、さすが鉄堅。今日出歩いた事をふんわりと責めている……ような。
《やっぱ、まだ匂う?》
《それはそうだし、成瀬君はアルファだからあまり気を許さない方がいいと思う》
やっぱりか!!姉二人が仰暒高校の生徒でしかも生徒会会長、副会長の家族って只者ではないはずと流石に葉月もピンときたが、うまくベータのふりをしてるアルファを見分けるのは困難と言われるだけあり、葉月には成瀬のバースがはっきりとは解らなかった。
《悪いやつじゃないけど》
成瀬はクラスメートで、クラス1モテる、いや、もしかしたら学年1モテるかもしれないけど、鼻にかけるとか、そういう感じじゃなくて、ただ本当にいいやつで、皆が好きになるっていう、稀有な存在。
《いつもは、ニコニコしてるし》
イケメンが、ニコニコして、優しくしてたらそりゃモテモテだわな。それにさ、何て言うか、困ってるやつを助けるのが上手いんだよな、視野が広いというか、スッといつの間にか助けてる。そういう善行の積み重ねが人気の秘密なんだろうなと思うわけで。
だから、気を付けろとか、警戒しろとかそんな人間じゃないよと言いたくなるわけで。
《ニコニコ?》
《今日もニコニコしてただろ? ちょっと、変な感じだったけどそんな悪いやつじゃないはず、もう寝るよ》
《うん、おやすみ……でも、気をつけてね》
鉄堅が念を押してくるけど、変な感じ、そうだな、本当に今日はいつもと違う感じがした。成瀬は普段、あんな風に、人が喋らない事をわざと聞いたりしないし、しかも会ったばかりの鉄堅にけっこう、攻撃的だったよな。
もしかして、姉ちゃんが鉄堅に遊ばれてると勘違いして、それで? 身内だもんな、そりゃ身内の味方するよな。
それにしても同じ生徒会にいる、姉妹二人に告白された状況って、かなりカオスでは? 鉄堅みたいな暗いというか、根暗というか、無愛想というかそんなやつに……いや、まてよ、俺の鉄堅の印象はいつも俺の後をついてくるっていうか、つけてくるというかそういう、ねちっこい印象しかないけど、世間では、あいつ、仰暒高校の学年トップで優等生で、スポーツできてなんだよな?
あれれ?
まてよ、なんか凄くスペック高くないか? 鉄堅って、も、モテるの? もてるよな、モテてたもんな。ちょっと、びっくりだわ。
ベットの上で葉月は、気づいていなかった新事実に、またしても、心の中が穏やかではない。
(やっぱりアルファって……これだから)
鉄堅モテモテ説が確立すると、葉月はばふっと、枕に顔を打ち付け、くくもった声で暴言を吐いた。
「アルファっめ!」
人の心を奪っていく者、葉月のアルファのイメージは幼い頃からそれに尽きる。だからこそ、鉄堅の優しさにずっと、心を許さなかったのだから。
なんでお前が怒ってるんだよ。成瀬の姉と鉄堅が付き合ってるんじゃないのか? 聞くに聞けないんだが。だって、そんなのまるで俺が気にしてるみたいじゃん。
葉月は、もはや大混乱しながら、間を繋ぐためだけに、ボリボリと目の前のクッキーを食べた。
しかし、話題の中心人物、鉄堅は、絶対零度みたいな瞳をして、成瀬をまだ睨んでいる。成瀬は余裕のある顔で、にこりと笑う。
「で、どっちと?」
「誰とも付き合ってません」
「そうなの? おかしいな、姉は告白したと言ってたような気がしたけど」
さらに成瀬が爆弾を投げ続ける。成瀬はにこやかな顔をしながら、割りと攻撃力が高い言葉を吐くな。
「まさか、適当に返事したとか? 不誠実だなぁ」
ニコニコ。成瀬……なんて、殺傷能力が高いんだ、巻き込まれて葉月はふるふると、リビングの机の端で二人のやりとりを、ひきつって聞いている。
鉄堅は、はぁと、しょうもなさそうに、ため息を吐いた。
「僕は、お二人に何も答えてません、告白はされたような気もしますが、僕が好きな人は……」
「ワーーっ! 鉄堅、お前、もう、塾の時間じゃないのか? 塾の!」
何を言い出す気だ! バンッと机を突然葉月は叩いた。時計の針が18時を指していた。鉄堅は、高校へはいってから、駅前の塾へ通っている。
鉄堅は、チラッと時計をみて、眉をよせた。畳み掛けるように、成瀬にも帰宅を促す。
「成瀬も、今日はワザワザ来てくれてありがとな、おもてなしも出来ずにすまん、今度ゆっくり来てくれ」
成瀬は葉月の様子を面白そうにみて、素直に空気を読んでくれた。
「そうだね、そろそろお暇しようかな。でも、戸村は、明日も休んだ方が良いよ、そんな良い匂いさせて学校来ちゃったら、色々ヤバイからね、もちろん、送らなくていいよ、じゃ、またね」
「エ?」
成瀬は意味ありげに微笑んで、席を立った。鉄堅も無言で席を立つ。えーーっと、最後にまた爆弾を投げなかった?
成瀬が外へ出た後で、鉄堅は葉月を振り返った。
「葉月ちゃん、ちゃんと鍵かけてね、後でメールする」
「あ、うん……あのさ、お前」
出ていこうとする鉄堅の、袖を掴んだ。
「本当に付き合ってないの?」
誰と誰がと言わなくても解るだろうと、睨んだ。鉄堅はさも心外だという顔で、首をふる。
「当たり前でしょ、僕が好きなのは、葉月ちゃんだけだよ」
さっき、阻止した言葉をさらりと口にして、鉄堅は真顔で葉月を見つめた。
あんまり、当たり前みたいに言うから、葉月は、それ以上言葉を上手く紡げず、カァッと顔を赤らめ下を向いた。
「え、あ、そ、そう」
「惑わされないで、あいつ……気をつけてね」
鉄堅は、そう言い残して、ドアから出ていった。
◆◇◆
夜の22時、ピロロンとメールが来た。
《葉月ちゃん、明日もちゃんと休んでね》
塾へ行った後に、ちゃんと、と送ってくる辺り、さすが鉄堅。今日出歩いた事をふんわりと責めている……ような。
《やっぱ、まだ匂う?》
《それはそうだし、成瀬君はアルファだからあまり気を許さない方がいいと思う》
やっぱりか!!姉二人が仰暒高校の生徒でしかも生徒会会長、副会長の家族って只者ではないはずと流石に葉月もピンときたが、うまくベータのふりをしてるアルファを見分けるのは困難と言われるだけあり、葉月には成瀬のバースがはっきりとは解らなかった。
《悪いやつじゃないけど》
成瀬はクラスメートで、クラス1モテる、いや、もしかしたら学年1モテるかもしれないけど、鼻にかけるとか、そういう感じじゃなくて、ただ本当にいいやつで、皆が好きになるっていう、稀有な存在。
《いつもは、ニコニコしてるし》
イケメンが、ニコニコして、優しくしてたらそりゃモテモテだわな。それにさ、何て言うか、困ってるやつを助けるのが上手いんだよな、視野が広いというか、スッといつの間にか助けてる。そういう善行の積み重ねが人気の秘密なんだろうなと思うわけで。
だから、気を付けろとか、警戒しろとかそんな人間じゃないよと言いたくなるわけで。
《ニコニコ?》
《今日もニコニコしてただろ? ちょっと、変な感じだったけどそんな悪いやつじゃないはず、もう寝るよ》
《うん、おやすみ……でも、気をつけてね》
鉄堅が念を押してくるけど、変な感じ、そうだな、本当に今日はいつもと違う感じがした。成瀬は普段、あんな風に、人が喋らない事をわざと聞いたりしないし、しかも会ったばかりの鉄堅にけっこう、攻撃的だったよな。
もしかして、姉ちゃんが鉄堅に遊ばれてると勘違いして、それで? 身内だもんな、そりゃ身内の味方するよな。
それにしても同じ生徒会にいる、姉妹二人に告白された状況って、かなりカオスでは? 鉄堅みたいな暗いというか、根暗というか、無愛想というかそんなやつに……いや、まてよ、俺の鉄堅の印象はいつも俺の後をついてくるっていうか、つけてくるというかそういう、ねちっこい印象しかないけど、世間では、あいつ、仰暒高校の学年トップで優等生で、スポーツできてなんだよな?
あれれ?
まてよ、なんか凄くスペック高くないか? 鉄堅って、も、モテるの? もてるよな、モテてたもんな。ちょっと、びっくりだわ。
ベットの上で葉月は、気づいていなかった新事実に、またしても、心の中が穏やかではない。
(やっぱりアルファって……これだから)
鉄堅モテモテ説が確立すると、葉月はばふっと、枕に顔を打ち付け、くくもった声で暴言を吐いた。
「アルファっめ!」
人の心を奪っていく者、葉月のアルファのイメージは幼い頃からそれに尽きる。だからこそ、鉄堅の優しさにずっと、心を許さなかったのだから。
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