胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第一章

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その夜、夜中の11時半過ぎに寝落ちしてた葉月は、遠くで聞こえる声に、ふと目を覚ます。父が誰かと電話をしていた。

こんな夜更けに電話なんて珍しいなと思って、なんとなく嫌な予感がして、リビングに行くと、父が丁度電話を切って振り返った。

父の目は赤くて、まるで泣いてるみたいだった。

「父さん、どうしたの? なにか悪い知らせ?」
「葉月……落ち着いて聞くんだ」
「なに」
「鉄堅君が事故にあって、今病院に居るらしい」
「え?」
「塾の帰り道に、信号無視をした車と衝突したって」

思考が停止する。どういうこと?

「無事……なん、だよ、ね?」
「まだなんとも」

そんな馬鹿なことある? 11時過ぎ、もうあと数時間で鉄堅の誕生日なのに、そんなことある?

0時ぴったりに、おめでとうってメールしようと思ってたのに。

かたかたと、身体が震えて、止まらない。そんなことあるの?

「ど、どこの病院なの、父さん、行きたい、だめかな、行きたいよ、行きたい、外でも良い、そばに行きたい」
目の前が涙で雲ってなにも見えない。苦しいくらい喉の奥が痛い。

こわい、怖くてたまらない。神様どうして? 何もしてない、鉄堅は、何も悪いことしてないよ。

父さんは俺を抱き締めて、泣いてる。あぁ、父さん、苦しいよ、何でなの、怖いよ。

「父さん、お願い、鉄堅のそばに連れていって」
すがり付いて頼んだ、今すぐに、頼むから、そばに行きたい。

父さんは頷くと、タクシーを呼んでくれて、一緒に中央総合病院へ、上手く歩けない葉月を支えて、連れていってくれた。

車内でも、震えが止まらない。心臓がバクバクし過ぎて、息が苦しい。

病院へ到着すると、緊急外来の受付は終わっていて、だが、特別に中に入れてもらえた。

長い真っ暗な廊下の先に、ランプのついた手術室。

鉄堅のおじさんと、おばさんが抱き合って泣いている。

聞いていいの? 聞かなきゃいけない。でも、怖い。もしも、もしも、鉄堅の命が、もうどこにも無かったらどうしたらいい?

何も言えなくて、おじさんとおばさんを見詰めた。

おばさんは涙をぬぐって、近づいてきた。

「葉月ちゃん来てくれたの? 鉄堅が喜ぶわ」
「おば、さ、て、けん、は」

苦しくて上手く喋れない。怖い言葉を聞きたくない。身体がガタガタと震えて力が入らない。

「今、頑張ってるわ」

頑張っている。鉄堅は、今、頑張っているのだ。生死の境を彷徨って、頑張っているのだ。葉月は手術室のドアに向かって叫んだ。

「鉄堅っ、がんばれ、がんばって、俺を、おいてくな!おいてったら、許さない、鉄堅っ! 鉄堅! てっけ……ん」

声が枯れそうなくらい何度も叫んだ。届け、胎児の頃から俺の気配だけ解ってたんだろ? だったら、今も解るよな?

一生一緒に生きるんだろ、誓っただろ。置いていくなんて許さない。

頼むから頑張れ、頼むから。

鉄堅の名を何度も呼び、葉月の声がもう出なくなって、かすれた声でそれでも鉄堅を呼んでいたら、手術室のランプがパッパッと点滅して、暗くなって、しばらくして、中から医者が出てきた。

「先生、鉄堅は」
「お母さんですか? 鉄堅君、持ちこたえました、さっき、お友達かな? 君の声が聞こえてそこから急激に持ち堪え、まるで奇跡みたいでした」
「あぁぁ、先生ありがとうございます、葉月ちゃんありがとう、ありがとうね」

「ふっ、ふあっ、う、ううっ……」

言葉にならない嗚咽が葉月の口から漏れる。良かった。神様ありがとう。本当にありがとうございます。

安堵で、涙と嗚咽が止まらない。良かった、良かったと皆で抱き合った。











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