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第一章
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その日の放課後、葉月に予定が有るのは事実だった。統括店長が店に来るからチラッと挨拶においでと、上林さんが言っていたのだ。
斎藤曰く、そういう日に行くと、ロイのメニュー食べ放題の特典があるらしい。それは高校男子としては、是非とも行きたいイベントだった。
斎藤と二人で店に行くと、上品そうないかにも社長ぽい人が店のフロアに立っていた。その上品なおじ様は、店の中へ入ってきた葉月と斎藤をみて、すぐに声をかけてくれた。
「おや、斎藤君と、そちらは新しく入った戸村君かな?」
「はい、戸村葉月です」
「上林君から、良く働く子が来てくれたと報告を受けているよ、これからも宜しくね、さ、せっかく来たのだし、そこに座って、何か食べなさい」
「ありがとうございます!」
斎藤と礼を言って、着席しメニューを覗き込む。おごりだと解って来た手前、一番安いのにすべきか? と斎藤を見るも、斎藤は容赦なくステーキセットを頼んでる。こいつ……キモが据わってるな。
目を見開いて驚いている葉月に、統括店長は笑いながら、また声をかけてくれた。
「好きなのを頼みなさい、値段など気にしなくて良いから。君達は同じ学校?」
「はい、東青です」
「そうか、私も東青だったんだ、懐かしいな、昔はここは小さなコロッケの店でね、帰りによく買って帰ったものさ」
「へーーそうだったんですか」
葉月はここが地元ではないので、過去の話にあまり興味を引かれなかったが、斎藤は父さんがそう言ってたと、店長と盛り上がっている。
二人が話している隙にハンバーグセットをポチっと押して注文した。
自分の父親と同年代くらいのおじさんは、先生くらいしか話したことがない。歳が離れていても、会話って成り立つんだなぁと、思った。
しばらくして、上林先輩が、ステーキセットと、ハンバーグセットを持ってやって来た。
「わぁ、上林さん、ありがとうございます」
「何かすみません」
「いえいえ、ごゆっくり」
眼鏡の奥の優しげな瞳が、すっとほそまって、笑みを作る。はぁ、本当に神。優しい。上林先輩好き。一生押せる。
「じゃ、私もちょっと厨房へ行くよ、またね、支払いはスルーで帰って良いからね」
「はい、ありがとうございました」
上林さんと、統括店長は厨房へ帰っていったので、斎藤と目を合わせて、食うぞ! と食べだす。ロイのハンバーグの美味しいことといったら。自分で作ると、どうもパサつくけど、どうやったらこんな肉汁じゅわーになるのか。
「めちゃ、うまい」
「お前もステーキにすりゃ良かったのに」
「そーだけど、ハンバーグ好きなんだよ」
「確かに旨いもんな間違いない」
「ほら、サービス」
そういって、キッチンから佐竹さんが山盛りポテトを持ってきてくれた。
「まじっすか!」
「佐竹さん神すぎる」
「ポテトの神と呼ぶが良い」
「ポテト神様! カリカリでめちゃ、うまいデス」
だろうなと、1本ひょいっと佐竹さんも食べて、うん、我ながら最高の揚げ具合と自画自賛してキッチンへと戻っていった。
「この店ほんと、居心地いいよな」
「だろーーだから、忙しくても辞めれないんだよ、こう、毎日運動会に参加してるみたいな気持ちで仕事をしてるっうか」
「わかる、クタクタになる」
「でも、楽しいんだよなぁ」
「うんうん、最初は緊張したけど楽しかった」
学校や、部活とはまた違う。自分がダイレクトに必要とされる場は楽しい。
「これは明日も頑張るっきゃないな」
「だなーー」
ご飯とポテトをたらふく食べて、満腹。幸せだった。こんな素敵な職場で働けて、賃金を貰えて、そしてそれで、恋人にプレゼントを買うのだ。鉄堅はきっと、凄く喜ぶに違いない。楽しみでしかない。
葉月の心はウキウキと、跳ねるようだった。
◆◇◆
葉月がバイトを始めて2週間、あっという間に時が過ぎていった。最初は身体が慣れなくて、疲れて寝るの繰り返しだったけど、人は慣れるというもので。
ふと、そういえば最近夜に鉄堅とメールをしてないなと気付く。まぁ、朝になれば毎日迎えにくるし、顔を合わせるのだからと、気にしてなかったが……26日の予定もそろそろ聞かないとな。
25日に給料がでるから、26日、学校終わったらプレゼント買って、渡せば良いか。
教室にたむろしてる、いつものメンバー、田沼、村上、斎藤、成瀬にちらりと、参考までにプレゼントについて聞いてみる。
「なぁ、今欲しいものある?」
「まさか、葉月は給料を俺たちのために!?」
「ばか、んな訳あるかよ、聞いただけだよ」
成瀬が、ふーんと意味ありげな視線で、見詰めてくるので、視線をそらす。
「どんな物もらったら嬉しいかなと思って」
「やっぱり俺たちに」
「違うよ、と、父さんにだよ」
「アーーー父の日的なやつか、親孝行だな、戸村は。ネクタイとか?」
「うーん、無難に花か?」
だめだ、父の日設定になってしまって、全然参考にならない、失敗した。
「お揃いのスマホケースとかで良いんじゃない?」
成瀬が、チャラッとスマホを見せた。確かに、実用性有るし、良いかも。ついでにストラップも買うか……いや、ストラップより、リングマグネットがいいか。
確か、鉄堅のスマホ、何にもついてなかったしカバーも無かったような気がする。あと、肌色だった、ちょっと趣味悪いなと思ったんだよ。よりによって肌色のスマホ……スマホで肌色なんてみたの初めてだった。なんであの色にしたんだろう。ほんと、あいつ、時々意味不明。
白か、黒か、青に変えさせよう。
「父親と同じスマホケースって、ないわー」
「やだろ普通に」
村上と田沼がぎゃぁぎゃぁ騒いでるが、スマホケースは採用である。成瀬案なのがちょっと引っ掛かるけど、まぁ良いや。
25日の給料日、初給料ということで、なんと上林さんが手渡ししたくれた! ひーん、神。銀行行く手間が省けて凄く有難い。
夜10時過ぎ、本当はこの時間は鉄堅は塾だからメールしたりしないのだけど、嬉しさのあまり、メールしてしまった。
《鉄堅、明日夕方寄り道して良い?》
返事は返ってこない、まぁ、そりゃ塾だもんな、11時過ぎになったら返事くるか。
とりあえず、家についたら、速攻で風呂はいって、飯食って寝る準備してたら、そのうち。
だけれども、11時を過ぎても、鉄堅からのメールは来なかった。
楽しみにしてただけに、ちょっとだけ拗ねて、葉月は布団にスマホを投げて寝た。
斎藤曰く、そういう日に行くと、ロイのメニュー食べ放題の特典があるらしい。それは高校男子としては、是非とも行きたいイベントだった。
斎藤と二人で店に行くと、上品そうないかにも社長ぽい人が店のフロアに立っていた。その上品なおじ様は、店の中へ入ってきた葉月と斎藤をみて、すぐに声をかけてくれた。
「おや、斎藤君と、そちらは新しく入った戸村君かな?」
「はい、戸村葉月です」
「上林君から、良く働く子が来てくれたと報告を受けているよ、これからも宜しくね、さ、せっかく来たのだし、そこに座って、何か食べなさい」
「ありがとうございます!」
斎藤と礼を言って、着席しメニューを覗き込む。おごりだと解って来た手前、一番安いのにすべきか? と斎藤を見るも、斎藤は容赦なくステーキセットを頼んでる。こいつ……キモが据わってるな。
目を見開いて驚いている葉月に、統括店長は笑いながら、また声をかけてくれた。
「好きなのを頼みなさい、値段など気にしなくて良いから。君達は同じ学校?」
「はい、東青です」
「そうか、私も東青だったんだ、懐かしいな、昔はここは小さなコロッケの店でね、帰りによく買って帰ったものさ」
「へーーそうだったんですか」
葉月はここが地元ではないので、過去の話にあまり興味を引かれなかったが、斎藤は父さんがそう言ってたと、店長と盛り上がっている。
二人が話している隙にハンバーグセットをポチっと押して注文した。
自分の父親と同年代くらいのおじさんは、先生くらいしか話したことがない。歳が離れていても、会話って成り立つんだなぁと、思った。
しばらくして、上林先輩が、ステーキセットと、ハンバーグセットを持ってやって来た。
「わぁ、上林さん、ありがとうございます」
「何かすみません」
「いえいえ、ごゆっくり」
眼鏡の奥の優しげな瞳が、すっとほそまって、笑みを作る。はぁ、本当に神。優しい。上林先輩好き。一生押せる。
「じゃ、私もちょっと厨房へ行くよ、またね、支払いはスルーで帰って良いからね」
「はい、ありがとうございました」
上林さんと、統括店長は厨房へ帰っていったので、斎藤と目を合わせて、食うぞ! と食べだす。ロイのハンバーグの美味しいことといったら。自分で作ると、どうもパサつくけど、どうやったらこんな肉汁じゅわーになるのか。
「めちゃ、うまい」
「お前もステーキにすりゃ良かったのに」
「そーだけど、ハンバーグ好きなんだよ」
「確かに旨いもんな間違いない」
「ほら、サービス」
そういって、キッチンから佐竹さんが山盛りポテトを持ってきてくれた。
「まじっすか!」
「佐竹さん神すぎる」
「ポテトの神と呼ぶが良い」
「ポテト神様! カリカリでめちゃ、うまいデス」
だろうなと、1本ひょいっと佐竹さんも食べて、うん、我ながら最高の揚げ具合と自画自賛してキッチンへと戻っていった。
「この店ほんと、居心地いいよな」
「だろーーだから、忙しくても辞めれないんだよ、こう、毎日運動会に参加してるみたいな気持ちで仕事をしてるっうか」
「わかる、クタクタになる」
「でも、楽しいんだよなぁ」
「うんうん、最初は緊張したけど楽しかった」
学校や、部活とはまた違う。自分がダイレクトに必要とされる場は楽しい。
「これは明日も頑張るっきゃないな」
「だなーー」
ご飯とポテトをたらふく食べて、満腹。幸せだった。こんな素敵な職場で働けて、賃金を貰えて、そしてそれで、恋人にプレゼントを買うのだ。鉄堅はきっと、凄く喜ぶに違いない。楽しみでしかない。
葉月の心はウキウキと、跳ねるようだった。
◆◇◆
葉月がバイトを始めて2週間、あっという間に時が過ぎていった。最初は身体が慣れなくて、疲れて寝るの繰り返しだったけど、人は慣れるというもので。
ふと、そういえば最近夜に鉄堅とメールをしてないなと気付く。まぁ、朝になれば毎日迎えにくるし、顔を合わせるのだからと、気にしてなかったが……26日の予定もそろそろ聞かないとな。
25日に給料がでるから、26日、学校終わったらプレゼント買って、渡せば良いか。
教室にたむろしてる、いつものメンバー、田沼、村上、斎藤、成瀬にちらりと、参考までにプレゼントについて聞いてみる。
「なぁ、今欲しいものある?」
「まさか、葉月は給料を俺たちのために!?」
「ばか、んな訳あるかよ、聞いただけだよ」
成瀬が、ふーんと意味ありげな視線で、見詰めてくるので、視線をそらす。
「どんな物もらったら嬉しいかなと思って」
「やっぱり俺たちに」
「違うよ、と、父さんにだよ」
「アーーー父の日的なやつか、親孝行だな、戸村は。ネクタイとか?」
「うーん、無難に花か?」
だめだ、父の日設定になってしまって、全然参考にならない、失敗した。
「お揃いのスマホケースとかで良いんじゃない?」
成瀬が、チャラッとスマホを見せた。確かに、実用性有るし、良いかも。ついでにストラップも買うか……いや、ストラップより、リングマグネットがいいか。
確か、鉄堅のスマホ、何にもついてなかったしカバーも無かったような気がする。あと、肌色だった、ちょっと趣味悪いなと思ったんだよ。よりによって肌色のスマホ……スマホで肌色なんてみたの初めてだった。なんであの色にしたんだろう。ほんと、あいつ、時々意味不明。
白か、黒か、青に変えさせよう。
「父親と同じスマホケースって、ないわー」
「やだろ普通に」
村上と田沼がぎゃぁぎゃぁ騒いでるが、スマホケースは採用である。成瀬案なのがちょっと引っ掛かるけど、まぁ良いや。
25日の給料日、初給料ということで、なんと上林さんが手渡ししたくれた! ひーん、神。銀行行く手間が省けて凄く有難い。
夜10時過ぎ、本当はこの時間は鉄堅は塾だからメールしたりしないのだけど、嬉しさのあまり、メールしてしまった。
《鉄堅、明日夕方寄り道して良い?》
返事は返ってこない、まぁ、そりゃ塾だもんな、11時過ぎになったら返事くるか。
とりあえず、家についたら、速攻で風呂はいって、飯食って寝る準備してたら、そのうち。
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