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23 義弟
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夜遅くまでやってる雑貨屋があったので、僕は写真立てを1つ購入した。真珠のような丸いたまが周りについた綺麗な写真立て。これに、雪夜君からもらった名刺と領収書を入れて飾るのだ。あぁ楽しみ。
ルンルン気分で自分のアパートの近くまできて、ふと部屋をみると明かりがついている。そこで、はっと、今朝の事を思い出した。そう言えば、鍵もかけず、飛び出したんだった。
「はわわわ、泥棒がいたらどうしよう」
部屋の中に貴重品なんてそんなにないけど、パソコンが無くなるのは困る。恐る恐る、扉をあけると、中から、ドタドタと走りよってくる大きな影。
「なるっ!」
「あ、はぐり……なんだ、来てたの」
「来てたのじゃないだろ! こんな時間までどこ行ってたんだよ、部屋の鍵もかけずに、スマホにも出ない、俺がどれだけ心配したと」
激怒してる義弟の言い分は正しい。100パーセントで僕が悪い。でも、僕にだって色々あったんだ。
「仕方ないだろ、スマホ壊れたんだ」
「壊れたとしても、部屋の鍵を閉め忘れて出掛けるってどういう神経してるんだよ」
「それは、まぁ、う、急いでたから」
「何を急いで……ちょっと待て、なんだその匂い」
「え?」
葉栗が、僕の腕をぐいっと強引に引っ張って、首筋の匂いを嗅いだ。ひっ、気持ち悪いって、あんまり顔を近づけないで欲しい。僕の嫌そうな態度が気に入らなかったのか、葉栗は乱暴に僕をドンっと突き飛ばした。
「わぁ、おま、何するんだよ」
「誰にこんな、匂いつけられた?」
「は? 匂い?」
「アルファの匂いがプンプンする、風呂入って」
「え? 風呂? 風呂はもう……」
入ってきたと言いそうになって、言葉を慌てて飲み込む。外で風呂に入ってくるなんてホテルにいましたと白状してるようなもんだ、さすがに義理弟にそんなのバレたくない。
「なに?」
「いや、入るわ、さ、寒かったし」
妙に絡んでくる葉栗を訝しく思いながら、僕は取り敢えず部屋の椅子の上に鞄を置いた。買ってきた写真立てに領収書と名刺を入れるのは後にしよう。楽しみにしていたのに、とほほ。
葉栗が言うように、雪夜さんの残り香があるなら一生風呂に入りたくないけど、めちゃくちゃ怖い顔で睨んでくる葉栗の圧にまけて、泣く泣く風呂に入った。
まぁ、明日も会えるんだし。ボディシャンプーでこしこしと洗って、自分の身体をみつめる。もうお前は、只のオメガじゃない、好きな人とお風呂に入ったオメガなのだ。
余り体毛が生えない貧相な身体、つるんとした下半身は、小学生並みなのだけれど、今日は立派な大人になった気持ちで洗えた。雪夜君の肌、気持ち良かったなぁ。あぁ、そんなこと考えるなんて、エッチな僕。
発情期がきたら、また会ってくれるって言ってたけど、本気なのかな。男オメガに触るの気持ち悪くなかったのかな。キスもいっぱい教えてくれたし。
それにしても僕は、どうして僕普通のベータに生まれてこなかったんだろう。そしたら、ちょっとは、雪夜君に好きになってもらえたかもしれないのにな。男オメガじゃなぁ。恋愛対象になんか一生ならないよね。ま、僕なんかがそんな対象になれるわけもないけど。
雪夜君の親が男性オメガだったせいで、雪夜君は寒い日に捨てられた。同じ男オメガの僕が、雪夜君の周りをうろちょろするのは、彼にとって迷惑意外の何者でもないだろう。彼の気持ちを思えば二度と目の前に行かないのが正しいに決まってる。でも雪夜君は優しいから、スマホが壊れて泣いていたぼくをほっとけなかったんだ。
優しい彼に、優しいことを強要したくない。したくないけど、会えなくなるなんて嫌だ。
僕は小さくため息をはく。
世の中の人はどうやって恋心を押さえているんだろう。会いたくてたまらないこの気持ちをどうやったら消せるのか。消せる日などくるのだろうか。解らなくて……苦しい。
ルンルン気分で自分のアパートの近くまできて、ふと部屋をみると明かりがついている。そこで、はっと、今朝の事を思い出した。そう言えば、鍵もかけず、飛び出したんだった。
「はわわわ、泥棒がいたらどうしよう」
部屋の中に貴重品なんてそんなにないけど、パソコンが無くなるのは困る。恐る恐る、扉をあけると、中から、ドタドタと走りよってくる大きな影。
「なるっ!」
「あ、はぐり……なんだ、来てたの」
「来てたのじゃないだろ! こんな時間までどこ行ってたんだよ、部屋の鍵もかけずに、スマホにも出ない、俺がどれだけ心配したと」
激怒してる義弟の言い分は正しい。100パーセントで僕が悪い。でも、僕にだって色々あったんだ。
「仕方ないだろ、スマホ壊れたんだ」
「壊れたとしても、部屋の鍵を閉め忘れて出掛けるってどういう神経してるんだよ」
「それは、まぁ、う、急いでたから」
「何を急いで……ちょっと待て、なんだその匂い」
「え?」
葉栗が、僕の腕をぐいっと強引に引っ張って、首筋の匂いを嗅いだ。ひっ、気持ち悪いって、あんまり顔を近づけないで欲しい。僕の嫌そうな態度が気に入らなかったのか、葉栗は乱暴に僕をドンっと突き飛ばした。
「わぁ、おま、何するんだよ」
「誰にこんな、匂いつけられた?」
「は? 匂い?」
「アルファの匂いがプンプンする、風呂入って」
「え? 風呂? 風呂はもう……」
入ってきたと言いそうになって、言葉を慌てて飲み込む。外で風呂に入ってくるなんてホテルにいましたと白状してるようなもんだ、さすがに義理弟にそんなのバレたくない。
「なに?」
「いや、入るわ、さ、寒かったし」
妙に絡んでくる葉栗を訝しく思いながら、僕は取り敢えず部屋の椅子の上に鞄を置いた。買ってきた写真立てに領収書と名刺を入れるのは後にしよう。楽しみにしていたのに、とほほ。
葉栗が言うように、雪夜さんの残り香があるなら一生風呂に入りたくないけど、めちゃくちゃ怖い顔で睨んでくる葉栗の圧にまけて、泣く泣く風呂に入った。
まぁ、明日も会えるんだし。ボディシャンプーでこしこしと洗って、自分の身体をみつめる。もうお前は、只のオメガじゃない、好きな人とお風呂に入ったオメガなのだ。
余り体毛が生えない貧相な身体、つるんとした下半身は、小学生並みなのだけれど、今日は立派な大人になった気持ちで洗えた。雪夜君の肌、気持ち良かったなぁ。あぁ、そんなこと考えるなんて、エッチな僕。
発情期がきたら、また会ってくれるって言ってたけど、本気なのかな。男オメガに触るの気持ち悪くなかったのかな。キスもいっぱい教えてくれたし。
それにしても僕は、どうして僕普通のベータに生まれてこなかったんだろう。そしたら、ちょっとは、雪夜君に好きになってもらえたかもしれないのにな。男オメガじゃなぁ。恋愛対象になんか一生ならないよね。ま、僕なんかがそんな対象になれるわけもないけど。
雪夜君の親が男性オメガだったせいで、雪夜君は寒い日に捨てられた。同じ男オメガの僕が、雪夜君の周りをうろちょろするのは、彼にとって迷惑意外の何者でもないだろう。彼の気持ちを思えば二度と目の前に行かないのが正しいに決まってる。でも雪夜君は優しいから、スマホが壊れて泣いていたぼくをほっとけなかったんだ。
優しい彼に、優しいことを強要したくない。したくないけど、会えなくなるなんて嫌だ。
僕は小さくため息をはく。
世の中の人はどうやって恋心を押さえているんだろう。会いたくてたまらないこの気持ちをどうやったら消せるのか。消せる日などくるのだろうか。解らなくて……苦しい。
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