従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari

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5 味方はまだまだいた

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カトリーヌは不思議な夢を見た。


私は日本人。

成田綾子(なりたあやこ)。

17歳。女子高校生。

学校では美術を専攻していた。

「綾子。仕度は良い?」

「うん、大丈夫だよ、お母さん」


カトリーヌは母親と仲違いしていなかったっけ? と思いながらも夢の続きを見た。

「ハワイへ行く便に乗るのよ」と母。

母は見覚えのあるような……無いような。

黒髪のボブの女性だった。

「そうだ。この年末年始は家族でハワイへ旅行に行く事にしたんだからな」

と父。

久々の家族旅行だった……とカトリーヌは記憶していた。


しかし。

飛行機に乗ると……。

飛行機の様子がおかしい。

翼が傾いているのだ。

飛行機が左右に揺られている。


右へ……左へ……その度に客室から悲鳴が上がる。

客室乗務員が皆を安心させようとするが、乗客全員は気が気でない。

阿鼻叫喚の中、飛行機はそのまま高速で海へと落ちていった。







カトリーヌはそこで目を覚ました。

汗をびっしょりとかいていた。


転生前の記憶が戻ったのだ。


私は成田綾子。

当時17歳だった。


そうよ。家族旅行でハワイに行くはずだったのよね。


カトリーヌはカーテンを開けた。

雪が降っていた。

なごり雪……。


家族旅行は飛行機の墜落で終わってしまいました。

私は……転生。

成田綾子の転生。

美術を専攻していたんだっけ。


今のカリーナと一緒じゃないの。


数学はいつも2だった。

物理や化学も2。


理数系がとにかく苦手だったわね。

そして、毎日補習に明け暮れていたっけ。


それなのに、美術だけはいつも5だった。

そして私は風景画を得意としていて、佳作を貰ったんだっけ?


なんだかあの頃が切なくなりました。


飛行機が墜落さえしなければ、私はハワイ旅行を楽しめたのかな?


海外でハッピーニューイヤーって家族全員の憧れだったからなぁ。


それがようやく叶ったかと思いきや、思わぬ飛行機事故。


今では母親と確執起こしているけれど、転生前の私は家族仲良しだった。

私と弟と……。



そこへドアをノックする音。

「はい」

私は窓越しに腰かけた。

弟のアーサーと妹のフロリーナだった。

「姉上。僕ら、応接間をこっそり覗いてた。お母様と大変なことになったね」

「私も見ていたわよ」



!!



まさか、アーサーとフロリーナが応接間を覗いてたとは!?

「ルイーズがお姉さまから婚約者を奪ったんですって?」

アーサーの声は男性にしては高い声だ。

女性で言うアルトの声に極めて近い。


「やっぱり聞いていたのね?」


「ええ。あのルイーズがまさかそんな事をするとは思えなかったけど、ルイーズって二重人格なんだなぁって思って」

二重人格。言われてみればそうかもしれない。


「そしてね、お姉さま。ルイーズがアルフレッド様と結婚するらしいの。それで、式の日取りも既に決まったそうよ。この国の王侯貴族が参加するらしいわ。しかも、タチ悪いことに、お姉さままで結婚式に呼ばれているわ」

私は血が頭に登った。

なぜ?

なぜ婚約破棄した人を結婚式にわざわざ招待するの!?


嫌味としか言いようがない。

「母上はお姉さまに否定的だけど、僕らは姉上の味方です」

「本当に!? それは心強いわ」

「父上が正しい。次期男爵当主として姉上を守る!」

私は嬉しかった。

味方はお父様ただ一人かと思っていたからだ。


「お母様は間違っているわ。ルイーズの裏の顔を知らなかったのよ」

幼少の頃、よく遊んでくれたルイーズ。

そのルイーズが豹変し、婚約者を奪うまでに。

「婚約者を奪うなんて信じられないや」

アーサーは深くため息をついた。


「それに、アルフレッドもアルフレッドだわ。お姉さまと婚約しておきながらルイーズに乗り換えるなんて」


確かにそう。

「婚約指輪は?」とアーサー。

「もう売り払ったわ」

あんなもの、早く手放さないと。

「因みにクレシダ伯母様も敵よ」

やはり!

と思った。


クレシダ伯母様もルイーズが私から婚約者を奪った事を信じないのでしょう。


「結婚式にはルイーズとの間に何もなかったかのように装って参加して欲しい、との事」

アーサーも憤怒に満ちている。

「でもね、その内あの二人には罰が当たると思っているんだ」とフロリーナ。

本当に罰当たりも良いところ。


神様の前で堂々と二人の愛を誓って下さい。

でも、神様はすべてお見通しだから、二人を見ている。

そう。私を裏切った事。


そんな裏切り者に神様が微笑むわけがない。

微笑んだとしたら、それは間違いなく悪鬼魔神だ。


でも!

今思えばアルフレッドと別れて清々しています。

アルフレッドは時々どこかへでかけては私に寂しい思いをさせたのだから。

塞翁が馬ってやつね。

しかも、昼夜問わず。

私は……今の私は構ってくれる人がいいの。

爵位なんかどうでもいいわ。


「でもね、アーサー、フロリーナ。私はアルフレッドと婚約破棄して良かったと思っているの」

「「どうして?」」


「アルフレッドは私に寂しい思いをさせるの」

「そういやあ、姉上、時々夜寂しいって言っていたな」

「そうなの」

「アルフレッド野郎! それにしても夜何やっているんだ?」とアーサー。

「用事があるとか言ってたわよ」とフロリーナ。

「しかし、夜に用事とは。さてはその間にコソコソルイーズと密会していたんだな」

アーサーが両手で拳を握った。

「それは許せない! 絶対にルイーズと会っていたのよ!」

フロリーナも便乗する。


私もそう思った。

そうとしか考えられない。


「絶対に罰当たるからな! 神様はすべてお見通しなんだからな!」

「そうよ。神様の怒りの鉄槌が下るはずよ」

「アーサー、フロリーナ、ありがとう。二人がまさか味方してくれると思わなかったから、涙が出てきたわ」

涙が次から次へと溢れてくる。

外はまたなごり雪が降っている。

今年の春はまだまだお預けのようだ。
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