4 / 14
4、母娘仲違い
私は早朝、母から呼ばれました。
母親とは応接間で話をする事になりました。
外は晴れている。
初春の晴れではあるものの、まだまだアルファン邸の中は寒い。
「カトリーヌ。あなたって人は。アルフレッド様と婚約破棄だなんて。恥ずかしいわ」
母親もカトリーヌと同じオレンジバーミリオンの髪で長い髪をおだんごにしている。
「しかも、従姉妹のルイーズと仲違いしたのね。信じられないわ」
「違うんです、お母様。アルフレッドをルイーズに奪われたんです」
私は必死になって母親へ訴えかけた。
「違うわね。カトリーヌに魅力が無いから婚約破棄されたんじゃないの? それをルイーズに責任転嫁するなんてお門違いよ」
私に魅力が無いですって!?
私は怒りを通り越して呆れに転じた。
「なっ……私が背が高いから……が原因だったんですよ、お母様」
しかし、母親は首を左右に振る。
「違うわね。断る理由なんていくらでもあるわ」
私は歯を食いしばった。
確かに断る理由などナンボでもある。
でも、私とアルフレッドが婚約していたことを、ルイーズは応援してくれた。
嘘よ。
ルイーズが一方的に私からアルフレッドを奪ったのよ。
「どうしたの、カトリーヌ。あなたに魅力が無くなったから婚約破棄されたんじゃないの? 違う?」
私に魅力が無くなった?
背が高い事は初めからわかっていた話ではないか!
「ルイーズと仲違いしたとはとんでもない話。あなたはアトス家の恥じよ。私のお姉さまに恥をかかせるつもりなの?」
伯母に恥をかかせるつもりなど毛頭も無い。
「この話はアトス家には広がっているはずね。きっとアサエロ家にも話はいっているはずよ。そうよ、カトリーヌ。あなたは悪役令嬢になっているのではないかしら?」
「悪役令嬢? そんなの名誉毀損だですわ、お母様」
「でも。昔はあなた、ルイーズによく遊んでもらっていたじゃない。その恩も忘れて」
恩も何もへったくれもないわ。
私はむしろ被害者なのよ。
どうして悪役令嬢の濡衣を着させられなければならないの?
そこへ、父親が応接間に入ってきた。
「何をもめているんだい? エリザベート」
「今回の婚約破棄の件よ」
父親は上座に当たる席に腰掛けるとパイプに火をつけた。
「婚約破棄は残念だったな」
父親はブラウンヘアをマッシュルームカットにしてスカイブルーの瞳を携えている。
やはり背は高いがその分横もある。
その体格の良さに、一瞥しただけで『勝てない』と思った泥棒がたじろいで逃げたという逸話がある。
「それがね、ルイーズに責任をなすりつけているのよ。あなたも何とか言ってよ」
「うむ。アルフレッドはカトリーヌに嫌気が差し、ルイーズに乗り換えたという話だね?」
「そうなの」
「これでは確かにアトス家のメンツが立たないな」
アトス家は子爵。
それがたまたま伯母は伯爵家に嫁ぎ、母が男爵家に嫁いだだけの話。
父親は頭を抱えた。
「お父様。ルイーズは私とアルフレッドが婚約していた事を知っていました。そして『おめでとう』まで言ってくれました。けど、先だって手のひらをひっくり返したかのように人が変わっていました」
「……」
父親が何かを言おうとした時に母親が遮った。
「だからね、カトリーヌに魅力が無くなったからルイーズと一緒になる事を決めたんじゃないかしら? って思って」
「そうだなぁ。だけど、ルイーズもルイーズだ。ルイーズは遠慮というものを知らないな」
その言葉に反応するかのように母親の表情が変わった。
もしかしてお父様は私の味方なのかしら?
「でーもー。アルフレッド様がカトリーヌに見切りをつければ必然的に……」
「いや。確かに理由は諸々あるかもしれない。だけど、婚約をいとも簡単に破棄してしまうアルフレッド様にも問題はある」
母親は目の色を変えた。
目から炎が出てきそうな勢いだ。
「違うわ。アルフレッド様がカトリーヌに嫌気が差したのだから、婚約破棄になって当然なのよ。これでもしカトリーヌと結婚したら、取り返しのつかない事になっていたかもしれないのよ」
母親の口調は明らかに憤懣(ふんまん)に満ちていた。
「お母様。何度も言いますがルイーズが私から……」
と言ったら母親が遮った。
「ルイーズはあなたが小さい時に沢山面倒を見てくれた。そのルイーズがどうしてあなたから婚約者を奪うの」
それとこれとは別だわ!
仮に私への好意で面倒を見てくれたとしても、年も経れば幼少の思い出など過去の引き出しに仕舞われるに決まっている。
「今のルイーズは違います。ルイーズは言いました。『男爵令嬢は大人しく平民と結婚しなさい』と」
母親は首を横に振る。
「ルイーズがそんな事言うわけないわ。ルイーズを陥れようとしているのね?」
「まぁまぁ」
と父親が宥めてきた。
「ルイーズがそのような発言をしたのも問題だな」
父親は頭を抱えている。
「ルイーズを……悪く言いたくないんですが」
私はフォローを入れた。
「そうやってルイーズへの悪口雑言並べても私は信じないからね。もうあんたたちと話していても埒が明かないわ。もういい。出てく!」
と言って母親は応接間を出て行った。
「お父様は信じてくれるんですね?」
「勿論さ、カトリーヌ。母親はアトス家の確執と見て恥じらいを感じているのでしょう」
やはり、お父様は味方でした。
「母親と軋轢が生じてしまっても、私はカトリーヌの味方だ」
と言って父は手を握ってくれました。
ルイーズも母も敵に回ってしまった今、味方をしてくれるのは父だけ。
恐らく、アサエロ家に嫁いだ伯母も私の味方などしてくれないでしょう。
私には父方の親戚だけが味方だと悟りました。
母親とは応接間で話をする事になりました。
外は晴れている。
初春の晴れではあるものの、まだまだアルファン邸の中は寒い。
「カトリーヌ。あなたって人は。アルフレッド様と婚約破棄だなんて。恥ずかしいわ」
母親もカトリーヌと同じオレンジバーミリオンの髪で長い髪をおだんごにしている。
「しかも、従姉妹のルイーズと仲違いしたのね。信じられないわ」
「違うんです、お母様。アルフレッドをルイーズに奪われたんです」
私は必死になって母親へ訴えかけた。
「違うわね。カトリーヌに魅力が無いから婚約破棄されたんじゃないの? それをルイーズに責任転嫁するなんてお門違いよ」
私に魅力が無いですって!?
私は怒りを通り越して呆れに転じた。
「なっ……私が背が高いから……が原因だったんですよ、お母様」
しかし、母親は首を左右に振る。
「違うわね。断る理由なんていくらでもあるわ」
私は歯を食いしばった。
確かに断る理由などナンボでもある。
でも、私とアルフレッドが婚約していたことを、ルイーズは応援してくれた。
嘘よ。
ルイーズが一方的に私からアルフレッドを奪ったのよ。
「どうしたの、カトリーヌ。あなたに魅力が無くなったから婚約破棄されたんじゃないの? 違う?」
私に魅力が無くなった?
背が高い事は初めからわかっていた話ではないか!
「ルイーズと仲違いしたとはとんでもない話。あなたはアトス家の恥じよ。私のお姉さまに恥をかかせるつもりなの?」
伯母に恥をかかせるつもりなど毛頭も無い。
「この話はアトス家には広がっているはずね。きっとアサエロ家にも話はいっているはずよ。そうよ、カトリーヌ。あなたは悪役令嬢になっているのではないかしら?」
「悪役令嬢? そんなの名誉毀損だですわ、お母様」
「でも。昔はあなた、ルイーズによく遊んでもらっていたじゃない。その恩も忘れて」
恩も何もへったくれもないわ。
私はむしろ被害者なのよ。
どうして悪役令嬢の濡衣を着させられなければならないの?
そこへ、父親が応接間に入ってきた。
「何をもめているんだい? エリザベート」
「今回の婚約破棄の件よ」
父親は上座に当たる席に腰掛けるとパイプに火をつけた。
「婚約破棄は残念だったな」
父親はブラウンヘアをマッシュルームカットにしてスカイブルーの瞳を携えている。
やはり背は高いがその分横もある。
その体格の良さに、一瞥しただけで『勝てない』と思った泥棒がたじろいで逃げたという逸話がある。
「それがね、ルイーズに責任をなすりつけているのよ。あなたも何とか言ってよ」
「うむ。アルフレッドはカトリーヌに嫌気が差し、ルイーズに乗り換えたという話だね?」
「そうなの」
「これでは確かにアトス家のメンツが立たないな」
アトス家は子爵。
それがたまたま伯母は伯爵家に嫁ぎ、母が男爵家に嫁いだだけの話。
父親は頭を抱えた。
「お父様。ルイーズは私とアルフレッドが婚約していた事を知っていました。そして『おめでとう』まで言ってくれました。けど、先だって手のひらをひっくり返したかのように人が変わっていました」
「……」
父親が何かを言おうとした時に母親が遮った。
「だからね、カトリーヌに魅力が無くなったからルイーズと一緒になる事を決めたんじゃないかしら? って思って」
「そうだなぁ。だけど、ルイーズもルイーズだ。ルイーズは遠慮というものを知らないな」
その言葉に反応するかのように母親の表情が変わった。
もしかしてお父様は私の味方なのかしら?
「でーもー。アルフレッド様がカトリーヌに見切りをつければ必然的に……」
「いや。確かに理由は諸々あるかもしれない。だけど、婚約をいとも簡単に破棄してしまうアルフレッド様にも問題はある」
母親は目の色を変えた。
目から炎が出てきそうな勢いだ。
「違うわ。アルフレッド様がカトリーヌに嫌気が差したのだから、婚約破棄になって当然なのよ。これでもしカトリーヌと結婚したら、取り返しのつかない事になっていたかもしれないのよ」
母親の口調は明らかに憤懣(ふんまん)に満ちていた。
「お母様。何度も言いますがルイーズが私から……」
と言ったら母親が遮った。
「ルイーズはあなたが小さい時に沢山面倒を見てくれた。そのルイーズがどうしてあなたから婚約者を奪うの」
それとこれとは別だわ!
仮に私への好意で面倒を見てくれたとしても、年も経れば幼少の思い出など過去の引き出しに仕舞われるに決まっている。
「今のルイーズは違います。ルイーズは言いました。『男爵令嬢は大人しく平民と結婚しなさい』と」
母親は首を横に振る。
「ルイーズがそんな事言うわけないわ。ルイーズを陥れようとしているのね?」
「まぁまぁ」
と父親が宥めてきた。
「ルイーズがそのような発言をしたのも問題だな」
父親は頭を抱えている。
「ルイーズを……悪く言いたくないんですが」
私はフォローを入れた。
「そうやってルイーズへの悪口雑言並べても私は信じないからね。もうあんたたちと話していても埒が明かないわ。もういい。出てく!」
と言って母親は応接間を出て行った。
「お父様は信じてくれるんですね?」
「勿論さ、カトリーヌ。母親はアトス家の確執と見て恥じらいを感じているのでしょう」
やはり、お父様は味方でした。
「母親と軋轢が生じてしまっても、私はカトリーヌの味方だ」
と言って父は手を握ってくれました。
ルイーズも母も敵に回ってしまった今、味方をしてくれるのは父だけ。
恐らく、アサエロ家に嫁いだ伯母も私の味方などしてくれないでしょう。
私には父方の親戚だけが味方だと悟りました。
あなたにおすすめの小説
お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~
マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。
その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。
しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。
貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。
そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。
異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。
公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に
ゆっこ
恋愛
王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。
私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。
「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」
唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。
婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。
「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」
ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。
【完結】猫を被ってる妹に悪役令嬢を押し付けられたお陰で人生180度変わりました。
本田ゆき
恋愛
「お姉様、可愛い妹のお願いです。」
そう妹のユーリに乗せられ、私はまんまと悪役令嬢として世に名前を覚えられ、終いには屋敷を追放されてしまった。
しかし、自由の身になった私に怖いものなんて何もない!
もともと好きでもない男と結婚なんてしたくなかったし堅苦しい屋敷も好きでなかった私にとってそれは幸運なことだった!?
※小説家になろうとカクヨムでも掲載しています。
3月20日
HOTランキング8位!?
何だか沢山の人に見て頂いたみたいでありがとうございます!!
感想あんまり返せてないですがちゃんと読んでます!
ありがとうございます!
3月21日
HOTランキング5位人気ランキング4位……
イッタイ ナニガ オコッテンダ……
ありがとうございます!!
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?
鏑木 うりこ
恋愛
父親が一緒だと言う一つ違いの妹は姉の物を何でも欲しがる。とうとう婚約者のアレクシス殿下まで欲しいと言い出た。もうここには居たくない姉のユーティアは指輪を一つだけ持って家を捨てる事を決める。
「なあ、お嬢さん、指輪はあんたを選んだのかい?」
庭師のシューの言葉に頷くと、庭師はにやりと笑ってユーティアの手を取った。
少し前に書いていたものです。ゆるーく見ていただけると助かります(*‘ω‘ *)
HOT&人気入りありがとうございます!(*ノωノ)<ウオオオオオオ嬉しいいいいい!
色々立て込んでいるため、感想への返信が遅くなっております、申し訳ございません。でも全部ありがたく読ませていただいております!元気でます~!('ω')完結まで頑張るぞーおー!
★おかげさまで完結致しました!そしてたくさんいただいた感想にやっとお返事が出来ました!本当に本当にありがとうございます、元気で最後まで書けたのは皆さまのお陰です!嬉し~~~~~!
これからも恋愛ジャンルもポチポチと書いて行きたいと思います。また趣味趣向に合うものがありましたら、お読みいただけるととっても嬉しいです!わーいわーい!
【完結】をつけて、完結表記にさせてもらいました!やり遂げた~(*‘ω‘ *)
婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。
ぽっちゃりおっさん
恋愛
公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。
しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。
屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。
【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。
差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。
そこでサラが取った決断は?