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帰郷遊戯 最終話
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~ダイラス国 王妃の執務室にて~
「お帰りなさい。無事に帰ってこられて何よりだわ」
優雅に椅子に座りながら穏やかな笑顔でアリスを迎えるのは王妃だ。
「ただいま戻りました」
「早速だけれど……何か色々とやらかしたみたいね」
「いえ、オスカー皇太子に頼まれたことを遂行しただけです」
「へー…………他国の方たちがたくさんいらっしゃる場で大国の王妃相手にケンカ売ったり、ベラドンナ様が服毒したり、自国の公爵に無茶振りしたりがねぇ」
「いや、あのまあ少々度が過ぎたこともやっちゃったかな?」
「あなたが色々とやらかすのは今に始まったことではないけれど、他国に行ってまでやることはないじゃない!?外務大臣なんて今後どんな顔して他国と渡り合っていけば良いのか……と寝込んでしまったわ!!!」
「申し訳ありません!仰るとおりにございます!」
王妃の突然の激昂に思わず身体がびくつくアリス。
「何よりもラルフとオリビアを巻き込むなんて、あなた母親失格よ!!!可愛い可愛いラルフとオリビア……きっと怖かったでしょうに……」
いや、笑っていたと聞いたが……。黙っておこう。
「ご尤もでございます」
「ブランクだってショックで寝込んでいるのよ!」
「各方面にご迷惑をお掛けしたようで……」
「恋に狂い、傲慢不遜、あれだけ多くの者たちに迷惑をかけまくったブランクの精神をまともだと思う日が来るなんて!あなたはどれだけ狂ってるの!?」
いや、それは夫に失礼では。
「王妃様、でもとりあえず全員無事でしたし。実際何か問題は起きてないじゃないですか。所詮世の中は結果論ですよ」
「んもーーーーーーーっ!!!そういう問題じゃないでしょ!!!そもそもやらかすなって言ってるのよ!!!」
んもーーーーーーーって。
王妃の口から、んもーーーーーーーって……………。
やばい。
「アリスあなた何笑ってるの?」
バレた。
「牛が通ったなと思いまして」
王妃は侍女と護衛を睨みつける。
誰だ今ブハッって吹き出したの。
「んんっ、とりあえずあの変態公爵は良いですが子供に危険を及ぼすようなことは二度としてはいけませんよ」
「畏まりました」
「まあそうは言っても言うこと聞かないのがあなたよね」
「流石王妃様よくおわかりで」
「こら」
「ところで王妃様」
「あ?…………っと。なあに?」
あ?って普段からは想像できない低い声が聞こえたような。王妃のいつもの優雅で気品溢れる様はどこに行ってしまったのか。
「王妃という地位は人を狂わすほど重いものですか?」
「え?しらないわ」
「…………………………」
そうか目の前におわすは王妃ではなかったかとしげしげと顔を見るアリス。
「そんな顔しないで頂戴。だって同じ王妃でも国土の広さも人の多さも、人材の豊かさも、経済力も全然違うじゃない。あんな大国の王妃の気持ちなんてわからないわよ」
「それはそうですけど」
「まあでも重圧はすごいんじゃない?世界でもトップの大国だから他国からの視線もすごいだろうし、強力な魔法使いを抱えているから魔物討伐への期待もすごいだろうし。
なんで臣下より優れていないといけないのかはよくわからないけど。うまく利用すれば良いのにとは思うわ。でも実際にはベラドンナ様は臣下の実力も認めていたし、有用に活用していたわよね。
よくわからないわ。完璧主義過ぎたのかしらね。愛国心と自尊心が高すぎたのかしら?国のために優秀な臣下を利用しないといけない、でもそれらのトップたる王族はもっと優秀じゃないといけないとかかしら」
「なるほど王妃様とは自分は動かず優秀な臣下をこき使いまくり、あれをしろこれをしろと命令しまくるしたたかな性悪女の方が国は安定するのかもしれないですね」
「……あなたそれは誰をイメージして言ってるのかしら?」
「嫌ですわ王妃様、想像上の人物に決まってるじゃないですかぁ」
「「ウフフフ………………」」
顔を見合わし、不敵に笑うアリスと王妃だった。
~~~~~~
「ラルフ、オリビア」
王妃と話しをした後、自室に戻ったアリスは膝に双子を乗せていた。母親の呼びかけに応じるようにじーーーっと母の顔を見つめる二人。
「ごめんね。怖かった?」
あーあーと声は出ているが明確な返事はない。まだ幼いのだから当たり前だ。公爵の話を聞く限りは怖くなさそうだったが、本心は本人にしかわからない。
アリスはふと考える。
この子達が膨大な魔力を持っていることは間違いない。でももしこの子達に能力の差があったり、もしくは二人共魔法が開花しなかったら自分はどう思うだろう。
実力主義の家で生まれ、育ってきた自分。厳しい家だったが、自身はどんな無茶ぶりにも応えてきた。自分にはそれだけの力があった。母、父、兄も姉たちも皆怪物ばかりだった。
どいつもこいつもどんな権力にも強力な魔物たちにも打ち勝ってきた。それが当たり前のことだった。
ラルフもオリビアも可愛い。
可愛い………………が
自分にとって当たり前の家族像からこの子達が外れた場合、自分もベラドンナのように蔑んだり、家族として認めないと感じることがあるのだろうか。
アリスの視線を真っ向から見つめ返すクリクリお目々の二人。アリスはフッと軽く笑うと視線を外す。
そもそもこんなことを考えるなんて……。将来のことはそのときにしかわからない。
そのときの気持ちも。
視線を逸らしたアリスの顔の横を流れる左右の髪の毛がそれぞれ数本地面に落ちた。自然に落ちものではない。
魔法。
アリスではない。
ラルフとオリビアだ。
アリスの口角が上がる。
彼らの魔法……まるでアリスの心配など不要だと言っているよう。
そうね。
ゆっくりと双子を見やるアリスの顔には穏やかな嘲笑が浮かぶ。
それは、愚かな考えが頭をよぎった自分へ向けられたものだった。
帰郷遊戯 了
「お帰りなさい。無事に帰ってこられて何よりだわ」
優雅に椅子に座りながら穏やかな笑顔でアリスを迎えるのは王妃だ。
「ただいま戻りました」
「早速だけれど……何か色々とやらかしたみたいね」
「いえ、オスカー皇太子に頼まれたことを遂行しただけです」
「へー…………他国の方たちがたくさんいらっしゃる場で大国の王妃相手にケンカ売ったり、ベラドンナ様が服毒したり、自国の公爵に無茶振りしたりがねぇ」
「いや、あのまあ少々度が過ぎたこともやっちゃったかな?」
「あなたが色々とやらかすのは今に始まったことではないけれど、他国に行ってまでやることはないじゃない!?外務大臣なんて今後どんな顔して他国と渡り合っていけば良いのか……と寝込んでしまったわ!!!」
「申し訳ありません!仰るとおりにございます!」
王妃の突然の激昂に思わず身体がびくつくアリス。
「何よりもラルフとオリビアを巻き込むなんて、あなた母親失格よ!!!可愛い可愛いラルフとオリビア……きっと怖かったでしょうに……」
いや、笑っていたと聞いたが……。黙っておこう。
「ご尤もでございます」
「ブランクだってショックで寝込んでいるのよ!」
「各方面にご迷惑をお掛けしたようで……」
「恋に狂い、傲慢不遜、あれだけ多くの者たちに迷惑をかけまくったブランクの精神をまともだと思う日が来るなんて!あなたはどれだけ狂ってるの!?」
いや、それは夫に失礼では。
「王妃様、でもとりあえず全員無事でしたし。実際何か問題は起きてないじゃないですか。所詮世の中は結果論ですよ」
「んもーーーーーーーっ!!!そういう問題じゃないでしょ!!!そもそもやらかすなって言ってるのよ!!!」
んもーーーーーーーって。
王妃の口から、んもーーーーーーーって……………。
やばい。
「アリスあなた何笑ってるの?」
バレた。
「牛が通ったなと思いまして」
王妃は侍女と護衛を睨みつける。
誰だ今ブハッって吹き出したの。
「んんっ、とりあえずあの変態公爵は良いですが子供に危険を及ぼすようなことは二度としてはいけませんよ」
「畏まりました」
「まあそうは言っても言うこと聞かないのがあなたよね」
「流石王妃様よくおわかりで」
「こら」
「ところで王妃様」
「あ?…………っと。なあに?」
あ?って普段からは想像できない低い声が聞こえたような。王妃のいつもの優雅で気品溢れる様はどこに行ってしまったのか。
「王妃という地位は人を狂わすほど重いものですか?」
「え?しらないわ」
「…………………………」
そうか目の前におわすは王妃ではなかったかとしげしげと顔を見るアリス。
「そんな顔しないで頂戴。だって同じ王妃でも国土の広さも人の多さも、人材の豊かさも、経済力も全然違うじゃない。あんな大国の王妃の気持ちなんてわからないわよ」
「それはそうですけど」
「まあでも重圧はすごいんじゃない?世界でもトップの大国だから他国からの視線もすごいだろうし、強力な魔法使いを抱えているから魔物討伐への期待もすごいだろうし。
なんで臣下より優れていないといけないのかはよくわからないけど。うまく利用すれば良いのにとは思うわ。でも実際にはベラドンナ様は臣下の実力も認めていたし、有用に活用していたわよね。
よくわからないわ。完璧主義過ぎたのかしらね。愛国心と自尊心が高すぎたのかしら?国のために優秀な臣下を利用しないといけない、でもそれらのトップたる王族はもっと優秀じゃないといけないとかかしら」
「なるほど王妃様とは自分は動かず優秀な臣下をこき使いまくり、あれをしろこれをしろと命令しまくるしたたかな性悪女の方が国は安定するのかもしれないですね」
「……あなたそれは誰をイメージして言ってるのかしら?」
「嫌ですわ王妃様、想像上の人物に決まってるじゃないですかぁ」
「「ウフフフ………………」」
顔を見合わし、不敵に笑うアリスと王妃だった。
~~~~~~
「ラルフ、オリビア」
王妃と話しをした後、自室に戻ったアリスは膝に双子を乗せていた。母親の呼びかけに応じるようにじーーーっと母の顔を見つめる二人。
「ごめんね。怖かった?」
あーあーと声は出ているが明確な返事はない。まだ幼いのだから当たり前だ。公爵の話を聞く限りは怖くなさそうだったが、本心は本人にしかわからない。
アリスはふと考える。
この子達が膨大な魔力を持っていることは間違いない。でももしこの子達に能力の差があったり、もしくは二人共魔法が開花しなかったら自分はどう思うだろう。
実力主義の家で生まれ、育ってきた自分。厳しい家だったが、自身はどんな無茶ぶりにも応えてきた。自分にはそれだけの力があった。母、父、兄も姉たちも皆怪物ばかりだった。
どいつもこいつもどんな権力にも強力な魔物たちにも打ち勝ってきた。それが当たり前のことだった。
ラルフもオリビアも可愛い。
可愛い………………が
自分にとって当たり前の家族像からこの子達が外れた場合、自分もベラドンナのように蔑んだり、家族として認めないと感じることがあるのだろうか。
アリスの視線を真っ向から見つめ返すクリクリお目々の二人。アリスはフッと軽く笑うと視線を外す。
そもそもこんなことを考えるなんて……。将来のことはそのときにしかわからない。
そのときの気持ちも。
視線を逸らしたアリスの顔の横を流れる左右の髪の毛がそれぞれ数本地面に落ちた。自然に落ちものではない。
魔法。
アリスではない。
ラルフとオリビアだ。
アリスの口角が上がる。
彼らの魔法……まるでアリスの心配など不要だと言っているよう。
そうね。
ゆっくりと双子を見やるアリスの顔には穏やかな嘲笑が浮かぶ。
それは、愚かな考えが頭をよぎった自分へ向けられたものだった。
帰郷遊戯 了
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