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第一章:アーリーンの恋 【第一部】無自覚な初恋
2.ちいさな冒険
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「『新しいドレスのお披露目に王宮へ一緒にいきましょう』って言ったのに」
強請って強請って、ようやく作って貰えた念願のレイヤードチュールスカートを抓み上げて唇を尖らせた。
やわらかなラインを描くフリルが幾重にも重ねられ、花びらのように広がるスカート。
花びらを作るチュール地は勿論シルク製だ。すこしひんやりしていて陽に当たるときらきらと光る。
一枚だけだと下が透けるほど薄いチュール地が、重ねることで色味を増す甘いベビーピンクのドレスとなっている。
着ているだけで自分が妖精になった気分になれる最高のドレスだ。
「全部自分の好みで仕立てて貰えた、初めてのドレスだったのに」
いつも優しくて美しい王妃さまは、アーリーンの憧れの女性だ。
その人からお気に入りのドレスを褒めて貰えると思って、わくわくしながらやってきたのに、憧れのその人と母は、難しい顔をしてお茶を飲んで、難しい事ばかり話し合っていた。
アーリーンの新しいドレスについて、ひと言もなにも声を掛けて貰えなかった。
「がっかりだわ」
赤い唇を尖らせ呟く。最近ついた女家庭教師から叱られそうだと思ったけれど、哀しい気持ちに反抗心が湧きあがりアーリーンは温室の奥まで進んでいった。
奥の奥まで進んでくると咲いている花ばかりではなく、大きく繁った背の高い熱帯性の植物やつる植物が増えてきた。
中にはまだ青い実をつけている物もある。
興味深げに辺りを見回していると、そこにちいさな扉を発見した。
「あら。ここにも扉があるのね」
案内された瀟洒な錬鉄製の入口とはまったく趣の違う扉だった。
武骨な鉄製だ。
周囲は貴重なガラス張りの温室には不似合い過ぎるその扉に、アーリーンは吸い寄せられるように近付いていった。
カチャリ。
扉の取っ手に触れると、重そうな見た目の割りに軽い音がして、扉はあっさりと開いた。
『温室から出てはいけませんよ?』
母の諫める声が聞こえた気がしたが、反抗心がむくむくと湧き上がったアーリーンは、そのままその扉から外へと出た。
***
「もう。なんなのよ、ここ」
鬱蒼と木が繁る小道をまっすぐに進む。
扉から出たところにはちいさな木の小屋があって、その奥に道が続いていたのだ。
最初はちょっとした反抗心に背中を押されていたこともあって、まったく怖いと思わなかったけれど、周囲が木々で囲まれて視界に建物らしきものが一切見えなくなってしまった頃から、アーリーンは小道に入ったことを後悔し始めていた。
何にも誰にも出くわさないし足も疲れてきたので、そろそろ来た道を戻ろうかと思った時だった。
小道の先が開けていた。花が咲いているエリアへと入れるのか、視界の先の方に彩りが戻って来た。
──あそこまで辿り着けば、なにかあるのかもしれない。
期待に胸を膨らませ、光のある方へと足を進める。
そこには見事な庭が広がっていた。
「わぁ。綺麗」
見事な秋薔薇が咲き誇っている。
小ぶりながらも色が深く香りが良い秋薔薇がこれほど沢山咲いている場所を、アーリーンは他に知らない。
先ほどまでの疲れや反抗心を忘れて、美しい薔薇に夢中になる。
足取りも軽くなり、気分は薔薇の妖精だった。
強請って強請って、ようやく作って貰えた念願のレイヤードチュールスカートを抓み上げて唇を尖らせた。
やわらかなラインを描くフリルが幾重にも重ねられ、花びらのように広がるスカート。
花びらを作るチュール地は勿論シルク製だ。すこしひんやりしていて陽に当たるときらきらと光る。
一枚だけだと下が透けるほど薄いチュール地が、重ねることで色味を増す甘いベビーピンクのドレスとなっている。
着ているだけで自分が妖精になった気分になれる最高のドレスだ。
「全部自分の好みで仕立てて貰えた、初めてのドレスだったのに」
いつも優しくて美しい王妃さまは、アーリーンの憧れの女性だ。
その人からお気に入りのドレスを褒めて貰えると思って、わくわくしながらやってきたのに、憧れのその人と母は、難しい顔をしてお茶を飲んで、難しい事ばかり話し合っていた。
アーリーンの新しいドレスについて、ひと言もなにも声を掛けて貰えなかった。
「がっかりだわ」
赤い唇を尖らせ呟く。最近ついた女家庭教師から叱られそうだと思ったけれど、哀しい気持ちに反抗心が湧きあがりアーリーンは温室の奥まで進んでいった。
奥の奥まで進んでくると咲いている花ばかりではなく、大きく繁った背の高い熱帯性の植物やつる植物が増えてきた。
中にはまだ青い実をつけている物もある。
興味深げに辺りを見回していると、そこにちいさな扉を発見した。
「あら。ここにも扉があるのね」
案内された瀟洒な錬鉄製の入口とはまったく趣の違う扉だった。
武骨な鉄製だ。
周囲は貴重なガラス張りの温室には不似合い過ぎるその扉に、アーリーンは吸い寄せられるように近付いていった。
カチャリ。
扉の取っ手に触れると、重そうな見た目の割りに軽い音がして、扉はあっさりと開いた。
『温室から出てはいけませんよ?』
母の諫める声が聞こえた気がしたが、反抗心がむくむくと湧き上がったアーリーンは、そのままその扉から外へと出た。
***
「もう。なんなのよ、ここ」
鬱蒼と木が繁る小道をまっすぐに進む。
扉から出たところにはちいさな木の小屋があって、その奥に道が続いていたのだ。
最初はちょっとした反抗心に背中を押されていたこともあって、まったく怖いと思わなかったけれど、周囲が木々で囲まれて視界に建物らしきものが一切見えなくなってしまった頃から、アーリーンは小道に入ったことを後悔し始めていた。
何にも誰にも出くわさないし足も疲れてきたので、そろそろ来た道を戻ろうかと思った時だった。
小道の先が開けていた。花が咲いているエリアへと入れるのか、視界の先の方に彩りが戻って来た。
──あそこまで辿り着けば、なにかあるのかもしれない。
期待に胸を膨らませ、光のある方へと足を進める。
そこには見事な庭が広がっていた。
「わぁ。綺麗」
見事な秋薔薇が咲き誇っている。
小ぶりながらも色が深く香りが良い秋薔薇がこれほど沢山咲いている場所を、アーリーンは他に知らない。
先ほどまでの疲れや反抗心を忘れて、美しい薔薇に夢中になる。
足取りも軽くなり、気分は薔薇の妖精だった。
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