完結 私は何を見せられているのでしょう?

音爽(ネソウ)

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「まぁ!私が魔法使いとして参加を?騎士団の一員としてですか?」
マルガネットは満面の笑みで一つ返事で「是非」と言ってしまう、その様子に頭を抱えて待ちなさいとシュナイザ卿は窘める。

「あくまで後方支援する客員というか補佐としての参加だぞ、勘違いするでない」
「でも、でも!魔物討伐隊として参戦して宜しいのでしょう!!?あぁ腕が鳴るわ~♪うふふ、新しく開発した氷結魔法があるんですよ!」
彼女は行楽に出かける前の子供のようにワクワクを隠せずそう述べた、ピクニックにでも行くつもりなのか。シュナイザ伯爵は益々頭が痛くなったのか、よろめいて力なくソファに沈んだ。

「遊びではないのだぞ、全く……どうしてこう跳ねっ返りに育ったのだ。刺繍でも刺していれば良い物を」
「あら御父様ったら考えが古いです、近頃は殿方が刺繍や編み物をする趣味を持ったりするんですよ」
「……」
考えが古いと言われた卿はウンザリした顔で「世の男どもはどうなっているんだ」と嘆く。



早速と実戦に備えて特訓するんだと意気込むマルガネットは北側の広い庭園で軽く屈伸した。いくつかの的を用意して氷結魔法を手の平に集中しだした。
「これ、マルガネット、先ずは準備運動からなさい。足首を捻ったらどうします」
「え、あ……お母様……はぁい……」
パリパリと凍っていく空気を一旦封じてシュンとする彼女だ。足元には霜柱が出来始めていてシャリシャリと小気味よい音を立てた。

彼女の母マリアベルは氷結魔法の師でもある、威力はマルガネットにやや劣るものの繰り出す技は的確で美しく洗練されている。
「はい、宜しい。貴女はどうも大雑把すぎます、大方覚えたての魔法を繰り出し荒業で持って裏庭を荒らすつもりだったのでしょう?いけませんからね、基礎を大切になさい」
「う、はい」

すっかり悄気て基礎の氷魔法を淡々と的に当てて行く、言葉にはしないが”つまらない”とへの字口を作り出す。そんな娘を見て「ヤレヤレ」と肩を竦める夫人である。


***


一方では緊張感のないブレンドンとテルミナが手を取り合い小躍りして「やった、やった」とはしゃいでいた。
「やったな!ミナ、おおよそ3倍に膨れたぞ!この調子ならば失った慰謝料の金額を超えそうじゃないか」
「うっふふ、言ったでしょう?儲けることは案外簡単なのよ、ただ読みが悪いと下落するリスクがあるわ」
「そうだな、でも俺はキミを信用してるさ」
ブレンドンは次はどの銘柄を買おうかと投資の算段をしていた。テルミナが儲かると進める株ばかり売り買いをしている。いまの所は問題なく増え続けている。

「ねぇ、ここの株はどう?まだ公開はされていないのだけれど、内緒で売られるらしいの」
「ほお、それは良いな!」
ホクホク顔のブレンドンは目の前の利益にばかり翻弄されてテルミナの真意に気が付かない。







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