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臭い物には蓋とばかりに、内情から目を背け続ける愚かなブレンドンとテルミナは地方の宿に逗留を続けていた。彼らの思惑通りマルガネットととの結婚は白紙撤回された、だがそれだけで済むわけもなく、ブレンドンはじわじわと己の首が締め付けられていくのを実感している所だ。
「くそっ!どうして俺がこんな目に!しかも慰謝料などをどうして被らなければならないのだ!」
昼間から酒を浴びて管を巻くブレンドンはダンと机を叩く。ピリピリしている空気の中、テルミナだけは呑気に禿げたマニュキュアを気にして爪を擦っていた。無論、彼女にも慰謝料が請求されたのだが、テルミナの実家はそれなりに裕福だったので金子のことなど気にしていない。少々汚い仕事にも手を出していると噂がチラホラ。
「なぁおいテルミナ、キミはどうしてそうも呑気にしている?ヒック……もっとこう焦りとか」
「はぁ?焦りですって?クスッどうして私が?フフフッ」
彼女は不敵に笑うとフワリとその場で回転する、まるで夢見るように軽やかなステップを踏む。終いには鼻歌を奏で始め踊り出す。
「いい加減にしてくれ!神経に触るよ」
「あらま大袈裟ねぇ、ならば見なければ良いでしょう?貴方、たかが三百万程度の慰謝料で懐が痛いのかしら」
「なん……だと!?」
テルミナの発言に酷く驚いた彼は一気に酔いが冷めた、そんな事を目にもくれずに彼女は相変わらず禿げた爪を弄っている。彼女にとって数百万の金など些末なことらしい。
「ど、して……バルドラッド伯爵家はそんなに余裕があるのかい?」
「あるわよぉ、それにお父様は私に甘いモノ。あの日は流石に怒られちゃったけれど」
ケラケラと笑う彼女はヒラリヒラリと舞い続けてニコリと笑う。
「うふ、ねぇブレン。私達の仕事に一枚噛んでみない?」
***
「なんだと!?それでは王都にまで塁が及ぶということではないか!」
シュナイザ伯爵は今後起こりうる被害予測に唖然とする、あくまで予測なので絶対とは言えないがそれでも魔物暴走の被害はさけようもない。
月初めの午前中、王侯貴族が雁首を揃えてスタンピードの対策会議を開いている最中だ。今の所は東山脈の麓付近で魔物がポツポツ出現している程度だ。だが、それでも徐々に増えてきている。近くの村に被害が出るのは間もないだろう。
「損害が出る前にダンジョン近くの町村に避難を促すしか今は出来ぬ、しかしながら魔物の脅威を甘くみており退避が遅々として進まぬのだ」
この国王ダインザードは苦虫を噛んだような顔でそう唸る、宰相らも同様に首を上下にするばかりだ。騎士団の一部をもって退避をさせているのだが収穫期を迎えた秋口とあって農民たちの腰は重い。
「ぬぅ……収穫か、大事な時期であると分かっておるがこればかりは」
王は厳めしい顔をさらに顰めて益々と唸る、そこに挙手をして「任せて頂けないか」と声が上がる。それはベレット侯爵であった、卿は言う「我に策があります」と腰を曲げた。そして、彼はシュナイザに向き合いこう言う。
「大魔法を使う貴殿の愛娘にも是非参加して頂きたい」
「え?」
彼の娘マルガネットを希少な魔法使いと知っているベレットは良い笑顔でそう言うのだった。
「くそっ!どうして俺がこんな目に!しかも慰謝料などをどうして被らなければならないのだ!」
昼間から酒を浴びて管を巻くブレンドンはダンと机を叩く。ピリピリしている空気の中、テルミナだけは呑気に禿げたマニュキュアを気にして爪を擦っていた。無論、彼女にも慰謝料が請求されたのだが、テルミナの実家はそれなりに裕福だったので金子のことなど気にしていない。少々汚い仕事にも手を出していると噂がチラホラ。
「なぁおいテルミナ、キミはどうしてそうも呑気にしている?ヒック……もっとこう焦りとか」
「はぁ?焦りですって?クスッどうして私が?フフフッ」
彼女は不敵に笑うとフワリとその場で回転する、まるで夢見るように軽やかなステップを踏む。終いには鼻歌を奏で始め踊り出す。
「いい加減にしてくれ!神経に触るよ」
「あらま大袈裟ねぇ、ならば見なければ良いでしょう?貴方、たかが三百万程度の慰謝料で懐が痛いのかしら」
「なん……だと!?」
テルミナの発言に酷く驚いた彼は一気に酔いが冷めた、そんな事を目にもくれずに彼女は相変わらず禿げた爪を弄っている。彼女にとって数百万の金など些末なことらしい。
「ど、して……バルドラッド伯爵家はそんなに余裕があるのかい?」
「あるわよぉ、それにお父様は私に甘いモノ。あの日は流石に怒られちゃったけれど」
ケラケラと笑う彼女はヒラリヒラリと舞い続けてニコリと笑う。
「うふ、ねぇブレン。私達の仕事に一枚噛んでみない?」
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「なんだと!?それでは王都にまで塁が及ぶということではないか!」
シュナイザ伯爵は今後起こりうる被害予測に唖然とする、あくまで予測なので絶対とは言えないがそれでも魔物暴走の被害はさけようもない。
月初めの午前中、王侯貴族が雁首を揃えてスタンピードの対策会議を開いている最中だ。今の所は東山脈の麓付近で魔物がポツポツ出現している程度だ。だが、それでも徐々に増えてきている。近くの村に被害が出るのは間もないだろう。
「損害が出る前にダンジョン近くの町村に避難を促すしか今は出来ぬ、しかしながら魔物の脅威を甘くみており退避が遅々として進まぬのだ」
この国王ダインザードは苦虫を噛んだような顔でそう唸る、宰相らも同様に首を上下にするばかりだ。騎士団の一部をもって退避をさせているのだが収穫期を迎えた秋口とあって農民たちの腰は重い。
「ぬぅ……収穫か、大事な時期であると分かっておるがこればかりは」
王は厳めしい顔をさらに顰めて益々と唸る、そこに挙手をして「任せて頂けないか」と声が上がる。それはベレット侯爵であった、卿は言う「我に策があります」と腰を曲げた。そして、彼はシュナイザに向き合いこう言う。
「大魔法を使う貴殿の愛娘にも是非参加して頂きたい」
「え?」
彼の娘マルガネットを希少な魔法使いと知っているベレットは良い笑顔でそう言うのだった。
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