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諸悪の根源を叩く
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ティモ青年の仕事はギルド経由で受けた依頼だったが、灯台守りを雇っているのは街の権力者である。所謂網元で町長がそれだ。
海で育った彼は街を離れたくないし、海を愛していた。それゆえに灯台から離れることができないのだ。
「爺さんと一緒に始めた仕事だけどそれなりに誇りを持ってる、投げ出したくないし何より猟師が困っちゃうからさ。それと誤解させてゴメン孤独だったの3年間だけだよ」
「なるほど、複雑な事情があったんだね」
祖父が亡くなったのも3年前で、まだ未成年だった彼は侮られて無理矢理そこに縛られる羽目に陥ったのだ。
契約更新をせずに無償で酷使してきたのは、上の人間と読んだドーラは自分の過去と重ねてとても憤る。
「大人しくしてたらダメだよ!一緒にギルドへ抗議に行こう!昼間は灯りはいらないよね?」
「え、うん。そうだけど愚痴を吐いたらスッキリしたし」
気弱らしいティモは現状を改善するのが億劫そうに彼女から視線を外す、海辺に住んでいるので食うには困らないというのも要因のようだ。
「それじゃダメでしょ!ずっと独りぼっちなんてあり得ないし、無能の権力者をのさばらせてちゃ町のためにもよくないんだよ?この町が好きなんでしょ?」
「え……そうだけどボクひとりでどうにか出来る相手じゃないよ」
消極的な態度を崩さない彼に業を煮やしたドーラは「わたしに任せろ!」と大見得を切る。
自分より年下と見える少女がお上に楯突こうとしているのをティモは宥めようとするがドーラは動じない。
「こう見えて私は強いのよ、大船に乗ったつもりで任せてよ!」
「え、泥船にしか見えないんだけど……」
どうにか止まらせようとする灯台守りの彼だったが、気が強く豪胆な彼女は聞く耳を持たなかった。
***
結局彼女ひとりで町の中心に戻ったわけだが、ドーラは彼の要望を無視してきたギルドへ乗り込んだ。
「灯台守りの交代についてなんですけど、何故対処してあげないんですか?」
受け付けの女性にそう声を掛けるドーラであるが、相手の反応は想像と違ったのである。
「はい?灯台守りの交代ですか、ちょっとお待ちくださいね」
分厚いファイルを取り出したギルド員はいつ頃のことかと項目を探す、3年前からと聞いた女性はくまなく過去の記録を探してくれた。
「お待たせしました、申し訳ないのですが依頼の記録がありません。何かの間違いでは?」
「そんなバカな!契約が切れたことも記載してないわけ?」
契約云々の前に灯台守りについての事項が丸っと存在していないとギルド員は言う。
「おかしい!絶対におかしい!海を無償で守って来たティモが哀れすぎるわよ!」
あまりの事に激高したドーラはバンバンとカウンターを叩き周囲から注視された。
「落ち着いてください、ギルドへの依頼書はギルド長がすべて仕分けしていますので、私達からはなんとも」
「そう、だったらギルド長に抗議するまでよ」
彼女はそう宣うとその人物がいるであろう最上階へと向かうのである。面会するには予約が必要だとギルド員は引き止めにかかるがドーラには通じない。
「役に立たない三下は寝てなさい、邪魔なのよ」
精神操作魔法のひとつである、睡眠魔法を彼らに掛けて一気に黙らせた。バタバタと倒れたことで静かになったことを彼女は満足する。
「たくっ、どうせ予約しようが会うつもりもないでしょうよ。臭い物には蓋がお好きなギルド長らしいからね」
面倒ごとは全てもみ消しているだろうと悪行を見透かしたドーラは怒りが収まらない。
最上階である三階へ上がればすぐ目の前に重厚な扉が待ち構えていた。
「お邪魔するわよ!」
脚に強化魔法をかけて扉を蹴り上げた、瞬く間に四散した扉は轟音を立てて床に落ちる。
「な、何事か!?どうしたというのだ!」
「キャー!嫌だ、何が起こったのよー!」
野太い声と絹を裂くような女の声が惨事の場に響いた、耳障りなその声をドーラは嫌そうに聞き流す。
「灯台守りの件でお話がございますのよ、名ばかりのギルド長殿」
執務室に乱入するなり彼女の目に飛び込んで来たのは、デスクの上でイチャコラしていた豚共の姿だった。
女性はギルド員の制服を着崩して、中年男の膝上に乗っていた。今正にお楽しみの最中だったようだ。
「御取込み中失礼、繁殖行為するのもギルドの仕事なわけ?違うよねぇ巫山戯んじゃないわよ!」
「ひぃ!誰か!おい!護衛や職員はどうした?不届き者を捕えよ!」
「誰も来ないわよ、バカめ」
バチバチと怒りの雷を身に纏ったドーラは彼らを威嚇する、泣き喚く女の声が煩いので指先から放電して気絶させた。
「な、なにが目的か?金か、好きなだけくれてやるから出ていけ!」
強盗とでも誤解したらしいギルド長は金庫を指差して喚く、だがそんなものに興味はないドーラは恫喝する。
「喧しいわ、聞いてなかったの?灯台守りのことだって言ったでしょうが!」
「え、灯台……あの、薄汚いアレの話か?」
やっと理解したらしい男は崩れていた衣服を整えて、今更ながら取り繕うと姿勢を正す。
怒りの最高潮に達したドーラは、雷と火魔法を手の平より放ちながら詰問する。
「それで、無償でコキ使ったのは認める?認めない?どっちにしろ許さないけど」
「ご、ご推察通りでございます……はい、契約更新がめんどくさくて、はい」
雇用する資金を出し渋り、人の手配を怠ったことをあっさりゲロした男は、怒り狂ったドーラの魔法を目にして失禁したのであった。
海で育った彼は街を離れたくないし、海を愛していた。それゆえに灯台から離れることができないのだ。
「爺さんと一緒に始めた仕事だけどそれなりに誇りを持ってる、投げ出したくないし何より猟師が困っちゃうからさ。それと誤解させてゴメン孤独だったの3年間だけだよ」
「なるほど、複雑な事情があったんだね」
祖父が亡くなったのも3年前で、まだ未成年だった彼は侮られて無理矢理そこに縛られる羽目に陥ったのだ。
契約更新をせずに無償で酷使してきたのは、上の人間と読んだドーラは自分の過去と重ねてとても憤る。
「大人しくしてたらダメだよ!一緒にギルドへ抗議に行こう!昼間は灯りはいらないよね?」
「え、うん。そうだけど愚痴を吐いたらスッキリしたし」
気弱らしいティモは現状を改善するのが億劫そうに彼女から視線を外す、海辺に住んでいるので食うには困らないというのも要因のようだ。
「それじゃダメでしょ!ずっと独りぼっちなんてあり得ないし、無能の権力者をのさばらせてちゃ町のためにもよくないんだよ?この町が好きなんでしょ?」
「え……そうだけどボクひとりでどうにか出来る相手じゃないよ」
消極的な態度を崩さない彼に業を煮やしたドーラは「わたしに任せろ!」と大見得を切る。
自分より年下と見える少女がお上に楯突こうとしているのをティモは宥めようとするがドーラは動じない。
「こう見えて私は強いのよ、大船に乗ったつもりで任せてよ!」
「え、泥船にしか見えないんだけど……」
どうにか止まらせようとする灯台守りの彼だったが、気が強く豪胆な彼女は聞く耳を持たなかった。
***
結局彼女ひとりで町の中心に戻ったわけだが、ドーラは彼の要望を無視してきたギルドへ乗り込んだ。
「灯台守りの交代についてなんですけど、何故対処してあげないんですか?」
受け付けの女性にそう声を掛けるドーラであるが、相手の反応は想像と違ったのである。
「はい?灯台守りの交代ですか、ちょっとお待ちくださいね」
分厚いファイルを取り出したギルド員はいつ頃のことかと項目を探す、3年前からと聞いた女性はくまなく過去の記録を探してくれた。
「お待たせしました、申し訳ないのですが依頼の記録がありません。何かの間違いでは?」
「そんなバカな!契約が切れたことも記載してないわけ?」
契約云々の前に灯台守りについての事項が丸っと存在していないとギルド員は言う。
「おかしい!絶対におかしい!海を無償で守って来たティモが哀れすぎるわよ!」
あまりの事に激高したドーラはバンバンとカウンターを叩き周囲から注視された。
「落ち着いてください、ギルドへの依頼書はギルド長がすべて仕分けしていますので、私達からはなんとも」
「そう、だったらギルド長に抗議するまでよ」
彼女はそう宣うとその人物がいるであろう最上階へと向かうのである。面会するには予約が必要だとギルド員は引き止めにかかるがドーラには通じない。
「役に立たない三下は寝てなさい、邪魔なのよ」
精神操作魔法のひとつである、睡眠魔法を彼らに掛けて一気に黙らせた。バタバタと倒れたことで静かになったことを彼女は満足する。
「たくっ、どうせ予約しようが会うつもりもないでしょうよ。臭い物には蓋がお好きなギルド長らしいからね」
面倒ごとは全てもみ消しているだろうと悪行を見透かしたドーラは怒りが収まらない。
最上階である三階へ上がればすぐ目の前に重厚な扉が待ち構えていた。
「お邪魔するわよ!」
脚に強化魔法をかけて扉を蹴り上げた、瞬く間に四散した扉は轟音を立てて床に落ちる。
「な、何事か!?どうしたというのだ!」
「キャー!嫌だ、何が起こったのよー!」
野太い声と絹を裂くような女の声が惨事の場に響いた、耳障りなその声をドーラは嫌そうに聞き流す。
「灯台守りの件でお話がございますのよ、名ばかりのギルド長殿」
執務室に乱入するなり彼女の目に飛び込んで来たのは、デスクの上でイチャコラしていた豚共の姿だった。
女性はギルド員の制服を着崩して、中年男の膝上に乗っていた。今正にお楽しみの最中だったようだ。
「御取込み中失礼、繁殖行為するのもギルドの仕事なわけ?違うよねぇ巫山戯んじゃないわよ!」
「ひぃ!誰か!おい!護衛や職員はどうした?不届き者を捕えよ!」
「誰も来ないわよ、バカめ」
バチバチと怒りの雷を身に纏ったドーラは彼らを威嚇する、泣き喚く女の声が煩いので指先から放電して気絶させた。
「な、なにが目的か?金か、好きなだけくれてやるから出ていけ!」
強盗とでも誤解したらしいギルド長は金庫を指差して喚く、だがそんなものに興味はないドーラは恫喝する。
「喧しいわ、聞いてなかったの?灯台守りのことだって言ったでしょうが!」
「え、灯台……あの、薄汚いアレの話か?」
やっと理解したらしい男は崩れていた衣服を整えて、今更ながら取り繕うと姿勢を正す。
怒りの最高潮に達したドーラは、雷と火魔法を手の平より放ちながら詰問する。
「それで、無償でコキ使ったのは認める?認めない?どっちにしろ許さないけど」
「ご、ご推察通りでございます……はい、契約更新がめんどくさくて、はい」
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