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魔女は失望する
ギルド長の不正はともかくとして、依頼人である網元兼町長が放置していたことが許せない。
「ねぇギルド長、これは町長も黙認していますよね?私が手寧な言葉を使っているうちに暴露して?」
床に染みを作ってしまったギルド長はすでに矜持がズタズタである。
町長と結託して灯台守りを押し付けて来たことを認めて、泣き崩れた。
海の街にとって網元は絶対的権力を有するらしく、漁業を生業にする人々は頭が上がらないという。
「漁業権を剥奪されたら死活問題ですから、だれも意見など……娘婿や親戚はみんな漁師なので」
「なるほど、大体事情はわかったわ」
せっかく好きになった海街がドロドロに腐敗していたことを知ってしまったドーラは落胆した。
船の航行の安全を護る灯台守りの仕事は休む暇もない、便利な魔道具は設置してあったとしても動力は人の魔力を使う。そのメンテナンスも兼ねればなおの事たいへんだ。
気になったドーラはそれとなく町の人々に灯台の話を向けて見たが、みんな歯切れが悪くなかには不機嫌さを露わにして逃げる輩もいた。
本来なら交代で従事すべき仕事をたった一人に押し付けて来た事実は、ドーラは町全体に責任があると判断する。
「あり得ない……それぞれに事情があったとして、みんな見ぬふりを決め込んでいたなんて」
活気ある町は名残惜しいが彼女は去ることを決意する。
***
彼女は再びティモがいる灯台へと訪れて言う「一緒に旅に出よう」と――。
急な誘いを受けたティモは目を白黒させて「どうしてそうなる?」と答えるしかない。
「覚悟決めてよ、この町の人々は貴方を飼い殺しにする気なのよ?それでもここが好きで留まりたいなら仕方ないけど」
「……そっか」
ドーラの言葉に狼狽えるかと思われたが彼も薄々気が付いていたようだ、たった一人で管理していた彼の元へ誰一人として尋ねて来なかったのだから。
「ここを出てどうするの、ボクは海しか知らないよ。とても怖いよ」
「あら?海の民の癖に知らないのかしら、海はね世界中に繋がっているのよ!ここにだけ存在するわけじゃないわ」
「!」
肝心な真実に気が付いていなかったらしいティモは目から鱗という顔をして彼女の目を見た。
「ぼ、ボクは自由でいいの?ここの海は誰が守るの?」
「は!そんなもんここに住み続ける輩の自己責任だわ!いいことティモ、貴方が犠牲になる理由はどこ?なんにもないでしょ、お人好しは御終いにしなきゃ」
すると青白くて不健康な彼の頬に紅が射す、気持ちが高揚しているのがわかる。
答えが出たと知ったドーラは良い笑顔をして「三年分の報酬と恨みを晴らしに行くわよ」と言ったのだ。
彼女は長らく控えていた魔法を発現させて、彼とともに空を飛ぶ。
「ぎゃーぎゃー!地面が、街並みが遠い!怖い!」
「うっさ、落ちやしないから口を閉じてよね」
町長の屋敷を案内させた彼女はフワリと贅を尽くした庭園に降り立った。
灯台守りへの報酬を出し渋っていた癖に己は贅沢三昧という事実を知りドーラはカンカンである。
「遠慮なく毟りとってやりましょう!損害賠償も含めてね」
「う、うん……よくわかんないけど」
堂々と屋敷へと行くドーラの後をオドオドついて行くティモは、真っ白なドアの前にやってきた。どうやって入るつもりなのか背後で見守っていた彼は不審に思う。
「せーの!でやぁ!」
ドーラはいきなり蹴り飛ばして玄関のドアを破壊したのである。あまりのことにティモは言葉を失くす。
「ちゃっちゃと行くよ、陽が落ちる前に出発したいから」
「え、ええええ?」
猪突猛進の如くな彼女の行動についていけないティモは顔色を悪くするばかりである。
突然現れた強引な客の訪問に屋敷にいた侍女や執事は呆気にとられて動けない。というよりドーラの魔法で立ったまま気絶させらて石像のようにそこにいた。
「騒がれたら面倒だもん、さーてラスボスはどこよ?」
魔女ドーラは悪漢を炙りだすためなのか、屋敷のあちこちを攻撃して歩いた。怯えるティモは正反対の態度で壁際で震えていた。
ややあってから「何事だ!」と半裸の中年と女数人が飛び出してきた、巨大な寝室で宜しくやっていたようだ。
それを見たドーラは心底気持ち悪いとえずくような真似をしてみせた。
「そこのだらしない体のオッサン、降りてきなさい。自慢の家を燃やされたくなかったらね?」
轟音を立てて火柱を出す少女を目にした屋敷の主は声にならない悲鳴を上げる。
伝説でしかない魔女と初めて対面したのだから無理もないだろう。
「早くしろ、私は短気なほうよ?」
「ねぇギルド長、これは町長も黙認していますよね?私が手寧な言葉を使っているうちに暴露して?」
床に染みを作ってしまったギルド長はすでに矜持がズタズタである。
町長と結託して灯台守りを押し付けて来たことを認めて、泣き崩れた。
海の街にとって網元は絶対的権力を有するらしく、漁業を生業にする人々は頭が上がらないという。
「漁業権を剥奪されたら死活問題ですから、だれも意見など……娘婿や親戚はみんな漁師なので」
「なるほど、大体事情はわかったわ」
せっかく好きになった海街がドロドロに腐敗していたことを知ってしまったドーラは落胆した。
船の航行の安全を護る灯台守りの仕事は休む暇もない、便利な魔道具は設置してあったとしても動力は人の魔力を使う。そのメンテナンスも兼ねればなおの事たいへんだ。
気になったドーラはそれとなく町の人々に灯台の話を向けて見たが、みんな歯切れが悪くなかには不機嫌さを露わにして逃げる輩もいた。
本来なら交代で従事すべき仕事をたった一人に押し付けて来た事実は、ドーラは町全体に責任があると判断する。
「あり得ない……それぞれに事情があったとして、みんな見ぬふりを決め込んでいたなんて」
活気ある町は名残惜しいが彼女は去ることを決意する。
***
彼女は再びティモがいる灯台へと訪れて言う「一緒に旅に出よう」と――。
急な誘いを受けたティモは目を白黒させて「どうしてそうなる?」と答えるしかない。
「覚悟決めてよ、この町の人々は貴方を飼い殺しにする気なのよ?それでもここが好きで留まりたいなら仕方ないけど」
「……そっか」
ドーラの言葉に狼狽えるかと思われたが彼も薄々気が付いていたようだ、たった一人で管理していた彼の元へ誰一人として尋ねて来なかったのだから。
「ここを出てどうするの、ボクは海しか知らないよ。とても怖いよ」
「あら?海の民の癖に知らないのかしら、海はね世界中に繋がっているのよ!ここにだけ存在するわけじゃないわ」
「!」
肝心な真実に気が付いていなかったらしいティモは目から鱗という顔をして彼女の目を見た。
「ぼ、ボクは自由でいいの?ここの海は誰が守るの?」
「は!そんなもんここに住み続ける輩の自己責任だわ!いいことティモ、貴方が犠牲になる理由はどこ?なんにもないでしょ、お人好しは御終いにしなきゃ」
すると青白くて不健康な彼の頬に紅が射す、気持ちが高揚しているのがわかる。
答えが出たと知ったドーラは良い笑顔をして「三年分の報酬と恨みを晴らしに行くわよ」と言ったのだ。
彼女は長らく控えていた魔法を発現させて、彼とともに空を飛ぶ。
「ぎゃーぎゃー!地面が、街並みが遠い!怖い!」
「うっさ、落ちやしないから口を閉じてよね」
町長の屋敷を案内させた彼女はフワリと贅を尽くした庭園に降り立った。
灯台守りへの報酬を出し渋っていた癖に己は贅沢三昧という事実を知りドーラはカンカンである。
「遠慮なく毟りとってやりましょう!損害賠償も含めてね」
「う、うん……よくわかんないけど」
堂々と屋敷へと行くドーラの後をオドオドついて行くティモは、真っ白なドアの前にやってきた。どうやって入るつもりなのか背後で見守っていた彼は不審に思う。
「せーの!でやぁ!」
ドーラはいきなり蹴り飛ばして玄関のドアを破壊したのである。あまりのことにティモは言葉を失くす。
「ちゃっちゃと行くよ、陽が落ちる前に出発したいから」
「え、ええええ?」
猪突猛進の如くな彼女の行動についていけないティモは顔色を悪くするばかりである。
突然現れた強引な客の訪問に屋敷にいた侍女や執事は呆気にとられて動けない。というよりドーラの魔法で立ったまま気絶させらて石像のようにそこにいた。
「騒がれたら面倒だもん、さーてラスボスはどこよ?」
魔女ドーラは悪漢を炙りだすためなのか、屋敷のあちこちを攻撃して歩いた。怯えるティモは正反対の態度で壁際で震えていた。
ややあってから「何事だ!」と半裸の中年と女数人が飛び出してきた、巨大な寝室で宜しくやっていたようだ。
それを見たドーラは心底気持ち悪いとえずくような真似をしてみせた。
「そこのだらしない体のオッサン、降りてきなさい。自慢の家を燃やされたくなかったらね?」
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