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閑話 ベネット親子1
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農道を走る馬車は揺れが酷い、胃袋が激しくシェイクされ吐き気止まらない。
何度目かの嘔吐の後、グッタリしつつ悪態も吐く。
「どうして私がド田舎に引っ越すの……うっぷ。もうすぐデビュタントなのよ!ウゲェ」
あの日、お義兄様を助けにひと暴れした後、衛兵に簀巻きにされてこの馬車に乗せられた。
隣に座るお母様は終始項垂れて目が死んでいる。
ボンヤリしてないでこの拘束を解いてくれてもいいのに!
ほんとにいつも役に立たない人!
お義父様に『お前にはウンザリだ!出ていけ!』そう冷たく怒鳴られてしまった。
なんでよ!?婚約破棄をゴネたあの女から救ってあげたのよ!感謝すべきじゃないの!
『俺は破棄など望んでない、彼女が……なんで邪魔をした!誤解を解くチャンスだったのに!』
お義兄様がそう言った。
可愛そうに優しいお義兄様のことだわ、あの女を庇って破棄じゃなく解消に持っていこうとしたのよね。
「なんて、なんてことかしら!あぁ!馬車をUターンさせてよ!お義兄様を慰めてさしあげなきゃ!わたしがわたしこそが公爵夫人に相応しいの!馬車をとめ……ぐげぇえ!」
馬車が停車したはずみで転がって舌を噛んだわ!くされ馭者め!なんて乱暴なのかしら!
ブツクサ文句を言ってたら、お母様が私の拘束をやっと解いたかと思えば……
無言でさっさと馬車を降りていく。
なにしてんの?
淑女は手を取って貰いながら降りるもんでしょ!
田舎町だからって無作法は良くないわよ?
私は顔を出しエスコートを待つ……
……
……
……
……?
「ちょっと!手を貸しなさいよ!気が利かないわね」
馭者と従者は忙し気に荷運びに夢中でこちらを無視してる、馬鹿にして!
「ベネット、みなさんは忙しいの。じぶんで降りてらっしゃい」
「んまぁ!?お母様はなにを言ってんの?」
主側が使用人に気を遣うなんてありえないでしょ!
待っても誰も来ないから仕方なく降りてあげることにしたわ、ムカツク!公爵に言って首にしてやるから!
覚えてらっしゃい!
荷運びが終わったらしく馭者達が馬車に乗り込み去ろうとする。
「ちょっとお待ち!帰りの馬車はどうするの?」
「……知らねぇよ、自分で手配しな」
馭者はぶっきらぼうに吐き捨て馬を走らせ行ってしまう。
「な、なななんて無礼なの!?」
カッカしながらお母様の後を着いて行く、農道の轍に沿って草がボウボウ生えていてドレスが汚れる。
正体不明の虫がプンプン目の前を飛んでイライラするわ。
歩いて数分、木立の陰から屋敷が見えた。
「なによこれ!ほんとうに公爵家の別邸なの?」
古色蒼然な小さな家だった、外壁の塗装は剥げて汚らしい。
玄関の扉は蝶番が錆びているのかギギギギと嫌な音を立てた。
中は掃除はしてあるが埃っぽい、窓を開けようとしたら蜘蛛の巣が張っていて悲鳴を上げた。
「いやー!気持ち悪い!汚いし……窓ガラスに穴が空いてるじゃないの!」
足元からガサガサ音がして恐々見下ろせば黒光りの変な虫がいた。
「ぎぃやあああああ!ゴゴゴゴゴゴ……!」
大騒ぎの私をよそにお母様は靴で叩き潰し外へ投げ捨てた。
「お……おおおお母様ああああ?」
「ムシ如きなんですか、この辺りは蛇も獣も出るんです。そんなんじゃ生きていけません」
どういうわけかお母様は冷静というより、とても嬉しそうな顔で家を見回してる。
「はー懐かしいわ、マーカスとここで過ごした日々。楽しかったわ、そうそう釣り具はまだ無事かしら?カビてなければ良いけど」
少女のような顔をして、お母様は納屋のほうへ駆けだして行った。
「いったいなんなのよ、ここどこよ……」
何度目かの嘔吐の後、グッタリしつつ悪態も吐く。
「どうして私がド田舎に引っ越すの……うっぷ。もうすぐデビュタントなのよ!ウゲェ」
あの日、お義兄様を助けにひと暴れした後、衛兵に簀巻きにされてこの馬車に乗せられた。
隣に座るお母様は終始項垂れて目が死んでいる。
ボンヤリしてないでこの拘束を解いてくれてもいいのに!
ほんとにいつも役に立たない人!
お義父様に『お前にはウンザリだ!出ていけ!』そう冷たく怒鳴られてしまった。
なんでよ!?婚約破棄をゴネたあの女から救ってあげたのよ!感謝すべきじゃないの!
『俺は破棄など望んでない、彼女が……なんで邪魔をした!誤解を解くチャンスだったのに!』
お義兄様がそう言った。
可愛そうに優しいお義兄様のことだわ、あの女を庇って破棄じゃなく解消に持っていこうとしたのよね。
「なんて、なんてことかしら!あぁ!馬車をUターンさせてよ!お義兄様を慰めてさしあげなきゃ!わたしがわたしこそが公爵夫人に相応しいの!馬車をとめ……ぐげぇえ!」
馬車が停車したはずみで転がって舌を噛んだわ!くされ馭者め!なんて乱暴なのかしら!
ブツクサ文句を言ってたら、お母様が私の拘束をやっと解いたかと思えば……
無言でさっさと馬車を降りていく。
なにしてんの?
淑女は手を取って貰いながら降りるもんでしょ!
田舎町だからって無作法は良くないわよ?
私は顔を出しエスコートを待つ……
……
……
……
……?
「ちょっと!手を貸しなさいよ!気が利かないわね」
馭者と従者は忙し気に荷運びに夢中でこちらを無視してる、馬鹿にして!
「ベネット、みなさんは忙しいの。じぶんで降りてらっしゃい」
「んまぁ!?お母様はなにを言ってんの?」
主側が使用人に気を遣うなんてありえないでしょ!
待っても誰も来ないから仕方なく降りてあげることにしたわ、ムカツク!公爵に言って首にしてやるから!
覚えてらっしゃい!
荷運びが終わったらしく馭者達が馬車に乗り込み去ろうとする。
「ちょっとお待ち!帰りの馬車はどうするの?」
「……知らねぇよ、自分で手配しな」
馭者はぶっきらぼうに吐き捨て馬を走らせ行ってしまう。
「な、なななんて無礼なの!?」
カッカしながらお母様の後を着いて行く、農道の轍に沿って草がボウボウ生えていてドレスが汚れる。
正体不明の虫がプンプン目の前を飛んでイライラするわ。
歩いて数分、木立の陰から屋敷が見えた。
「なによこれ!ほんとうに公爵家の別邸なの?」
古色蒼然な小さな家だった、外壁の塗装は剥げて汚らしい。
玄関の扉は蝶番が錆びているのかギギギギと嫌な音を立てた。
中は掃除はしてあるが埃っぽい、窓を開けようとしたら蜘蛛の巣が張っていて悲鳴を上げた。
「いやー!気持ち悪い!汚いし……窓ガラスに穴が空いてるじゃないの!」
足元からガサガサ音がして恐々見下ろせば黒光りの変な虫がいた。
「ぎぃやあああああ!ゴゴゴゴゴゴ……!」
大騒ぎの私をよそにお母様は靴で叩き潰し外へ投げ捨てた。
「お……おおおお母様ああああ?」
「ムシ如きなんですか、この辺りは蛇も獣も出るんです。そんなんじゃ生きていけません」
どういうわけかお母様は冷静というより、とても嬉しそうな顔で家を見回してる。
「はー懐かしいわ、マーカスとここで過ごした日々。楽しかったわ、そうそう釣り具はまだ無事かしら?カビてなければ良いけど」
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「いったいなんなのよ、ここどこよ……」
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