その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)

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漢を見せろ

快晴だというのに雷鳴が轟きました。
空と大地ではなくて我が屋敷、ブルフィールド邸の居間で。
母不在中に起きた婚約保留のあらましを耳にした母は激高しました。

「うちの娘を愚弄されたというのに、アンリオ!恥を知れ!貴様が優柔不断がゆえに相手に都合よく翻弄されるのだ!」
雷を落とされた父は平身低頭で謝り続けているわ。

「私も仕事にかまけてアイリスを悲しませてしまった!ごめんなさいね、不甲斐ない両親を煮るなり焼くなり」
待って待って!
自分の親を殺るなんて!
面白そう……とか思ってないわ、ちょっぴりしか!

「お、お母様、大丈夫です。謝罪は受け入れました。ですが完全に白紙にならないのが気に入りません。頑なに婚約を望むロードリック様の真意が知りたく存じます。さんざん私を蔑ろにしてきた男の愛の囁きなど、信じるに値しないですもの!」

私の言葉をじっと聞き入っていたお母様はなにやら思案して、ふと何かを閃いたのかニヤリと笑いました。
うーん、波乱の予感。

「ちょっとアイスブラド家に挨拶してきます。遠征続きでご無沙汰してますからね。フフフフフフフッ」
わぁいい顔で嗤いますね、素敵ですお母様!

手土産に担いだ、ぶっとい大蛇が気になりますが……。

***

「ほ、本日はどのような・・」
「あ”っ?」
デンゼル公爵は一睨みで気圧され平伏した。格上の家に先触れなしで訪問したにも関わらずソルニエは公爵家の当主が如くの振る舞いをする。

ソルニエの父は王弟で、実家は大公爵という後ろ盾も手伝いだれも文句が言えない。
先祖が王族末席というだけのデンゼルでは歯が立たない。

怒髪天を衝くの体で押し掛けてきたご婦人に、公爵邸の面々は猛禽に睨まれた小動物のように震えている。
中でも蛇を巻きつけられたロードリックは死人のような顔色だ。

「ロードリック殿、久方の対面であるのに覇気のない様子だな。どうした、断末魔の虫のようだぞ?」
「……そのようなことは」
蚊の鳴くような声で答えるロードリックの様にソルニエ婦人の檄が飛ぶ。

「貴様!なんだその応対は!それでも男子か!股間にぶら下がるソレは紛い物か!」
「ひぎぃ!申し訳ございませ・・」
「声が小さい!」
「はいぃぃい!」

ソルニエはずかずかとロードリックに詰め寄り、彼のシャツを捲り上げた。
「なんだこのザマは、ガリガリではないか!こんな貧相な形で我が娘を護れるのか、戯け!」
「ひぃ!これでも鍛錬しておりますぅぅう!」

ソルニエはロードリックを軽々持ち上げ恫喝する。
「お前、アイリスを本気で娶る気があるのか?」
「グエェ、あ、ありまず!愛してまズぅ!」

胸倉を掴まれ締め上げられてもロードリックは辛うじて耐える、ただし無様なありさまだったが。
ソルニエはロードリックを床に投げ捨て言い放つ。

「その心の真贋を見極めてくれよう!これより半年間、我の下で鍛錬せよ、シゴキに耐えてみせろ!」
「あ、アイマムッ!」
「うむ、漢を見せてみよ」


デンゼルは暴風のようなこの場で、ただ縮こまって見守ることしか出来ない。
不甲斐ない息子に「生きて帰れ」と言葉をかけるのがせいぜいだった。

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