(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)

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最悪な結婚式

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荘厳な白亜の教会には、招かれた招待客達の言祝ぎで溢れかえる。
控えの間にいた私の耳にも届くほどだった。

「良縁で」「幸せに」「良かった」など、途切れ途切れに聞こえる。

両家ともにそれなりの家格と顔の広さがある、招きたい家があまりに多く選別に苦労したほど。
遠い縁戚や下位貴族家は披露宴だけ招待することになったわ。


新婦の入場時間が来て、お父様と一緒に扉の前に立った。
純白のドレスは細やかなレースがふんだんに使われた贅沢なもの、加えてベールには無数の真珠で装飾がされている。
このドレス一着で屋敷がたつのでは?


どうも、奇妙な夢を見てからというもの。無粋な感想が浮かぶようになっていたわ。
例えるなら庶民感覚とでもいうのかしらね。

引き出しからジャラジャラと出てきた宝飾品を見た時は、換金して寄付しようかと思ったわ。
だってほとんど使わないのだもの。

コレクション?宝石のコレクター?
なにそれ、今までの私はバカだったのかしら……。

贈答されたものも多いけれど、贅沢は敵だと思うのよね。
だって貴金属は食べられないわよ。


おっといけない、骨折してから食欲旺盛になってしまったみたい。
豊満なワガママボディ?に育ってしまった私は後悔の溜息をはく。


ぶっちゃけ花嫁というより、巨大な白い物体、歩く白い山のようだわ。
結局半月頑張ったけど、ウエストが2センチ減っただけだった。

巨漢が2センチ減ったところで、見た目はほとんど変わらないのよ。
自己嫌悪に陥っていたら父がクイクイと腕を引いた。


「どうしたんだいアリス、緊張はわかるが今日の良き日に昏い顔はしちゃいけないよ」
「は、はい。ごめんなさいお父様」

招待客には常に笑顔でね。と父が言った。
ええ、頑張ります……。


私はまん丸でニキビだらけの顔に無理矢理笑顔を貼り付けて「ヴホホホホ」と笑って見せた。
とってもブサイクなはずだけれど、父は「三国一の花嫁だ!」と褒めた。

うちの両親は眼科に長期入院するべきだと思う。秒で行ってきて。
それから観音開きの扉が開かれ、聖壇に続くバージンロードを歩く。

うぅ、ロードの両脇からの視線が痛い……。

皆は儀式の最中だから静観してくれているが、私の変貌に驚いている事でしょう。
しばらく会っていない人も多いから尚更ね。
ノソリノソリと歩くニキビ顔の白いオーク、または白い何かだと思われてる気がするわ。たぶん。


***

引きつった笑顔のまま奥を見れば、新郎イーライが鬼の形相で待っていた。
ほんと申し訳ない……。

お式が無事済んだらダイエットに励みます、だからそんなに怒らないで!
とても花嫁を迎える貌ではないわ、憤怒というのを通り越してるから。


私が祭壇前に到着すると横から盛大な舌打ちが「チッ!!!」と聞こえてきた。
居たたまれない、早く終わらせて欲しい。

縋るように神父様の顔を見ると慈愛の表情でおられた、さすが聖職者。花嫁がオークでも優しいのですね。
変な方向で私が感動していたら、背後から讃美歌が流れて来た。

いつのまにかパイプオルガンが曲を奏でていたようだ。

そして斉唱が終わると神父様が朗読と祈祷をはじめた。
いよいよだ、なんかごめん、ごめんなさい!


お互いほぼ棒読みだったけれど、神父様の問いかけに答えて誓約が終了した。
無事終了かどうかは怪しい。

宣誓時に、イーライは明らかに嫌そうに返答していた。
問われてから無言が1分近く間あったと思う、私はハラハラした。

指輪の交換の時はそれ以上に最悪だった、そう指輪のサイズが全く合わなかったのだ。
急激にデブになった私の薬指をリングが拒絶して入らない。

ああああああぁぁ……。

仕方なくイーライは小指に填めてくれた。
それでも第一関節で止まってしまって、互いに焦る。
その時”クソデブが!”と小さな声で苛立ちをぶつけられた。かなり精神を抉られたわ。


そして、誓いのキス。
どんなに嫌でもこればかりは避けられない。


ベール越しではあっても彼の形相がわかる、そうね。こんな化物にキスなんてしたくないよね。
するとイーライは左側だけを捲り上げて頬にキスをする……フリをした。

そうよね、そうするわよね。当たり前の反応だわ。
でも悲しい、涙が出そうになった。

政略結婚だけど、ここまで拒絶反応を見せられては心は折れるわ。
一見は厳かに、そして恙なく終わった挙式。


二人でチャペルから顔を出せば、ライスシャワーと花弁舞った。
おめでとうの言葉がたくさんかけられたけど、どれもこれも口先っぽい。

招待客達はイーライの素っ気ない態度から何かを悟っただろう。
そして、醜く惨めな花嫁となった私のことをどう褒めて良いか躊躇っているのがわかった。



リンゴンと祝福の鐘が虚しく初夏の空に響いいていたわ。
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