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羅刹の冥土隊
ある双子が待ち望む、その時
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視界に映る形の無い、暗黒の中。空気の全てが重苦しい質量の積み重ねとなって、うつ伏せになっている全身を押さえつけているようだ。
重厚な気体の層を感じ、呼吸を繰り返すのも辛くなってくる。ぼくは声を挙げて訴えようと試みたけど、どうやら音が伝わらない。
ここはどこだろう?
と、ぼくの疑念は頭の中で小さな渦を巻いたが、答えの手がかりを見つける手段に関しては、皆目見当がつかない。全身が全く動かないんだ。
またあの時みたいに金縛りにあっている? しかし、あの感覚とはまるで勝手が違っている。ぼくの動きが封じ込められているというよりも、制止した空間という空気の棺の中に固定されてしまっているという形容がぴったりだった。
ずっとこのまま、時間の流れすらも感じられない場所で横たわったまま、悠久が過ぎていくのだろうか。この身が朽ちる時まで。……ぼくはそう思うと、何か恐ろしいものによって全身が冷たくなっていく感じがした。
ふと、変化が起きた。言葉では言い表せないような……いや、非常に曖昧だが、何かに対する感覚が明瞭になった、と言えるだろうか。ぼくはこの状況を全く理解していないのだけど、ぼくの心の中にある、ぼくではないぼくの意識が次に起こる事象を理解している……そんな気がした。
ぼくではないぼくが、戸惑う自我に、冷たい視線を送ってくる。蔑んでいるのか、もしくは無知で愚かなぼくに対する愉悦の念を、向けているのか。
不意に身体に熱がこもってくる。その熱はある一点……そう、ぼくの男性自身と呼ぶべき情欲の化身へ働きかけるように集約されていく。
淫らな夢?
その表現はどうやら間違ってはおらず、ぼくに熱を送り込んでいる存在の息遣いが、腹部に感じられる。
(誰?)
身体に触れてくる感触は滑らかで湿り気を帯びており、艶めかしい。女性の肌であるのはまず間違いない。でも……。
(アユミ? それとも……)
これは夢なんだ。そうでないと、この異質な空間の説明がつかない。夢であるならば、相手がアユミであろうとアンジュであろうと、カナデだったとしても不思議じゃあない。
夢だったとしても、また彼女たちに会えるなら、触れ合えるなら……願っても叶わない最高の望みだ。ぼく自身、そう願い続けていたことに疑う余地はないのだけど。
(違う……)
何故か、ぼくはそう直感した。視界は変わらず漆黒の中に埋もれているが、ぼくの知らない女性の気配である気がしてならない。
「う……」
声が出た。それもはっきりと。ぼくの男性器に、ぬめりとした感触がまとわりついてきた。
それだけではない。股間の更に下の方、肛門の辺りにもぬちゃぬちゃとした……おそらく、こちらも相手の舌と触れ合う感覚があった。
「ん……くあぁ」
情けないことではあるが、既にぼくのペニスは固く勃起している。正体不明の女性、行為に至った過程の一切が不明であったのだが、ぼくの男性としての心理は、相手の女性からの、より過激で官能的な衝動を刺激してくれる次の段階を期待してしまう。
くすくす……と微かな声が聴こえてくる。どうやら若い女性のものらしいソプラノ調の笑い声らしいのだが、続けてもう一つの幾分低い含み笑いが耳に入ってくる。
「ふふ……うふふ」
その声からは決して侮蔑の類ではない、茶目っ気のような性質を感じ取ることが出来た。と言っても、ナギのそれとは異質なもので、これまで出会った記憶のない類。
どうやら、二人の女性がぼくの性感帯を自らの口を使って愛撫してくれているらしく、一人は男性器を、もう一人は肛門を舌で丹念に舐めている。
「美味しいです、ご主人様」
少し高めの声がそう告げた。やはり、過去に聞いた覚えのない人物の声色。
「これが御主人様のお味なのですね……」
続けて、二人目もそう言った。
両者は身体の中でも不潔な部分……ペニスに関しては性交を行うためのものでもあるのだから、今更自分で卑しむのも気がひけたが、少なくとも男の肛門なんて不浄なものとしか思えない。それをぼくの味などと言われてしまうと、素直に喜ぶ気にもなりきれず、何だかもやもやした微妙な気持ちになってしまう。
正体不明の相手にされるがままになっていることに僅かながら憤りがないわけではなく、状況に対する抵抗を訴えようと試みるも、ぼくの口は言葉を紡ぐことが出来なかった。
せめて相手の姿だけでも確認しようと目をこらすが、依然として視界は暗闇のままだ。ただ、おぼろげながらだったけど、ぼくの方を覗き込んでいる二人の顔の輪郭が見えた様な気がするが、それは錯覚かもしれない。
「夢ですよー。ゆーめ」
まるで子供をあやすような声色だった。不思議と心が落ち着いてくるが、それがかえって怖い事である気もする。
「寂しいことですけどね」
もう一人が発した、若干の憂いを帯びた声。
(夢……そうか、夢)
曖昧な空間の中でのまどろみというには相応しい状況であるのかもしれないが、嫌にはっきりとした自意識が妙に不釣り合いなものに感じられる。
(待て……確か、前にもこんなことが)
意識のはっきりした夢。地下世界。緑の園。研究施設……。
(明晰夢)
「アラベナ!」
ぼくははっきりと叫んだ。途端、漆黒の暗闇が白光に覆われ、二人の女性の輪郭が黒点のようにくっきりと浮かび上がった。
「ああ……その名を言ってしまわれましたか」
ペニスに触れていた舌が離れていく。
「ざんねん……もう少しだったのに」
股間にうずまっていたもう一人の女性の気配が遠のいていく。
「お慕いしております、御主人様。必ずや、あなた様のもとへお仕えするため……」
「今度はお会いできた時に……」
二人の声がかすれていく。そして、より一層眩い光の中で、二人の表情が鮮明に映って……。
「え……う、あ……ぁ」
現実に引き戻される瞬間にはっきりと見た。まるで合わせ鏡の様な、全く同じ顔が網膜に焼きついた。
そして、ぼくは目覚めた。
重厚な気体の層を感じ、呼吸を繰り返すのも辛くなってくる。ぼくは声を挙げて訴えようと試みたけど、どうやら音が伝わらない。
ここはどこだろう?
と、ぼくの疑念は頭の中で小さな渦を巻いたが、答えの手がかりを見つける手段に関しては、皆目見当がつかない。全身が全く動かないんだ。
またあの時みたいに金縛りにあっている? しかし、あの感覚とはまるで勝手が違っている。ぼくの動きが封じ込められているというよりも、制止した空間という空気の棺の中に固定されてしまっているという形容がぴったりだった。
ずっとこのまま、時間の流れすらも感じられない場所で横たわったまま、悠久が過ぎていくのだろうか。この身が朽ちる時まで。……ぼくはそう思うと、何か恐ろしいものによって全身が冷たくなっていく感じがした。
ふと、変化が起きた。言葉では言い表せないような……いや、非常に曖昧だが、何かに対する感覚が明瞭になった、と言えるだろうか。ぼくはこの状況を全く理解していないのだけど、ぼくの心の中にある、ぼくではないぼくの意識が次に起こる事象を理解している……そんな気がした。
ぼくではないぼくが、戸惑う自我に、冷たい視線を送ってくる。蔑んでいるのか、もしくは無知で愚かなぼくに対する愉悦の念を、向けているのか。
不意に身体に熱がこもってくる。その熱はある一点……そう、ぼくの男性自身と呼ぶべき情欲の化身へ働きかけるように集約されていく。
淫らな夢?
その表現はどうやら間違ってはおらず、ぼくに熱を送り込んでいる存在の息遣いが、腹部に感じられる。
(誰?)
身体に触れてくる感触は滑らかで湿り気を帯びており、艶めかしい。女性の肌であるのはまず間違いない。でも……。
(アユミ? それとも……)
これは夢なんだ。そうでないと、この異質な空間の説明がつかない。夢であるならば、相手がアユミであろうとアンジュであろうと、カナデだったとしても不思議じゃあない。
夢だったとしても、また彼女たちに会えるなら、触れ合えるなら……願っても叶わない最高の望みだ。ぼく自身、そう願い続けていたことに疑う余地はないのだけど。
(違う……)
何故か、ぼくはそう直感した。視界は変わらず漆黒の中に埋もれているが、ぼくの知らない女性の気配である気がしてならない。
「う……」
声が出た。それもはっきりと。ぼくの男性器に、ぬめりとした感触がまとわりついてきた。
それだけではない。股間の更に下の方、肛門の辺りにもぬちゃぬちゃとした……おそらく、こちらも相手の舌と触れ合う感覚があった。
「ん……くあぁ」
情けないことではあるが、既にぼくのペニスは固く勃起している。正体不明の女性、行為に至った過程の一切が不明であったのだが、ぼくの男性としての心理は、相手の女性からの、より過激で官能的な衝動を刺激してくれる次の段階を期待してしまう。
くすくす……と微かな声が聴こえてくる。どうやら若い女性のものらしいソプラノ調の笑い声らしいのだが、続けてもう一つの幾分低い含み笑いが耳に入ってくる。
「ふふ……うふふ」
その声からは決して侮蔑の類ではない、茶目っ気のような性質を感じ取ることが出来た。と言っても、ナギのそれとは異質なもので、これまで出会った記憶のない類。
どうやら、二人の女性がぼくの性感帯を自らの口を使って愛撫してくれているらしく、一人は男性器を、もう一人は肛門を舌で丹念に舐めている。
「美味しいです、ご主人様」
少し高めの声がそう告げた。やはり、過去に聞いた覚えのない人物の声色。
「これが御主人様のお味なのですね……」
続けて、二人目もそう言った。
両者は身体の中でも不潔な部分……ペニスに関しては性交を行うためのものでもあるのだから、今更自分で卑しむのも気がひけたが、少なくとも男の肛門なんて不浄なものとしか思えない。それをぼくの味などと言われてしまうと、素直に喜ぶ気にもなりきれず、何だかもやもやした微妙な気持ちになってしまう。
正体不明の相手にされるがままになっていることに僅かながら憤りがないわけではなく、状況に対する抵抗を訴えようと試みるも、ぼくの口は言葉を紡ぐことが出来なかった。
せめて相手の姿だけでも確認しようと目をこらすが、依然として視界は暗闇のままだ。ただ、おぼろげながらだったけど、ぼくの方を覗き込んでいる二人の顔の輪郭が見えた様な気がするが、それは錯覚かもしれない。
「夢ですよー。ゆーめ」
まるで子供をあやすような声色だった。不思議と心が落ち着いてくるが、それがかえって怖い事である気もする。
「寂しいことですけどね」
もう一人が発した、若干の憂いを帯びた声。
(夢……そうか、夢)
曖昧な空間の中でのまどろみというには相応しい状況であるのかもしれないが、嫌にはっきりとした自意識が妙に不釣り合いなものに感じられる。
(待て……確か、前にもこんなことが)
意識のはっきりした夢。地下世界。緑の園。研究施設……。
(明晰夢)
「アラベナ!」
ぼくははっきりと叫んだ。途端、漆黒の暗闇が白光に覆われ、二人の女性の輪郭が黒点のようにくっきりと浮かび上がった。
「ああ……その名を言ってしまわれましたか」
ペニスに触れていた舌が離れていく。
「ざんねん……もう少しだったのに」
股間にうずまっていたもう一人の女性の気配が遠のいていく。
「お慕いしております、御主人様。必ずや、あなた様のもとへお仕えするため……」
「今度はお会いできた時に……」
二人の声がかすれていく。そして、より一層眩い光の中で、二人の表情が鮮明に映って……。
「え……う、あ……ぁ」
現実に引き戻される瞬間にはっきりと見た。まるで合わせ鏡の様な、全く同じ顔が網膜に焼きついた。
そして、ぼくは目覚めた。
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