公女様は愛されたいと願うのやめました。～態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか？～

61話

   「お嬢様、おはようございます。」

   「あ、おはよう。」

目が重くて開かない。

昨日は自分の気持ちや、お父様の気持ちが理解出来て良かったな。

   「先程、公爵様が退出していきましたよ。」

ん？ん？
さっきまでお父様がここにいたってこと？確か、昨日は蟠りが解けて私がめっちゃ号泣して…。
そこから記憶がないな。

でも、お父様の腕の中で眠った記憶があるからそのまま朝まで一緒に居てくれたのかな。

    「こちらで目を冷やしてください。目がパンパンです。」

マリアナが鏡を渡してくれた。

    「すんごい目パンパンなんだけど！めっちゃ腫れてる！」

   「昨日は沢山、泣いたのですよね、」

マリアナは私の様子を見て悲しそうな表情をして冷やしたタオルを目に当ててくれた。

マリアナは昨日何があったか知らないようだった。

   「目を冷やすと、すぐ元の可愛いお嬢様になりますからね。」

ルーシーも私の事を気遣ってくれた。

…なんか懐かしいなこの感じ。

   「…お母さんみたい…。」

不意に前世を思い出し、声に出してしまった。

ハッっ。

あ、私の声聞こえてたのかマリアナやルーシーは何も言わなくなった。

タオルで目が覆われているから、どんな表情をしているのかは分からないけど、マリアナは私が母親を恋しがっていると思っているだろう。

なんとも言えないな。

   「お嬢様は、お母様にお会いしたいと思いますか。」

前の私なら、周りの目を気にして"会いたくない"と言っただろう。

けど、お父様の言った通り誰もそのように思っていないのなら、お母様に会いたい。

   「ちょっと、会いたいかな。」

   「お嬢様…。」

あ、ちょっと重い空気になった気がする。

わーん、言わなきゃ良かったよ。
沈黙が気まずい。

目が覆われていてよかった。
マリアナだけじゃない、ルーシーまでもが気まずい表情をしているのにちがいないよ。

   しばらく、沈黙が続いた後どちらかが退出して行き、直ぐに戻ってきた。

目を冷やし終わり、タオルを取った。
鏡で表情を見るといつも通りの目とはいかないが、ある程度腫れは治った。

  「今日は特別に料理長に頼んで、お嬢様の好きな物を揃えました。」

私が好きなスイーツ、お肉が朝食に並んでいた。

先程、どちらかが退出した時に料理長に頼んでおいてくれたのだろう。

私の顔色を伺っているのがわかる。
二人の視線があちこちに向いて、定まっていない。

   「あはは。わーい、嬉しいなぁー、私の好きな料理がいっぱいだー。」

ちょっと棒読み過ぎたかな、二人が私に気を使っているのがもろに分かる。

気まずい！！

心の中で、思いっきり叫んだ。

ティアナは気にしていないかのように、ニコニコと笑顔で振舞っている。

食事に手をつけたけど、私の好きなお肉ですら、今日の食事は異様に味が無く、とても硬いように感じた。