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第4章 それぞれの思い
27 特訓の下準備
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悪役令嬢との決闘に勝つために特訓をする話の流れになっていたツヴァイ達だったが、早朝ということもあり、まずは空腹を満たすために朝食を取ることにした。
昨晩、シロキツネ様が朝食を用意しておくと言っていたことを思い出したツヴァイはリアとアストライアを誘って一緒に昨日夕食を取った館の中へと入った。
館の中にシロキツネ様の姿はなかったが、不思議なことにツヴァイの分だけでなく3人分の食事が用意されていた。
その朝食をツヴァイは普通に館の中で食べようとしたが、リアが神聖な館の中で食事をする心の準備ができていないと言ってきたのでその食事を持って森に行き、そこで食べることにした。
食事は竹皮に包まれていたため、持ち運びがしやすく、普段、リアとアストライアがよく休憩しているという森の広場まで中身を崩すことなく持って行くことができた。
そして、森の広場で包みを開けると中には2つの大きなおにぎりと漬物、それに新鮮なトマトが入っていた。
それからツヴァイは森の美味しい空気を吸いながらおにぎりを食べ、少女2人と色々な話をして笑い合うゆっくりとした時間を過ごした。
……ああ、いいな。こういうの。
そんなピクニック気分を満喫し、異世界でスローライフってこういう感じなんだろうな、最高だ。と心の底からツヴァイが思っていると。
「ごちそうさま」
一番ゆっくり食事をしていたアストライアが最後のおにぎりを食べ終え。
「じゃあ、やろう」
食後の休憩なんて必要ないと言うように、すぐさま銀の槍を持ってツヴァイの前に立った。
「……ああ。うん、そうだな」
楽しいスローライフの終わりを告げるアストライアの戦う気満々の姿を見て、一瞬テンションが下がりかけたツヴァイだったが決闘に勝つための特訓は必要だと気合いを入れ直し、立ち上がった。
食事中にツヴァイはカームの街で行われている決闘の大まかなルールを2人から聞いた。
決闘を始める直前に宝玉と呼ばれる小さなボールを渡され、相手が持つ宝玉を先に破壊した者が決闘の勝者となる。というのが基本的なルールで、その宝玉を破壊する方法は魔法でも武術でも何でもありなのだが、攻撃の威力管理を怠り相手を殺してしまった場合、その者は決闘の敗者となりその上、決闘上過失致死罪に問われ、殆どの場合、無期懲役以上の刑に処される。
カームの街では年に30回ほど決闘が行われているがここ20年決闘による死者は出ておらず、更にツヴァイが戦う悪役令嬢、フレグランスは過去に2回決闘を行っていて、2回とも勝利しているが決闘相手は擦り傷程度の怪我しか負っていないとのことだった。
そういった情報を得てツヴァイは自分の命が脅かされる可能性が低いことには安堵したが。
「……ただ、特訓をする前に少し相談に乗ってくれないか?」
別の不安ができたため、その相談をアストライアにお願いした。
「いいけど、何?」
「……」
そして、アストライアが相談に乗ると頷いてくれたのでツヴァイは森に来る前に自分が泊まった館から持ってきた日本刀を手に持ち、鞘から刀を抜いた。
「俺は魔法が使えないからこの刀で戦うしかないんだけど、……これ、すっごく危ないよな? 決闘で使って大丈夫だろうか」
ツヴァイが持つ日本刀の刀身は鈍い輝きを放っており、その刀身でゴブリンの腕を骨ごと両断したことを思い出しながらツヴァイはこれを決闘で使うのは危険なのではないかと語った。
「……大丈夫かってどういうこと?」
「いや、真剣を振り回すなんて危なすぎるんじゃないかなと俺は思ったんだが……、あ、もしかしてこの世界にはダメージをゼロにする防御魔法があったりするんだろうか。それか決闘のフィールド内ではどんな攻撃も致命傷にならない魔法とか」
そういうのがあるのなら使えるかもしれないとツヴァイが期待の籠もった視線を向けるとアストライアは不思議なものを見る目でツヴァイを見つめ返した。
「そこまで万能ではないけど、ダメージを軽減する魔法はある。けど、ツヴァイの相談内容的にその話は関係ない」
「ん? それはどういうことだ?」
「だって、そもそもその刀、────何も斬れない刀だから」
「……え?」
何も斬れない刀。自分が手に持つ日本刀をそう評されたツヴァイが唖然としている間にアストライアは言葉を続けた。
「最初に会ったときから不思議に思ってた。その刀を危険物みたいにすぐ鞘に仕舞ったけど、それには刃がついていない。あの時はツヴァイが魔法を使えないって知らなかったから刀の形をしているだけで杖として使ってる武器とわたしは認識していた」
何でそれを危険だと思っているの? と、不思議そうに首を傾げるアストライアを見た後、ツヴァイは視線を動かし自分が持つ日本刀の鋼色の刀身をマジマジと見つめた。
……本当だ。この刀、刃がない。
色こそ本物の日本刀のように青みがかった灰色だったがその刀身の作りは刃物というよりも土産屋で売っているような木刀に近く、念のため自分の腕の上を軽く滑らせてみたが全く斬れず、そのことにツヴァイは少なからず衝撃を受けた。
……え、じゃあ、なんであの時ゴブリンの腕が斬れたんだ? ……いや、そういえば俺が攻撃したゴブリンって、ゾンビみたいな奴だったな。
もしかしたら斬ったのではなく当たった衝撃で腐っていた腕が落ちただけだったのかも。と、ツヴァイはその時のことを思い出そうとしたが、リアを助けることに必死すぎてゴブリンを斬った瞬間のことなんて覚えていなかった。
……けど、この刀が斬れないっていうなら木刀みたいなもんだし相手の武器だけを狙って目とかに当てないように気をつければ使えるか。
「アストライア。決闘で勝敗を決めるボール、宝玉っていうのはこの刀を当てるだけでも壊せるんだろうか」
そして、自分の武器が思っていたよりも使えないことに逆に安心したツヴァイは既に戦闘態勢になっているアストライアに刀を向け。
「うん。衝撃に弱いから魔法を使わなくてもその刀で叩くだけで十分壊せる。……これで相談は終了?」
刀を向けられたことに少し嬉しそうな表情を浮かべたアストライアが手に持つ槍をゆっくりと動かした。
次の瞬間。
「────じゃあ、やろう」
斬れない刀と電光石火の銀槍が森の中で激しくぶつかった。
昨晩、シロキツネ様が朝食を用意しておくと言っていたことを思い出したツヴァイはリアとアストライアを誘って一緒に昨日夕食を取った館の中へと入った。
館の中にシロキツネ様の姿はなかったが、不思議なことにツヴァイの分だけでなく3人分の食事が用意されていた。
その朝食をツヴァイは普通に館の中で食べようとしたが、リアが神聖な館の中で食事をする心の準備ができていないと言ってきたのでその食事を持って森に行き、そこで食べることにした。
食事は竹皮に包まれていたため、持ち運びがしやすく、普段、リアとアストライアがよく休憩しているという森の広場まで中身を崩すことなく持って行くことができた。
そして、森の広場で包みを開けると中には2つの大きなおにぎりと漬物、それに新鮮なトマトが入っていた。
それからツヴァイは森の美味しい空気を吸いながらおにぎりを食べ、少女2人と色々な話をして笑い合うゆっくりとした時間を過ごした。
……ああ、いいな。こういうの。
そんなピクニック気分を満喫し、異世界でスローライフってこういう感じなんだろうな、最高だ。と心の底からツヴァイが思っていると。
「ごちそうさま」
一番ゆっくり食事をしていたアストライアが最後のおにぎりを食べ終え。
「じゃあ、やろう」
食後の休憩なんて必要ないと言うように、すぐさま銀の槍を持ってツヴァイの前に立った。
「……ああ。うん、そうだな」
楽しいスローライフの終わりを告げるアストライアの戦う気満々の姿を見て、一瞬テンションが下がりかけたツヴァイだったが決闘に勝つための特訓は必要だと気合いを入れ直し、立ち上がった。
食事中にツヴァイはカームの街で行われている決闘の大まかなルールを2人から聞いた。
決闘を始める直前に宝玉と呼ばれる小さなボールを渡され、相手が持つ宝玉を先に破壊した者が決闘の勝者となる。というのが基本的なルールで、その宝玉を破壊する方法は魔法でも武術でも何でもありなのだが、攻撃の威力管理を怠り相手を殺してしまった場合、その者は決闘の敗者となりその上、決闘上過失致死罪に問われ、殆どの場合、無期懲役以上の刑に処される。
カームの街では年に30回ほど決闘が行われているがここ20年決闘による死者は出ておらず、更にツヴァイが戦う悪役令嬢、フレグランスは過去に2回決闘を行っていて、2回とも勝利しているが決闘相手は擦り傷程度の怪我しか負っていないとのことだった。
そういった情報を得てツヴァイは自分の命が脅かされる可能性が低いことには安堵したが。
「……ただ、特訓をする前に少し相談に乗ってくれないか?」
別の不安ができたため、その相談をアストライアにお願いした。
「いいけど、何?」
「……」
そして、アストライアが相談に乗ると頷いてくれたのでツヴァイは森に来る前に自分が泊まった館から持ってきた日本刀を手に持ち、鞘から刀を抜いた。
「俺は魔法が使えないからこの刀で戦うしかないんだけど、……これ、すっごく危ないよな? 決闘で使って大丈夫だろうか」
ツヴァイが持つ日本刀の刀身は鈍い輝きを放っており、その刀身でゴブリンの腕を骨ごと両断したことを思い出しながらツヴァイはこれを決闘で使うのは危険なのではないかと語った。
「……大丈夫かってどういうこと?」
「いや、真剣を振り回すなんて危なすぎるんじゃないかなと俺は思ったんだが……、あ、もしかしてこの世界にはダメージをゼロにする防御魔法があったりするんだろうか。それか決闘のフィールド内ではどんな攻撃も致命傷にならない魔法とか」
そういうのがあるのなら使えるかもしれないとツヴァイが期待の籠もった視線を向けるとアストライアは不思議なものを見る目でツヴァイを見つめ返した。
「そこまで万能ではないけど、ダメージを軽減する魔法はある。けど、ツヴァイの相談内容的にその話は関係ない」
「ん? それはどういうことだ?」
「だって、そもそもその刀、────何も斬れない刀だから」
「……え?」
何も斬れない刀。自分が手に持つ日本刀をそう評されたツヴァイが唖然としている間にアストライアは言葉を続けた。
「最初に会ったときから不思議に思ってた。その刀を危険物みたいにすぐ鞘に仕舞ったけど、それには刃がついていない。あの時はツヴァイが魔法を使えないって知らなかったから刀の形をしているだけで杖として使ってる武器とわたしは認識していた」
何でそれを危険だと思っているの? と、不思議そうに首を傾げるアストライアを見た後、ツヴァイは視線を動かし自分が持つ日本刀の鋼色の刀身をマジマジと見つめた。
……本当だ。この刀、刃がない。
色こそ本物の日本刀のように青みがかった灰色だったがその刀身の作りは刃物というよりも土産屋で売っているような木刀に近く、念のため自分の腕の上を軽く滑らせてみたが全く斬れず、そのことにツヴァイは少なからず衝撃を受けた。
……え、じゃあ、なんであの時ゴブリンの腕が斬れたんだ? ……いや、そういえば俺が攻撃したゴブリンって、ゾンビみたいな奴だったな。
もしかしたら斬ったのではなく当たった衝撃で腐っていた腕が落ちただけだったのかも。と、ツヴァイはその時のことを思い出そうとしたが、リアを助けることに必死すぎてゴブリンを斬った瞬間のことなんて覚えていなかった。
……けど、この刀が斬れないっていうなら木刀みたいなもんだし相手の武器だけを狙って目とかに当てないように気をつければ使えるか。
「アストライア。決闘で勝敗を決めるボール、宝玉っていうのはこの刀を当てるだけでも壊せるんだろうか」
そして、自分の武器が思っていたよりも使えないことに逆に安心したツヴァイは既に戦闘態勢になっているアストライアに刀を向け。
「うん。衝撃に弱いから魔法を使わなくてもその刀で叩くだけで十分壊せる。……これで相談は終了?」
刀を向けられたことに少し嬉しそうな表情を浮かべたアストライアが手に持つ槍をゆっくりと動かした。
次の瞬間。
「────じゃあ、やろう」
斬れない刀と電光石火の銀槍が森の中で激しくぶつかった。
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