3 / 20
美味しい
しおりを挟む
日が落ちて薄暗くなった森の街道を、街に向かって歩いている。
さっきまで瀕死の重傷だったとは思えないほど、体の調子は良い。あの四人組にボコられる前よりも体が軽いとすら感じる。ベネットの謎治療のおかげかもしれんな。
そんなことを考えながら歩いていると、街の明かりが見えてきた。
俺は足を止めて、ぽよぽよと弾むようにして移動しているベネットを見た。
本職のモンスターテイマーは、テイムしたモンスターを魔物玉という魔道具に収納するので、問題なく街に入れる。だが俺は、魔物玉なんて持ってない。
「どうしようかな、モンスターを連れて街には入れないしなぁ……」
なにか方法はないものかと、頭をかきながら息を吐くと、ベネットはシュルシュルと糸状になった。
「どうするつもりだ?」
糸状になったベネットは、服の隙間から入り込んできて、俺の体に巻き付きついた。ベネットの念話が聞こえる。
「これで、他の人間、分からない、どう?」
へー、菌糸の状態に自在になれるのか。便利な奴だなぁ。服が多少膨らんでいるが、これなら怪しまれずに街に入れるだろう。
そのまま街に近づくと、顔見知の衛兵たちが声を掛けてきた。
「よぉ、ウィル! 服がボロボロじゃねぇか、どうしたんだ?」
「ちょっとヘマしちまってな」
俺が肩をすくめながら返すと、彼らは大きな口を開けて笑った。そのまま俺は素知らぬ顔で門を通り抜け街に入るが、呼び止められたりはしなかった。
どうにか無事に街に戻れた。ホッと息を吐くが、同時に全財産を奪われた怒りも沸々と湧き上がってくる。
あの四人組のことも気になるが、とりあえず腹が減っているから、拠点にしている宿に向かった。
今の所持金はゼロだが、今朝、一週間分の宿代と飯代を前払いしておいたので、あと一週間は宿と飯には困らない。
宿屋に入ると、受付カウンターにいた女将さんに声を掛けられた。
「あら、ウィルさんお帰り。今日は顔色がいいね」
顔色がいいだって? 小娘どもに騙されて気分は最悪だけどな。苦笑いで流して部屋に向かった。
部屋に入ると、ベネットは俺から離れてキノコの形状に戻った。ぽよぽよと跳ねて元気そうだ。
俺は魔法を受けてボロボロになった服を脱いで、体の状態を確認する。傷跡も残らず、綺麗に治っているようだ。
「凄いな。見た目には傷が完治しているみたいだ」
ベネットは飛び跳ねて俺の背中に張り付いた。そして菌糸を触手のように伸ばして、俺の体を探っているようだ。
「ベネットの菌糸、ウィルの細胞、完全に融合した。これからは、怪我しても、すぐ治る」
「融合って……」
多少の不安は感じたが、気持ち悪いとか、嫌な気分にはならなかったので、深く考えないことにした。
服を着替えて「さて、飯に行くか」と呟くと、ベネットは再び菌糸の状態になり俺の体に巻き付いた。
食堂に入り、空いているテーブルについた。酒は追加料金なので今日は我慢だ。食事をしていると、一人の男がテーブルの向かいに座った。
「なぁ、ウィル。最近儲けたんだろ? 一杯奢ってくれよ」
こいつは新人だった頃からの付き合いのザックだ。ちょくちょく俺と共にクエストをこなしたりもする、そこそこの腕前の冒険者だ。
「ザック、聞いてくれよ。今日、女の子パーティに誘われてクエストに付いて行ったら、魔法でボコられて、あり金全部取られちまったよ」
「ウィルらしいな! どうせスケベなことを妄想している隙を突かれたんだろ?」
見ていたかのように言い当てられて、返す言葉もない。顔を引きつらせて固まっていると、ザックは大笑いした。
「しゃーねーな。今日は俺が奢ってやるから元気出せよ! ねーちゃん、こいつにビール一杯頼むよ!!」
「すまん、ありがとな」
ビールがなみなみと注がれたジョッキが運ばれてくると、すぐに喉に流し込んだ。その後は俺が溢す恨み言を、ザックは笑いながら聞いてくれた。
食事を終えた俺は部屋に戻ってきた。ベネットはキノコの姿の戻って、つぶらな瞳で俺を見ている。
「ウィル、ベネットも空腹。少し血、吸わせて」
「いいけど、少しだぞ? あんまりたくさん吸うと、俺、死んじゃうからな?」
「分かってる。少しだけ」
俺の腕にぴょこっと跳びつき、菌糸を絡みつける。痛みは無く、少しくすぐったい。しばらくすると俺の腕から離れ、ぽよぽよと跳ねる。
「ウィルの血、美味しかった」
「そ、それは良かったな!」
俺は、嬉しそうにしているベネットに愛想笑いをして、ベッドの上に寝転んだ。
ブラッディマッシュ……。
成体ならたった一体で騎士団一個大隊を壊滅させられる、正真正銘のバケモノだ。昔、図書館で読んだ本に書いてあった。そこに描かれていた幼体の姿も、深く印象に残っている。
幼体を発見したら、即座にギルドと騎士団に報告し、抹消しなければならない。
抹消? 助けてくれたこいつを……? できるわけない。
そんなことを考えながら、俺は眠りに堕ちていった。
さっきまで瀕死の重傷だったとは思えないほど、体の調子は良い。あの四人組にボコられる前よりも体が軽いとすら感じる。ベネットの謎治療のおかげかもしれんな。
そんなことを考えながら歩いていると、街の明かりが見えてきた。
俺は足を止めて、ぽよぽよと弾むようにして移動しているベネットを見た。
本職のモンスターテイマーは、テイムしたモンスターを魔物玉という魔道具に収納するので、問題なく街に入れる。だが俺は、魔物玉なんて持ってない。
「どうしようかな、モンスターを連れて街には入れないしなぁ……」
なにか方法はないものかと、頭をかきながら息を吐くと、ベネットはシュルシュルと糸状になった。
「どうするつもりだ?」
糸状になったベネットは、服の隙間から入り込んできて、俺の体に巻き付きついた。ベネットの念話が聞こえる。
「これで、他の人間、分からない、どう?」
へー、菌糸の状態に自在になれるのか。便利な奴だなぁ。服が多少膨らんでいるが、これなら怪しまれずに街に入れるだろう。
そのまま街に近づくと、顔見知の衛兵たちが声を掛けてきた。
「よぉ、ウィル! 服がボロボロじゃねぇか、どうしたんだ?」
「ちょっとヘマしちまってな」
俺が肩をすくめながら返すと、彼らは大きな口を開けて笑った。そのまま俺は素知らぬ顔で門を通り抜け街に入るが、呼び止められたりはしなかった。
どうにか無事に街に戻れた。ホッと息を吐くが、同時に全財産を奪われた怒りも沸々と湧き上がってくる。
あの四人組のことも気になるが、とりあえず腹が減っているから、拠点にしている宿に向かった。
今の所持金はゼロだが、今朝、一週間分の宿代と飯代を前払いしておいたので、あと一週間は宿と飯には困らない。
宿屋に入ると、受付カウンターにいた女将さんに声を掛けられた。
「あら、ウィルさんお帰り。今日は顔色がいいね」
顔色がいいだって? 小娘どもに騙されて気分は最悪だけどな。苦笑いで流して部屋に向かった。
部屋に入ると、ベネットは俺から離れてキノコの形状に戻った。ぽよぽよと跳ねて元気そうだ。
俺は魔法を受けてボロボロになった服を脱いで、体の状態を確認する。傷跡も残らず、綺麗に治っているようだ。
「凄いな。見た目には傷が完治しているみたいだ」
ベネットは飛び跳ねて俺の背中に張り付いた。そして菌糸を触手のように伸ばして、俺の体を探っているようだ。
「ベネットの菌糸、ウィルの細胞、完全に融合した。これからは、怪我しても、すぐ治る」
「融合って……」
多少の不安は感じたが、気持ち悪いとか、嫌な気分にはならなかったので、深く考えないことにした。
服を着替えて「さて、飯に行くか」と呟くと、ベネットは再び菌糸の状態になり俺の体に巻き付いた。
食堂に入り、空いているテーブルについた。酒は追加料金なので今日は我慢だ。食事をしていると、一人の男がテーブルの向かいに座った。
「なぁ、ウィル。最近儲けたんだろ? 一杯奢ってくれよ」
こいつは新人だった頃からの付き合いのザックだ。ちょくちょく俺と共にクエストをこなしたりもする、そこそこの腕前の冒険者だ。
「ザック、聞いてくれよ。今日、女の子パーティに誘われてクエストに付いて行ったら、魔法でボコられて、あり金全部取られちまったよ」
「ウィルらしいな! どうせスケベなことを妄想している隙を突かれたんだろ?」
見ていたかのように言い当てられて、返す言葉もない。顔を引きつらせて固まっていると、ザックは大笑いした。
「しゃーねーな。今日は俺が奢ってやるから元気出せよ! ねーちゃん、こいつにビール一杯頼むよ!!」
「すまん、ありがとな」
ビールがなみなみと注がれたジョッキが運ばれてくると、すぐに喉に流し込んだ。その後は俺が溢す恨み言を、ザックは笑いながら聞いてくれた。
食事を終えた俺は部屋に戻ってきた。ベネットはキノコの姿の戻って、つぶらな瞳で俺を見ている。
「ウィル、ベネットも空腹。少し血、吸わせて」
「いいけど、少しだぞ? あんまりたくさん吸うと、俺、死んじゃうからな?」
「分かってる。少しだけ」
俺の腕にぴょこっと跳びつき、菌糸を絡みつける。痛みは無く、少しくすぐったい。しばらくすると俺の腕から離れ、ぽよぽよと跳ねる。
「ウィルの血、美味しかった」
「そ、それは良かったな!」
俺は、嬉しそうにしているベネットに愛想笑いをして、ベッドの上に寝転んだ。
ブラッディマッシュ……。
成体ならたった一体で騎士団一個大隊を壊滅させられる、正真正銘のバケモノだ。昔、図書館で読んだ本に書いてあった。そこに描かれていた幼体の姿も、深く印象に残っている。
幼体を発見したら、即座にギルドと騎士団に報告し、抹消しなければならない。
抹消? 助けてくれたこいつを……? できるわけない。
そんなことを考えながら、俺は眠りに堕ちていった。
96
あなたにおすすめの小説
追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~
☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。
しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。
前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。
貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。
言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。
これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~
仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる