《完結》恋に落ちる瞬間〜私が婚約を解消するまで〜

本見りん

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非常識な令嬢

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 そんな日々が過ぎ、アルベルトとツツェーリアそしてブルーノとマルクスはそれぞれの婚約解消が出来ないまま学園の最終学年となった。
 手を替え品を替え、いろんな方法で婚約の解消を試みてはいるがどうしてもそれが叶わない。……表面上は何も変わらない日々。


 ──そして学園を卒業すれば、もう結婚の準備段階となる。



 ……


「アルベルトさまぁ! セイラとお昼ご飯を一緒に食べませんかぁ?」


 最終学年となり変わった事は、今年の新入生で今までいなかったタイプの生徒がいた事。


 その女生徒は子爵令嬢であるにも関わらず、全く貴族の関係性や在り方を理解していなかった。もしくは『学園内は皆平等』という事を身分はまったく考えなくて良いと曲解しているのではないだろうか?

 彼女は入学式が終わるや否や、3年生のアルベルト王子の部屋に押しかけグイグイと迫ってきた。
 人から聞けば同じクラスの身分の高い者や美男子にも声をかけまくっているらしいが、1番の狙いはアルベルト王子なのだとセイラのその分かりやすい態度から周囲はそう理解した。


 ……であるから、周囲からも教師からもかなり手厳しく対応されてはいるのだが、本人は全く気にしていないようだった。


「アルベルトさまぁ。セイラ、ランチを食べるのにすごくいい場所を見つけたのぉ。……2人で一緒に食べましょう?」


 今日も周りを気にせず、上目遣いでアルベルトを誘惑しようとするセイラ。

 呆れた様子のアルベルトの前に側近達が庇うように立つ。


「何を言っている? 殿下はいつもの場所で食事を召し上がられる」

「そもそも何故殿下が関係のないお前などと2人で食事をすると思うのだ」


 2人の側近に睨まれながらキツく言われ普通の女生徒ならばすぐに諦めるところだが、セイラには全く効かない。


「たまには違う場所で食べるのもぉ、気分が変わっていいでしょぉ? それに2人も一緒に来たいのー? いいわよぉ、4人で行きましょ?」


 ふふ、と女生徒から見れば明らかにあざとく可愛く微笑んでいる様子のセイラ。

 しかしそれは真に愛する者がいるアルベルト達には全く効かず、3人もイライラしているようだ。

 そして周囲の女生徒達の怒りはMAXだ。


「ちょっと! 貴女いい加減にしなさいよ!」
「そうよ、殿下に対して無礼よ!」
「貴女何様のつもり? 殿下方は嫌がってるのに、本当に厚かましいわね!」


 怒りが弾け、女生徒達から集中砲火だ。
 ……しかし、セイラはシレッとしていた。


「やぁだ、ヒステリック~。アルベルトさま、可哀想。こんな怖い人達に囲まれてぇ……」


「なんですってぇッ!!」


 更に状況が悪化しそうになった時、アルベルトが立ち上がる。


「皆、落ち着いて。
……私はいつもの彼らと一緒にランチを摂る。セイラ嬢? 君と一緒にいる必要性をまったく感じない。騒ぎを起こすなら今すぐここから出て行きたまえ」


 アルベルトは冷静にセイラを断じた。

 流石にセイラもグッと言葉に詰まる。


「ここの人達に邪魔されたから今日は帰りますけどぉ! 次は絶対に一緒に食べてくださいよねぇ、アルベルトさまぁ?」


 そう最後にウィンクをしてからセイラは出て行った。


 いったい何なんだ? と騒めく教室。


 ツツェーリアも皆も、何やら嵐の予感がしているのだった。


 
 ◇


「今日も来ておりましたわね。……私、あの手のタイプの方は初めて見ましたわ。まるで言葉というものが通じないのですね」


 王子妃教育が終わった王宮での婚約者同士のお茶会。

 ……今日も教室にセイラが来ていた。しかし彼女を嫌うクラスメイト達に邪険に追い払われるので、最近では移動教室や昼食の為に教室を出るのを見計らって待ち伏せされるようになっている。


「まったく……。本当にいい加減にして欲しいものだ。近頃はマリアンネ嬢に付き纏われているマルクスの気持ちが分かるようになってきた。
学園生活も残すところ一年もない。なんとか卒業までに婚約の解消を成し遂げるべく頭を悩ませているというのにこのような余計な悩みをも抱えてしまうとは」


 アルベルトは心底嫌そうにそう言って大きくため息を吐いた。


「……余りにも酷いですし、学園側に厳しく対処していただくというのも一つの手ですわよ。本来ならば立場が上の貴族に直接声をかけるだけでも失礼になるというのに殿下に擦り寄るなど、これは学園以外ではあり得ない事態なのですから。
卒業までこのような状況を我慢される必要もございませんでしょう?」


 それをアルベルトは神妙な顔で聞いていた。ツツェーリアの言葉に頷くでもなく、何かを真剣に考え込んでいるようだ。


「……アルベルト殿下?」


「……学園以外ではあり得ない事態、か……。確かにこのような事は普通の社交界ではあり得ない。貴族世界で身分を無視し王家の者にすり寄るなど……。普通では、ない」


「……はい。ですから、この事を学園長に申し上げて対応を……」


 アルベルトは何か思い詰めたような表情で顔を上げた。苦しみながらも何かを決意したかのような、強い瞳だった。


「ツツェーリア。私達は今まで何をしても願いを叶える事が出来なかった。……正攻法ではダメなのだ。
……むしろ、あのように非常識な考えで行動をしないと我らの願いを成し得ることは出来ないのかもしれない」


 アルベルトの真剣な表情に少し怯えながらも、どういう事か分からずツツェーリアは彼をじっと見詰めて次の言葉を待った。


「……ツツェーリアには嫌な気持ちにさせてしまうかもしれないが、私はセイラ嬢とこの卒業までの期間を共に過ごそうと思う。そして我らが評判を落とす事で周りから婚約の解消を望まれるように仕向けようと思う」





 
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