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第3章 ダーコラ国国境紛争
第3章第022話 裏切りの対価
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第3章第022話 裏切りの対価
・Side:カステラード・バルト・ネイルコード
小竜様の偵察によるダーコラ国側の街が襲撃されているとの報を伝えた後、すぐに陣を飛び出していったレイコ殿。
結局あの後、レイコ殿は宿営地に戻ってこなかった。
バッセンベル領の街に徒歩で向かった騎士達が戻ってきたのは、次の日の昼前だった。
略奪を行なったのは、やはりモンテス男爵で間違いないそうだが。襲撃に参加した五十名は、ことごとくレイコ殿に無力化され、全員が"賊"としてダーコラ国軍に確保されたそうだ。
襲撃に参加しなかった者達は、現在この宿営地に戻りつつある。
派遣した騎士が、ダーコラ国軍の指揮官であるオルモック将軍と話したそうだが。やつらが"捕虜"になるのか"賊"となるのかは、この語の話し合い次第と言うことで、とりあえず同意してくれたそうだ。…どのみち、今帰ってこられても扱いに困る。謝意として全員首だけにしてダーコラ国に送るくらいしか使い道が無いだろうしな。
バッセンベル領の領主の娘トラーリ嬢と、後見たるアトラコム卿を会議室に呼び出した。
「さて。ダーコラ国の街を略奪しにいったのは、やはりモンテス卿の部隊だったそうだ。襲撃に参加した兵は全員レイコ殿に叩きのめされ、ダーコラ国に引き渡されたそうだ。"賊"としてな」
「お待ちください、カステラード殿下。それはモンテスめの独断であって、私の、バッセンベルの責任ではありませぬ!どうかご寛恕を」
早々に息子を切り捨てるか。
さすがに馬鹿でも、国同士の停戦合意を無視したということの重大さは理解しているようだ。国の評判を砕き、王家の面子に泥を塗りたくった行為だからな。
トラーリ嬢の方と言えば、青白い顔でどうも既に諦めた顔をしている。
戻ってきた騎士達から渡された板を一枚、テーブルに放る。
「アトラコム卿。それにあなたの指示が書かれている。ネイルコード国が有利だからダーコラ国側で略奪しろとな」
「…お言葉ですが、ダーコラ国は敵国ですよ! そこを襲撃することの何が悪いのですか! たしかに停戦後にはなってしまいましたが、その指示は停戦前に出したことです。ネイルコード国への忠義からの行動をそのように責められても!」
開き直ってきたな。
まぁ確かに、連絡が前後することは、よくあることだ。しかし、そもそも略奪などは誰も指示していない。戦線を訪れる領軍はまず本部に出頭すべしと言う指示は、届けられているはずだ。
ダーコラ国との国境に位置するバッセンベル領の貴族達は、祖父の時代に戦場での功で叙爵したものが多い。そのせいか昔から、こういう紛争が起きる都度むやみやたらに火を大きくしようとする傾向がある。戦争は飯の種にしか見えていないのだろうが、それに巻き込まれる他領の兵達の身にもなってくれ。
しかし。今回はそちらはむしろ些事だ。
「それだけではないぞ、アトラコム卿。もう一枚の方だ。」
アトラコム卿がそれを手に取って蒼白になる。
「…あの馬鹿。指示はすぐに処分しろといつも言っているのに…」
「ふん。認めるのだな、その指示を」
「い…いや…これは…」
トラーリ嬢が、呆然としているアトラコム卿から板を奪い取り読む。
「"戦況を北から観察し、ネイルコード国側が不利とみたら、味方の振りをしてカステラード殿下の陣に接近し、これを襲撃しろ。ダーコラとの繋ぎは既に取ってある" …なんということを…」
トラーリ嬢も、呆然として崩れ落ちる。
「さて。アトラコム卿とモンテス卿のネイルコード国に対する叛逆は明白である。カステラード・バルト・ネイルコードの名において両名を捕縛、王都に連行して貴族議会において裁判にかける。…連座を持ち出すまでもなく、両名は極刑だろうな。まぁモンテスはダーコラ国から戻って来れたらだがな。衛兵、アトラコムを捕縛して監視を付けろ。即、王都に護送する」
アトラコムが崩れ落ちるが。すぐさま兵士に縄をかけられされていかれる。
喚いても無駄だということ位は理解したのか、もう抵抗する気力も無いようだ。
「さて、トラーリ殿。まぁ私も、あなたが関与しておらずあの馬鹿たちの暴走だということはよくよく理解しているが。それでもバッセンベル領としての責任が皆無とはならない。なるべく事情は斟酌されるように尽力するが、それなりの罰が領に下される覚悟はしておいてくれ」
トラーリ嬢が立ち上がり、覚悟を決めた表情で己がゴルゲットを外して机の上に差し出し、堂々とした礼をする。
「ご配慮ありがとうございます。私トラーリ・バッセンベル・ガランツ、及び辺境候ジートミル・バッセンベル・ガランツ、共にカステラード殿下に身をお預けします」
「承った。 …彼女は拘束の必要は無いが、監視を付けた上で宿舎に軟禁しておけ。王都にお連れするまで丁重に扱うように」
「はっ!」
警備の騎士に指示する。
「…彼女の侍女と協力して、自裁に及ばぬよう目を離すな」
「!っ…了解いたしました」
小声で追加の指示もする。あの顔色では、一人になった途端に妙な考えに及ばないとも限らない。
…まぁバッセンベル領には碌でもない貴族が多いようだが、彼女は比較的まともに見える。賠償、降格、領地返納、バッセンベル領には厳しい沙汰が下るだろうが、彼女は生かしておきたい。
「…ところでレイコ殿はどうした?」
戻ってきた騎士に聞くが。
「残念ながら、暗夜を東の方へ走り去ったという目撃しか…」
「…レイコ殿のことだから、危険なことがあるとは思わないが。東なら、おそらくエイゼル市に向かったのだろう。アイズン伯爵に伝令を出しておいてくれ」
…彼女にここまで負担をかけるつもりはなかったのだが。不甲斐ない。
・Side:カステラード・バルト・ネイルコード
小竜様の偵察によるダーコラ国側の街が襲撃されているとの報を伝えた後、すぐに陣を飛び出していったレイコ殿。
結局あの後、レイコ殿は宿営地に戻ってこなかった。
バッセンベル領の街に徒歩で向かった騎士達が戻ってきたのは、次の日の昼前だった。
略奪を行なったのは、やはりモンテス男爵で間違いないそうだが。襲撃に参加した五十名は、ことごとくレイコ殿に無力化され、全員が"賊"としてダーコラ国軍に確保されたそうだ。
襲撃に参加しなかった者達は、現在この宿営地に戻りつつある。
派遣した騎士が、ダーコラ国軍の指揮官であるオルモック将軍と話したそうだが。やつらが"捕虜"になるのか"賊"となるのかは、この語の話し合い次第と言うことで、とりあえず同意してくれたそうだ。…どのみち、今帰ってこられても扱いに困る。謝意として全員首だけにしてダーコラ国に送るくらいしか使い道が無いだろうしな。
バッセンベル領の領主の娘トラーリ嬢と、後見たるアトラコム卿を会議室に呼び出した。
「さて。ダーコラ国の街を略奪しにいったのは、やはりモンテス卿の部隊だったそうだ。襲撃に参加した兵は全員レイコ殿に叩きのめされ、ダーコラ国に引き渡されたそうだ。"賊"としてな」
「お待ちください、カステラード殿下。それはモンテスめの独断であって、私の、バッセンベルの責任ではありませぬ!どうかご寛恕を」
早々に息子を切り捨てるか。
さすがに馬鹿でも、国同士の停戦合意を無視したということの重大さは理解しているようだ。国の評判を砕き、王家の面子に泥を塗りたくった行為だからな。
トラーリ嬢の方と言えば、青白い顔でどうも既に諦めた顔をしている。
戻ってきた騎士達から渡された板を一枚、テーブルに放る。
「アトラコム卿。それにあなたの指示が書かれている。ネイルコード国が有利だからダーコラ国側で略奪しろとな」
「…お言葉ですが、ダーコラ国は敵国ですよ! そこを襲撃することの何が悪いのですか! たしかに停戦後にはなってしまいましたが、その指示は停戦前に出したことです。ネイルコード国への忠義からの行動をそのように責められても!」
開き直ってきたな。
まぁ確かに、連絡が前後することは、よくあることだ。しかし、そもそも略奪などは誰も指示していない。戦線を訪れる領軍はまず本部に出頭すべしと言う指示は、届けられているはずだ。
ダーコラ国との国境に位置するバッセンベル領の貴族達は、祖父の時代に戦場での功で叙爵したものが多い。そのせいか昔から、こういう紛争が起きる都度むやみやたらに火を大きくしようとする傾向がある。戦争は飯の種にしか見えていないのだろうが、それに巻き込まれる他領の兵達の身にもなってくれ。
しかし。今回はそちらはむしろ些事だ。
「それだけではないぞ、アトラコム卿。もう一枚の方だ。」
アトラコム卿がそれを手に取って蒼白になる。
「…あの馬鹿。指示はすぐに処分しろといつも言っているのに…」
「ふん。認めるのだな、その指示を」
「い…いや…これは…」
トラーリ嬢が、呆然としているアトラコム卿から板を奪い取り読む。
「"戦況を北から観察し、ネイルコード国側が不利とみたら、味方の振りをしてカステラード殿下の陣に接近し、これを襲撃しろ。ダーコラとの繋ぎは既に取ってある" …なんということを…」
トラーリ嬢も、呆然として崩れ落ちる。
「さて。アトラコム卿とモンテス卿のネイルコード国に対する叛逆は明白である。カステラード・バルト・ネイルコードの名において両名を捕縛、王都に連行して貴族議会において裁判にかける。…連座を持ち出すまでもなく、両名は極刑だろうな。まぁモンテスはダーコラ国から戻って来れたらだがな。衛兵、アトラコムを捕縛して監視を付けろ。即、王都に護送する」
アトラコムが崩れ落ちるが。すぐさま兵士に縄をかけられされていかれる。
喚いても無駄だということ位は理解したのか、もう抵抗する気力も無いようだ。
「さて、トラーリ殿。まぁ私も、あなたが関与しておらずあの馬鹿たちの暴走だということはよくよく理解しているが。それでもバッセンベル領としての責任が皆無とはならない。なるべく事情は斟酌されるように尽力するが、それなりの罰が領に下される覚悟はしておいてくれ」
トラーリ嬢が立ち上がり、覚悟を決めた表情で己がゴルゲットを外して机の上に差し出し、堂々とした礼をする。
「ご配慮ありがとうございます。私トラーリ・バッセンベル・ガランツ、及び辺境候ジートミル・バッセンベル・ガランツ、共にカステラード殿下に身をお預けします」
「承った。 …彼女は拘束の必要は無いが、監視を付けた上で宿舎に軟禁しておけ。王都にお連れするまで丁重に扱うように」
「はっ!」
警備の騎士に指示する。
「…彼女の侍女と協力して、自裁に及ばぬよう目を離すな」
「!っ…了解いたしました」
小声で追加の指示もする。あの顔色では、一人になった途端に妙な考えに及ばないとも限らない。
…まぁバッセンベル領には碌でもない貴族が多いようだが、彼女は比較的まともに見える。賠償、降格、領地返納、バッセンベル領には厳しい沙汰が下るだろうが、彼女は生かしておきたい。
「…ところでレイコ殿はどうした?」
戻ってきた騎士に聞くが。
「残念ながら、暗夜を東の方へ走り去ったという目撃しか…」
「…レイコ殿のことだから、危険なことがあるとは思わないが。東なら、おそらくエイゼル市に向かったのだろう。アイズン伯爵に伝令を出しておいてくれ」
…彼女にここまで負担をかけるつもりはなかったのだが。不甲斐ない。
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