玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第10章 レイコさんは自重しない

第10章第022話 国王認定式

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第10章第022話 国王認定式

Side:ツキシマ・レイコ

 「巫女様。もうしばらくお待ちください」

 「あ、はい。わかりました」

 はい。教会本部の礼拝堂の控え室です。これから執り行われるネイルコード国国王戴冠認定式の出番待ちです。
 衣装もなかなかに立派でございます。

 戴冠式自体は、もちろんそれぞれの国で行いますが。正教国で認定されて正式な即位となります…という建前ですね。
 この大陸に入植が始まって少し経った頃、開拓地に適した土地単位で小国が乱立する時代があり。北方からの魔獣に対抗しつつも、前線から離れた国では小競り合いを起こしていたそうなのですが。
 魔獣の氾濫のあと、赤竜教の中心である正教国が、国境と王位を追認することで、各国の調停と安定化を図った…ってのが最初だそうです。

 もっとも、正教国はお前らを国として認めないぞ!とか。だったらこちらは正教国を無視するわ!とか、国家と自治領の間でのパワーバランスの鍔迫り合いが起きる場でもあるのですが。逆に言えば戦争前に外交で解決しようという場でもあるわけで。しかしながら、この辺があの赤竜騎士団が浸透する原因でもあったようです。感想としては、一長一短ですね


 今回の認定式には、正教国から紹介されたり、海沿いでネイルコードと直接国交がある国は、認定式に招待されています。あとは、事前折衝などで友好的になった国が招待されています。言ってしまえば他国の認定式なわけですが、是非参加したいという国が多かったそうです。
 もともと、正教国、当該国、および親しい国の名代だけで行われるはずの式ですが。躍進著しいネイルコードと誼を結びたいとか。さらには、私を見たい…なにかしら公式な接触したいという目当てで来る人が多いんだそうです。

 そういえば。正教国に着いてからも、私に接触しようとしていくる人は皆無でしたね。
 カステラード殿下曰く。

 「バッセンベル領に前ダーコラ王家、さらにケルマン前祭司総長と赤竜騎士団な。あれの顛末が広まっていて、レイコ殿の手綱を取れるのはネイルコードのアイズン伯爵だけ…という噂が… ほら、あの強面だろ?」

 アイズン伯爵は、頬の麻痺は治っているのですが。未だに意図的にあの表情を使いますから。伯爵に「小竜神や巫女に合わせろ」と面と向かって言える人が少ないそうです。

 「レイコ殿の恩恵にあずかりたいと思う者は多いけどな。しかし逆に、レイコ殿をけしかけられたらえらいことになる…という話だそうな」

 「私、まるで番犬ですね」

 「くくくくっ」と意地悪そうに笑うカステラード殿下。殿下も何枚か噛んでいそうですね。
 アイズン伯爵の強面も含めて、半分くらい意図的にそう思わせているんでしょうけど。

 「レイコ殿を調略するために何か利を示すにしても、今のネイルコード以上となるとそれも難しい。まぁ交渉の窓口は用意してあるのだから、まずそこへどうぞだな。ただ、まだネイルコードを侮っている国は多いからな。用心するに越したことはないぞ」

 「…いつも通りと言うことで、それでいいですよ」

 経済に関することはネイルコード国を、奉納と特許に関しては正教国を介せと言うことです。私に直接言ってきても、何も良いことありませんよってことで。



 「巫女様、お出ましお願いいたします」

 案内の祭司さんが来ましたので。レッドさんを抱っこしつつ付いていきます。

 会場に入ると…今回はギャラリーが凄く多いとは聞いていましたが。礼拝堂に何百人入っているんですか?
 皆が一斉にに席から立って私を出迎えてくれます。
 入り口から、祭壇の前まで歩きですが…一人でバージンロード歩いているような気分で、顔が引きつります。先に祭壇前にいるリシャーフさんが、私の表情を見てちょっと震えています。…澄ましていますけど、笑いを堪えていますね。
 ネイルコード勢の隣に、マーリアちゃんがいるのを見つけました。…口だけで「がんばれ」と言ってくれます。…ありがたいですね。あ、その隣はお兄さんのアトヤック様。
 アインコール陛下は、ロトリー国勢も招待したかったそうですが。彼らのお披露目は後日の鉄道説明会の方になります。人権宣言もそこで行いますからね。


 祭壇の横の椅子に座らされると。リシャーフさんが錫杖で床を叩きます。シャリン!シャリン!シャリン!。
 それを合図に皆が席に着きます。…先ほどから視線を感じますね。むしろレッドさん見てくださいよ。

 ネイルコード以外の参列者が多いと言うことで。最初にリシャーフさんがネイルコードの建国の経緯を説明してくれます。私も予習はしてありますよ?


 東の大陸を忌避したセイホウ王国の人達が、この大陸を発見し渡航して。最初に拠点を作ったのは、セネバルの港よりもうちょい西にある港町だそうです。大きな港には向かない場所だそうですが城を築くのには向いていたところで。まだ魔獣も頻繁に出現していた頃には、拠点として機能していたそうです。
 現在も、教会とお城を中心とした街並みが健在だそうで、漁村が整備されています。昔のままの砦とか観光に向いているところよ?とは、リシャーフさんの侍従のタルーサさんの言。

 その後、魔獣を討伐しつつ現在のクラーレスカ正教国の領地を開拓し。魔獣が溢れるといった事件も、初代聖女と赤竜神によって駆逐され。魔獣南下の一番の大本だった北大陸とのつながり部分もユルガルムで封じることで、大陸の魔獣問題はほぼ解決しました。
 北の大陸から泳ぐなり流木に乗るなりして渡ってくる魔獣がいくらかいるらしく、正教国の北の地域での魔獣遭遇も皆無ではないですが。街々の守備隊で十分対処できているそうです。

 そもそも昔は、正教国の北側でも北の大陸と地続きだったんじゃないか?という説があるそうです。初代聖女と赤竜神がどこで何をしたかは、追従した者がいるわけでもないので、詳細な記録が残っているわけではないですが。私みたいに、北の大陸との接続部を吹き飛ばしたのかもしれません。

 まぁあれですね。この辺のリシャーフさんの演説は、この大陸の国々が元をたどれば正教国に繋がるということの確認みたいな話です。
 あとは、ネイルコード、正教国、公式招待参加者の簡単な紹介も終えて。やっと式が始まります。


 聖歌で赤竜神と…小竜神レッドさん…あと私も…祈りを捧げられて…あの、ちょっとキツイんですけど。なにか一発芸でもやれば良いんですか?という変な思考が…

 なんとか耐えきったあと。アインコール陛下が呼ばれ、祭壇の前でリシャーフさんに跪きます。

 「…汝、ネイルコード国国王アインコール・バルト・ネイルコードよ。赤竜神様への帰依に不足はないか」

 「是。我、赤竜神様に永遠の信仰を献げる者なり」

 「善哉。この世界を創造せり赤竜神に、ネイルコード国の新国王を即位を報ずるものなり」

 「小竜神、レッド様。赤竜神が巫女、レイコ・ツキシマ様。新たなる赤竜神様の使徒たるアインコール・バルト・ネイルコードに恩寵を賜れられますようっ!」

 …やっと出番です。心が折れそうでした。
 私がアインコール陛下の前に立ち。前に差し出すように抱えたレッドさんがバサっと翼を広げます。一回り大きくなったレッドさんが本気で広げると幅三メートル超えますから、けっこうデカいですよ。もちろんこれは、あらかじめ頼まれていたセレモニーの演出ですが。参列している各国の要人達が、ざわっとします。
 祭壇の前で翼を広げるレッドさん。レッドさんをトカゲか犬みたいと思っている人でも、この翼を見れば赤竜神の眷属だと納得が行くというものでしょう。

 リシャーフさんが差し出した赤竜教の印であるゴルゲッドをレッドさんが受け取り。私が両手で支えつつ、アインコール陛下にかけてあげます。

 「小竜神、レッド様。赤竜神が巫女、レイコ・ツキシマ様の祝福を得て。クラーレスカ正教国は、アインコール・バルト・ネイルコードがネイルコード国王と認定することをここに宣明する!」

 リシャーフさんが再度、錫杖を三回床を叩きます。シャリン!シャリン!シャリン!
 ネイルコードの面々と参列者が、祭壇に頭を下げて。私から順番に退場となり、認定式は終わりです。
 私が最初に出ますからね。終わりはあっさり。レッドさんをぎゅうとします。



 ちなみに。着替える間もなく、この日はあと五回ほど、他国の認定式やいろいろに駆り出されました。
 リシャーフさん曰く。

 「ちゃんとネイルコードへの分け前もあるし。鉄道説明会での賛同者でもあるから。よろしくね」

 お願い聞いておけばリターンもあるよって事ですね。報酬が賛同なのか。賛同の報酬がこの認定式なのか。まぁその辺の判断はリシャーフさんに丸投げして、ネイルコード勢で承認してもらってますけど。

 アインコール陛下と同じくらいの人とか。まだ少年といっていいくらいの年の子の認定式とか…父王が早逝されたとかで、若くして即位だそうです。…緊張しつも覚悟を決めたいい顔した少年です。頑張ってくださいね。
 ご老体の引退式なんかもやりました。老夫婦そろっての式です。王としていままでよくやった…という証として式を執り行いたかったとのことです。

 王位認定式と結婚式を一緒に行いに来た新婚夫婦さんも。レッドさんが念話でこそっと伝えてきます…新婦が懐妊しているそうです。二月目ちょっとくらいですか。
 お二人とは、式終わりにちょっとお話をしました。未婚なのに懐妊していた…なんて爆弾の可能性もあるので、慎重に話を聞き出しますよ。
 ふむふむ。三ヶ月前に結婚式と戴冠式を行う予定だったけど、私とレッドさんが正教国に来ると言うことで、それに合わせて式を延期したそうです。

 「式が延期されたのは残念でしたね。そのまま別に過ごされていたのですか?」

 「いえ。すでに王宮には入っていたのですが、延期が決まったのは急でしたので。そのまま王宮で暮らし始めてました」

 すでに同居はしていたんですね。ならOKかな?
 一緒に参列していたアインコール陛下にちょっと相談して、懐妊を伝えることにしました。…まだ爆弾の可能性はゼロではありませんが、妊娠していることは覆らないですからね。

 お二人に伝えたところ、まぁ身に覚えはあるそうで。素直にお祝いムードになってホッとしましたよ。
 例の出産前性別診断もサービスしておきます。事前に公知されてた方が混乱が少なくなるのは、どこの国も同じのようで。

 はい、お腹の中の子は男の子でした。お二人ですごく喜んでます。
 もちろん女の子だとしてもうれしいでしょうが。王妃として第一子が男子と知ってほっとするのは、継承的にしかたないところですか。新婦をいたわる新郎。まぁ仲はきちんと睦まじいようですし、あと何人でも産んでくださいね。



 さて。次のイベントは、各国の重鎮を集めて正教国主催で行われる鉄道説明会です。

 「そっちが本命だけどな」

 陛下が言わないでください。

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