(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

文字の大きさ
60 / 80

理事長の葛藤

しおりを挟む
「……一週間、経ったな。…………くっ……とうとう、期限切れの時を迎えてしまったか……」

 通夜のように暗い暗~い声で、緑雨理事長が呟く。
 あの、怒涛のように過ぎ去った例の騒動のせいで、今の彼はまるで幽鬼のよう……。

 前代未聞の新入生の異界落ちから始まった騒動は、一気に拡大し、やがては狭間をも巻き込む大騒動へと発展した。
 ……ただひたすらにその女生徒、星野美月の無事を祈り、采配を振るい、その娘を見事救い上げたまでは良かった。
 が、その後次々と明るみに出る、衝撃の事実――――とても一介の理事長権限では隠してはおけず、上の判断を仰げば、緊急会議が開かれ、そこでもう~んと責められる事態に。

 ……我ながら、何て悲惨な一週間だったんだ、と自嘲しながら緑雨理事長は頭を抱え、五月雨学園の理事長が代々使って来た書斎で、ふうっと深く深くため息を吐く。

(……仕方があるまい。今回は、特殊過ぎる案件じゃったからな)
(そうとも――――!元気を出せ。……最悪の事態は免れたであろうに)
(おぬしはようやったと思うぞ?何せ不眠不休で、あの騒動の後始末をつけたのじゃからな――――)

 一生懸命、慰めてくれる旧友達に頷き、せめて共に愚痴らせてもらおう、と緑雨理事長が口を開いた瞬間、ノックも無しで、扉が大きく開かれる――――

「一体、何事だ――――?!」

 語気鋭く問い詰める緑雨理事長の前には、気色満面の笑みを湛えた「食」グループ研究員、大森拓実おおもりたくみの姿があった。

「やった――――、私はやりましたよ?!彼女が、星野美月が目を覚ましました――――!」

 得意げにガッツポーズを決める大森研究員を眺め、まさか、……あの様な荒唐無稽な方法が上手くいったのか?と半ば呆然としていた緑雨理事長は、次の瞬間、はっと我に返り書斎を飛び出す。

(おおーーー!!首の皮一枚で、助かったな、春の坊!)
(良かった、良かった――――!)

 そして、それに喜々として、旧友達も緑雨理事長に続き飛び出していった。





「山姫殿!……して、星野美月さんは今、どの様な容態で――――?!」

 緑雨理事長が駆け付けた先は、言わずと知れた山姫の住処――――美月の休養先だった。

 ……あの時、美月が現世へ帰還するどさくさに紛れ、山姫はまんまと美月を自分のテリトリー内へと収めることに成功した。

 そのせいで、またねちねちと上からつつかれるネタが増えた緑雨理事長だったが、それにもめげず、また少しでも対抗すべく、せっせとこちらへ人員を派遣し続けた……。

 しかし、そのどれもが上手くいかず、……期限切れ直前の今朝、大森研究員の策に破れかぶれで乗った先の出来事である。

 少しでも美月の情報を得たい緑雨理事長は、息せき切って山姫を問い詰めた。
 
 何故なら、…………

 あの、散々だった実力テストから、もう一週間が経つ――――と、いうことは、実力テストのためと称し、念のため各新入生全員から署名を貰っていた期間がそろそろ切れてしまうのだ。

 ……実はこの一週間に、美月の祖母から何度も問い合わせがあった。
 それを、これは五月雨学園の伝統的なものである、として言いくるめ、お孫さんは今懸命にテストに取り組んでおられます、と煙に巻き、だましだまし何とか延ばしに延ばした一週間だったのだ。

 まさか、馬鹿正直に愛孫娘は意識不明の重体です、と述べるわけにもいかず、かと言って、普通の病院へ入院させるわけにもいかない。

 異界や狭間、あやかし関係のこの事象は、どうせ普通の病院では手が出せない。
 しかも、あの件に関する本人への説得、了承も無しに、此処から出し、一族以外の者と接触させるわけにもいかない……。

 まさに叫びだしたくなるくらいの心境で、あの騒動の片づけに走り回った緑雨理事長の目の下には、くっきりはっきりと濃い隈が刻まれていた。

   
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...