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理事長の葛藤
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「……一週間、経ったな。…………くっ……とうとう、期限切れの時を迎えてしまったか……」
通夜のように暗い暗~い声で、緑雨理事長が呟く。
あの、怒涛のように過ぎ去った例の騒動のせいで、今の彼はまるで幽鬼のよう……。
前代未聞の新入生の異界落ちから始まった騒動は、一気に拡大し、やがては狭間をも巻き込む大騒動へと発展した。
……ただひたすらにその女生徒、星野美月の無事を祈り、采配を振るい、その娘を見事救い上げたまでは良かった。
が、その後次々と明るみに出る、衝撃の事実――――とても一介の理事長権限では隠してはおけず、上の判断を仰げば、緊急会議が開かれ、そこでもう~んと責められる事態に。
……我ながら、何て悲惨な一週間だったんだ、と自嘲しながら緑雨理事長は頭を抱え、五月雨学園の理事長が代々使って来た書斎で、ふうっと深く深くため息を吐く。
(……仕方があるまい。今回は、特殊過ぎる案件じゃったからな)
(そうとも――――!元気を出せ。……最悪の事態は免れたであろうに)
(おぬしはようやったと思うぞ?何せ不眠不休で、あの騒動の後始末をつけたのじゃからな――――)
一生懸命、慰めてくれる旧友達に頷き、せめて共に愚痴らせてもらおう、と緑雨理事長が口を開いた瞬間、ノックも無しで、扉が大きく開かれる――――
「一体、何事だ――――?!」
語気鋭く問い詰める緑雨理事長の前には、気色満面の笑みを湛えた「食」グループ研究員、大森拓実の姿があった。
「やった――――、私はやりましたよ?!彼女が、星野美月が目を覚ましました――――!」
得意げにガッツポーズを決める大森研究員を眺め、まさか、……あの様な荒唐無稽な方法が上手くいったのか?と半ば呆然としていた緑雨理事長は、次の瞬間、はっと我に返り書斎を飛び出す。
(おおーーー!!首の皮一枚で、助かったな、春の坊!)
(良かった、良かった――――!)
そして、それに喜々として、旧友達も緑雨理事長に続き飛び出していった。
「山姫殿!……して、星野美月さんは今、どの様な容態で――――?!」
緑雨理事長が駆け付けた先は、言わずと知れた山姫の住処――――美月の休養先だった。
……あの時、美月が現世へ帰還するどさくさに紛れ、山姫はまんまと美月を自分のテリトリー内へと収めることに成功した。
そのせいで、またねちねちと上からつつかれるネタが増えた緑雨理事長だったが、それにもめげず、また少しでも対抗すべく、せっせとこちらへ人員を派遣し続けた……。
しかし、そのどれもが上手くいかず、……期限切れ直前の今朝、大森研究員の策に破れかぶれで乗った先の出来事である。
少しでも美月の情報を得たい緑雨理事長は、息せき切って山姫を問い詰めた。
何故なら、…………
あの、散々だった実力テストから、もう一週間が経つ――――と、いうことは、実力テストのためと称し、念のため各新入生全員から署名を貰っていた期間がそろそろ切れてしまうのだ。
……実はこの一週間に、美月の祖母から何度も問い合わせがあった。
それを、これは五月雨学園の伝統的なものである、として言いくるめ、お孫さんは今懸命にテストに取り組んでおられます、と煙に巻き、だましだまし何とか延ばしに延ばした一週間だったのだ。
まさか、馬鹿正直に愛孫娘は意識不明の重体です、と述べるわけにもいかず、かと言って、普通の病院へ入院させるわけにもいかない。
異界や狭間、あやかし関係のこの事象は、どうせ普通の病院では手が出せない。
しかも、あの件に関する本人への説得、了承も無しに、此処から出し、一族以外の者と接触させるわけにもいかない……。
まさに叫びだしたくなるくらいの心境で、あの騒動の片づけに走り回った緑雨理事長の目の下には、くっきりはっきりと濃い隈が刻まれていた。
通夜のように暗い暗~い声で、緑雨理事長が呟く。
あの、怒涛のように過ぎ去った例の騒動のせいで、今の彼はまるで幽鬼のよう……。
前代未聞の新入生の異界落ちから始まった騒動は、一気に拡大し、やがては狭間をも巻き込む大騒動へと発展した。
……ただひたすらにその女生徒、星野美月の無事を祈り、采配を振るい、その娘を見事救い上げたまでは良かった。
が、その後次々と明るみに出る、衝撃の事実――――とても一介の理事長権限では隠してはおけず、上の判断を仰げば、緊急会議が開かれ、そこでもう~んと責められる事態に。
……我ながら、何て悲惨な一週間だったんだ、と自嘲しながら緑雨理事長は頭を抱え、五月雨学園の理事長が代々使って来た書斎で、ふうっと深く深くため息を吐く。
(……仕方があるまい。今回は、特殊過ぎる案件じゃったからな)
(そうとも――――!元気を出せ。……最悪の事態は免れたであろうに)
(おぬしはようやったと思うぞ?何せ不眠不休で、あの騒動の後始末をつけたのじゃからな――――)
一生懸命、慰めてくれる旧友達に頷き、せめて共に愚痴らせてもらおう、と緑雨理事長が口を開いた瞬間、ノックも無しで、扉が大きく開かれる――――
「一体、何事だ――――?!」
語気鋭く問い詰める緑雨理事長の前には、気色満面の笑みを湛えた「食」グループ研究員、大森拓実の姿があった。
「やった――――、私はやりましたよ?!彼女が、星野美月が目を覚ましました――――!」
得意げにガッツポーズを決める大森研究員を眺め、まさか、……あの様な荒唐無稽な方法が上手くいったのか?と半ば呆然としていた緑雨理事長は、次の瞬間、はっと我に返り書斎を飛び出す。
(おおーーー!!首の皮一枚で、助かったな、春の坊!)
(良かった、良かった――――!)
そして、それに喜々として、旧友達も緑雨理事長に続き飛び出していった。
「山姫殿!……して、星野美月さんは今、どの様な容態で――――?!」
緑雨理事長が駆け付けた先は、言わずと知れた山姫の住処――――美月の休養先だった。
……あの時、美月が現世へ帰還するどさくさに紛れ、山姫はまんまと美月を自分のテリトリー内へと収めることに成功した。
そのせいで、またねちねちと上からつつかれるネタが増えた緑雨理事長だったが、それにもめげず、また少しでも対抗すべく、せっせとこちらへ人員を派遣し続けた……。
しかし、そのどれもが上手くいかず、……期限切れ直前の今朝、大森研究員の策に破れかぶれで乗った先の出来事である。
少しでも美月の情報を得たい緑雨理事長は、息せき切って山姫を問い詰めた。
何故なら、…………
あの、散々だった実力テストから、もう一週間が経つ――――と、いうことは、実力テストのためと称し、念のため各新入生全員から署名を貰っていた期間がそろそろ切れてしまうのだ。
……実はこの一週間に、美月の祖母から何度も問い合わせがあった。
それを、これは五月雨学園の伝統的なものである、として言いくるめ、お孫さんは今懸命にテストに取り組んでおられます、と煙に巻き、だましだまし何とか延ばしに延ばした一週間だったのだ。
まさか、馬鹿正直に愛孫娘は意識不明の重体です、と述べるわけにもいかず、かと言って、普通の病院へ入院させるわけにもいかない。
異界や狭間、あやかし関係のこの事象は、どうせ普通の病院では手が出せない。
しかも、あの件に関する本人への説得、了承も無しに、此処から出し、一族以外の者と接触させるわけにもいかない……。
まさに叫びだしたくなるくらいの心境で、あの騒動の片づけに走り回った緑雨理事長の目の下には、くっきりはっきりと濃い隈が刻まれていた。
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