(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

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休養所……? 2

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 物腰柔らかなその白い着物の女性に導かれて、美月達は居心地の良い部屋へと通される。

 そこは、南向きの日当たりの良い一画の、庭に面した二間続きの和室で、十二畳の広い和室の隣に六畳の小部屋が続いていた。 

 六畳の間には、寝心地の良さそうなふかふかのお布団が敷かれてあり、美月は三つ目にそっとそこへ寝かしつけられる。

「あ、あの…………いくら何でも、これは――――」

 流石にぶしつけでは、と恐縮する美月に、その女性は微笑んだ。

「ご気分の優れないときに、要らぬ気遣いはよくありませんよ?私は実嶺みれいと申します。何かありましたら、遠慮なくお言いつけください。そして、どうか、ゆっくりとお休みくださいませ」

 その温かい眼差しに包まれ、美月は思わずふっと気が緩む。
 すると、途端に襲ってくる眠気――――それにに抗い、美月は必死で目を開けていようとする。

「そのまま、お休みになって、大丈夫ですよ?……それとも、何か気がかりなことがありますか?」
「あの、…………いきなりで申し訳ないのですが、ツキに、ううん、この子ネコに何か温かいミルクでも――」

 言いかけた美月に、まるでそんなのいいよ、とでも言うようにミャーミャーと鳴き、三つ目によって一緒に布団へ突っ込まれたツキがもぞもぞと美月の左手を伝い、布団から顔を出す。

 ツキの金色の瞳と出会った実嶺は、大きく目を見開き、

「まあーーー!これは、…………!」と顔をくしゃくしゃに綻ばせた。
「す、すみません!よそ様のお家のお布団に――――」
「まあまあ!そんなこと、ちっとも構いません!――――何て美しい山の子でしょう!」

 うっとりとツキを見つめ、柔らかで良いにおいのする手を差し伸べた実嶺だったが、ツキはその手が近づいた途端、フーッと毛を逆なでて威嚇する。

「ツ、ツキ?!……どうしたの?」

 慌てて美月が問いかけると、ツキは甘えたように、今度は美月の頬に小さなその頭をこすりつけ、そこから動こうとはしなかった。

 それを見て、三つ目はガハハハッと笑い、

(ツキは、美月殿から離れたくない様子――――その気持ちは、痛いほど我にも分かるわい。……其処なる女人よ、悪いが此処にその、美月殿の所望するみるく、とやらを持ってきてもらえるか?)

 実嶺は残念そうにため息を吐き、そうですね、かしこまりました、と言って部屋から出て行った。

 そうすると、美月達が案内された部屋には、美月の横たわっている六畳間に寄り添い、胡坐を組む三つ目と、隣の十二畳の和室をソワソワと歩き回る二角の鬼の二人組、子供サイズの小さな一つ目のモノ達と鱗の生えた人型のモノ達になった。

 しかし、その内に、その鱗の生えた人型のモノ達が、

(おお~い、一角の。我らはこの庭の其処の池にて、しばし休もうと思うのじゃが……)

と、言い出し、それに三つ目は軽く頷いた。

(あい、分かった。――――我ら鬼族は、このまま美月殿に寄り添う故、しっかりゆっくりと休まれよ)
(…………すまぬな。何かあれば、すぐに駆け付ける故――――)

 そう言いおいて、彼らもまた、すうっと庭先の池へと吸い込まれていく。
 
 その一瞬の静寂の後、やはりパタパタと忙しなく動き回る足音が、絶えず隣の部屋から聞こえてくるのを気にして、美月がそっとそちらを窺うと、

(――――ええい、大人おおひと三吉鬼さんきちおに、そして一つ目達!いい加減、落ち着けいっ!……その分では、美月殿の気が休まらんわっ)

 雷のような三つ目の一喝が炸裂した。
 その後はし~んと静まり返り、物音ひとつしなかったが、痛いほどの視線を感じた美月が薄目を開けて襖の方を見ると、そこには石のように固まりつつも、こちらを凝視する鬼達の姿があった……。

(…………お前ら~~!)

 実力行使も厭わぬような、低い唸り声と三つ目のその様子に、美月は慌てて襖の向こうの妖し達に声をかける。

「あの、……おおひとさん?さんきちおにさん?一つ目さん?……皆さんも、疲れたでしょう?わたし、ここで大人しくしてるから、……あなた達も休んで?」
(美月様~~!)
(わ、分かりました――――!)
(あい!)(りょ!)(ほい!)

 どうやら了解してもらえたらしく、しばらく経つと、隣の部屋も静かになる――――。

 そこへ、実嶺がツキ用の温かいミルクを持って、戻って来た。
 美月は何とか右手で受け取ると、ツキに向かってそれを差し出す。

 やがて、満腹になったらしいツキが美月に寄り添って丸くなると、それを見届けた美月もまた耐えがたい眠気に襲われる。

(…………美月殿、我はずっと此処にいる故、どうかこのまま少し休んでくだされ)
「――――ありがとう。…………でも、三つ目さんのお布団は?」
「すぐに、お持ちいたします」

 身を翻した実嶺に、最後の力を振り絞って、美月は問いかける。

「実嶺さん――――!あの、……家に、祖母に帰るのが少し遅くなると、伝えてもらえますか――――?!」

 振り返った実嶺がにっこりと、既に連絡済ですよ、と答える。

 それを聞き、ほっとした美月の瞼は、今度こそゆっくりと閉じていく。

 クロ、おばあちゃん、……ごめんね。
 ちょっとだけ、……ちょっとだけ休んでから、お家に帰るから――――

 そのまま、美月の意識は、深く、深く沈んでいった――――

  
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