(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

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休養所……? 1

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 山姫の創った道を抜けると、そこは山の中腹の小道だった。

 眼下には、近代的な四角い建物がずらりと並び、いかにも実験棟らしきものもある。
 そして、小道より山手には、風情ある自然石で出来た階段がずっと上の方まで続いていた。

(……ほう、此処が終点か。現世に降りたのは、久しぶりよのう。さて、美月殿のお休みになられる処は、何処じゃろうな?)

 三つ目の言葉に、美月は閉じそうになっていた瞼を無理やり開ける。

 明るい、春の日差し――――しかし、その日差しは、既に西へと傾きかけていた。

 それにより、今の時刻は十五時くらい?と当たりをつけた美月。

 現世と異界や狭間の時の流れの違いを知らぬ美月は、当然家を出た当日の十五時と思い込み、もはやそれから三日も過ぎたことも露知らず、一刻も早くクロや祖母の待つ家に帰るため、湊に言われていた研究所とやらに早く行かなければ、と焦る。

 焦って身体を動かそうとするが、依然身体の状態は元には戻らない。
 それどころか、今度は何だかめまいまでしてきて、…………美月は、しょんぼりと三つ目を見上げた。

「ええと、――――研究所?って言っていたから、この道の下にある建物の内のどれかなんじゃないかな?…………お手数をかけちゃって、ごめんね、三つ目さん。悪いけれど、わたし、まだ動けそうにない」

 それに対し、三つ目は首をブンブンと振って、

(剛腕を誇る我にとって、美月殿は羽のようなもの――――何時までも、何処までもお運びいたす故、御気になさらず、どんどんこの三つ目を頼ってくだされ!)

 誇らしげに胸を大きく張った三つ目に対し、周りのあやかし達はブーイングの嵐。

(……一角ばかり、ええ恰好して、ズルいのう)
(わしじゃって、美月様をお運びしたい――――!)
(そうじゃ、そうじゃ!羽のように軽く、花のように愛らしい美月様じゃったら、誰でも喜んでお運びするわい――――!)

 あやかし達は口々に叫び出し、たちまち大騒ぎとなる。

 そこへ、失礼します――――とその場にそぐわぬ鈴の鳴るような声が割って入った。

「山姫様のお言いつけで、お迎えに参りました――」

 そこには、紺の着物姿の三人の若い女性の姿があった。

(おお、そうか、そうか~~。して、美月殿のお休みになられる処は――――?)
「こちらでございます」

 たおやかな白い手が指し示したのは、美月の予想に反し、山手の石階段の上であった。

 お迎えご苦労~と三つ目が声をかけつつ、そちらへ一歩踏み出せば、石階段を踏んだ瞬間から感じ取れる、心地よい清浄なる空気の結界――――思わず、周りのあやかし達からも、おお、と小さく声が上がる。

 それに、ニコリと微笑みながら、先導以外の二人の女性は、それぞれ深山のあやかし達にやさしく話しかける――――

「巫女様の休養なされる社とこの辺り一帯、石階段の所までは繋がっております。皆様、どうやらお疲れの御様子――――どうか、お好きな処にて、お休みくださいませ」

 巫女様に何かありましたら、必ずお分かりになられるよう、この鈴を差し上げますから――と、至れり尽くせりの提案と、それを聞いていた美月の勧めにより、石階段を上るたびに、少しずつ思い思いの場所へとあやかし達は散っていく。

 あるモノは、苔むした岩の影へ入り込み、
 あるモノは、新芽の出始めた樹木へと同化し、
 あるモノは、石階段脇を流れる湧き水の中へと飛び込み、

 どれもかれもが、美月様、お帰りになる前に必ずお声をかけて下され、と言い残して、消えていった。

 長い長い石階段を上るうちに、美月の周りには、三つ目をはじめ人型のあやかし数人を残すのみとなる。

 そして、ついに石階段を上り終わると、石畳の向こうの立派な門扉の奥に、広々とした建物が現れる――――

 門扉の前には、ズラリと其処に住む者らしき者達が並んで待っていた。
 その中で年配の白い着物を着た女性は、お迎えの三人の女性に軽く頷き労った後に、美月達へと向き直り、深々とお辞儀をする。

「――――ようこそいらっしゃいました」

        
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