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置いて行かないで……?!
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「……ところで、君の能力について、二、三尋ねたいことがあるのだが――――」
「――――能力?何の能力についてでしょう?」
きょとんと緑雨理事長を見返す美月は、自らの持つ力については、まだ何の自覚もない。
それもそのはず、美月はこの騒動に巻き込まれるまでは、覚えているかぎりにおいて、全くあやかし事とは無関係に生きてきたのだから…………。
美月の表情からそれを読み取った緑雨理事長は、ほうっとため息を吐いて、質問の方向を変えた。
「……では、今まで君の祖先やその係累者に、神社仏閣に縁があったような話を聞いたことは――――?」
歯切れが悪く、話の着地点のみえない美月は首を傾げ、ふと理事長の問いに既視感を覚える。
…………そうだ。あの時、……テスト前の朝早く、学園のベンチで勉強していた時に会った彼に、同じようなことを聞かれたような――――?
「――――巫女の血筋……?」
確か、そう言われたんだっけ…………?
ぼんやりと記憶を辿っていた美月は、急に血相を変え、目の色の変わった緑雨理事長に両肩をがしっと掴まれ、我に返る。
「――そうなのか?!やはり、星野さんは巫女の血筋なのかね?!」
「ち、違います!わたしも祖母も、全くの無関係者です!ただ、……一度、前にそのようなことを聞かれたことがあったなあ、とふと思い出しただけです」
「……いつ?誰に――――?」
「それは、実力テストの日の朝、偶然出会った、……ええと?」
美月はそこで口ごもった。
……あの時、つらつら~と紹介された筈だが、実は同性で比較的名前の憶えやすかった涙と澪の名前しか、美月の頭には残っていなかった。
あれ程迫力のある美形の名すら覚えられない美月は、年頃の乙女として失格かもしれない……。
けれども、元々人名を覚えるのが苦手な美月のこと、女の子二人の名前を憶えていただけで、上出来だったりする。
「あの、……その、狭間まで助けに来てくれた同学年の方です」
「……秋霖 湊くんか。そういえば、……彼は君のカバンに式を潜ませていたのだったか――――?」
「しき――――?」
「ああ、それは、……」
「いえ、もうそれは結構です。それよりも、……申し訳ないのですが、わたし、家に帰りたいので、交通費をお借り出来ますか?」
いくら家に連絡がしてあったとはいえ、思いがけず一週間も家を留守にしてしまったのだ。
入学取り消しの危機も去り、お腹も満たされ、休息も十分で身軽に動けるようになった今、美月の心を占めるのは、ただただお家に帰りたい、だった。
星野家に関する詳細な報告書を読んでいた緑雨理事長にも、美月の心は手に取るように分かった。分かったのだが、…………
「心配しなくても、君は車で私が家まで送って行こう。だが、……」
そこで、雲行きの怪しいことに気付いた、深山のあやかし達が騒ぎ出す。
(な、何と――!美月殿、今度はどちらへ行かれるのか?)
(我らを置いて?……そ、そんな)
(鬼どもが頼りにならなければ、今度はわしがずっとお傍についておりますから――!)
(何を申す!抜け駆けは厳禁じゃ――!……じゃが、美月様自身が望まれるのならば、仕方あるまい。美月様、我は非っ常にお買い得ですぞ?!)
(あ、これ!)(何を!)(いや、我こそが)
(美月殿!)(美月様!)(美月様~!)
(置いて行かれるのは、イヤじゃああああ~~~!!!)
あっという間にその場はあやかし達がおいおい泣く、愁嘆場に…………。
「…………コレを、どうするつもりかね?」
「――――能力?何の能力についてでしょう?」
きょとんと緑雨理事長を見返す美月は、自らの持つ力については、まだ何の自覚もない。
それもそのはず、美月はこの騒動に巻き込まれるまでは、覚えているかぎりにおいて、全くあやかし事とは無関係に生きてきたのだから…………。
美月の表情からそれを読み取った緑雨理事長は、ほうっとため息を吐いて、質問の方向を変えた。
「……では、今まで君の祖先やその係累者に、神社仏閣に縁があったような話を聞いたことは――――?」
歯切れが悪く、話の着地点のみえない美月は首を傾げ、ふと理事長の問いに既視感を覚える。
…………そうだ。あの時、……テスト前の朝早く、学園のベンチで勉強していた時に会った彼に、同じようなことを聞かれたような――――?
「――――巫女の血筋……?」
確か、そう言われたんだっけ…………?
ぼんやりと記憶を辿っていた美月は、急に血相を変え、目の色の変わった緑雨理事長に両肩をがしっと掴まれ、我に返る。
「――そうなのか?!やはり、星野さんは巫女の血筋なのかね?!」
「ち、違います!わたしも祖母も、全くの無関係者です!ただ、……一度、前にそのようなことを聞かれたことがあったなあ、とふと思い出しただけです」
「……いつ?誰に――――?」
「それは、実力テストの日の朝、偶然出会った、……ええと?」
美月はそこで口ごもった。
……あの時、つらつら~と紹介された筈だが、実は同性で比較的名前の憶えやすかった涙と澪の名前しか、美月の頭には残っていなかった。
あれ程迫力のある美形の名すら覚えられない美月は、年頃の乙女として失格かもしれない……。
けれども、元々人名を覚えるのが苦手な美月のこと、女の子二人の名前を憶えていただけで、上出来だったりする。
「あの、……その、狭間まで助けに来てくれた同学年の方です」
「……秋霖 湊くんか。そういえば、……彼は君のカバンに式を潜ませていたのだったか――――?」
「しき――――?」
「ああ、それは、……」
「いえ、もうそれは結構です。それよりも、……申し訳ないのですが、わたし、家に帰りたいので、交通費をお借り出来ますか?」
いくら家に連絡がしてあったとはいえ、思いがけず一週間も家を留守にしてしまったのだ。
入学取り消しの危機も去り、お腹も満たされ、休息も十分で身軽に動けるようになった今、美月の心を占めるのは、ただただお家に帰りたい、だった。
星野家に関する詳細な報告書を読んでいた緑雨理事長にも、美月の心は手に取るように分かった。分かったのだが、…………
「心配しなくても、君は車で私が家まで送って行こう。だが、……」
そこで、雲行きの怪しいことに気付いた、深山のあやかし達が騒ぎ出す。
(な、何と――!美月殿、今度はどちらへ行かれるのか?)
(我らを置いて?……そ、そんな)
(鬼どもが頼りにならなければ、今度はわしがずっとお傍についておりますから――!)
(何を申す!抜け駆けは厳禁じゃ――!……じゃが、美月様自身が望まれるのならば、仕方あるまい。美月様、我は非っ常にお買い得ですぞ?!)
(あ、これ!)(何を!)(いや、我こそが)
(美月殿!)(美月様!)(美月様~!)
(置いて行かれるのは、イヤじゃああああ~~~!!!)
あっという間にその場はあやかし達がおいおい泣く、愁嘆場に…………。
「…………コレを、どうするつもりかね?」
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