(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

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あやかし達の嘆願

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 突然起こったあやかし達の愁嘆場に、美月は唖然とする……。

「ね、……そんなに泣かないで?」
(泣きまする――!美月様が、僕らを置いていくなんて……)
(えーん)(わ~ん)(うおぉぉ~ん!)
「…………置いていくなんて、大げさな……ちょっと、お家に帰るだけだよ?」

 美月の言葉にがぁんと、一様にショックを受けた表情で見つめるあやかし達……。
 それを見かねて山姫は、美月とあやかし達の間に割って入った。

「まあまあ、美月殿の気持ちも分かるが、このモノ達にはこのモノ達の事情があってだな――――そう言うてやるな。……このモノ達にとって、美月殿と離れることは、ちょっと……どころではなく、死活問題なのじゃからな」

 その思いがけない言葉に、美月は驚く。

「死活問題?!……どうしてですか?」
「……それは、な。このモノ達が望み、それに美月殿が応えた――縁が結ばれたからじゃ」
「……縁?……結ばれた?」

 美月の脳裏に、異界で項垂れた霖雨教師の姿が浮かぶ――――確か、先生も同じようなことを…………?
 考え込む美月に向かって、山姫はなおも言葉を続ける。

「こちらの現世と違い、異界では言葉の持つ力が重い――――まして、己を示す己のみの固有の名は、それなりの力を持つ。まして、それが稀なる能力を持つ美月殿の名じゃ。そして、ソレを異界で・・・惜しげもなく、其処なるあやかし達に名を呼ぶ許可を与えた。こ奴らも常の状態ならば、もう少し抑えが効くはずじゃ。………………多分。じゃが、……あの濃い闇に侵されたモノほど、今、美月殿と離れるのは危ういだろうよ。あれらが自我を保って動いておられるのは、美月殿のおかげじゃからな」

 山姫の言葉を聞いて、美月の腕の中のツキは項垂れ、力なく小さくミィーと鳴く。
 それに対し、美月は反射的にツキの頭をやさしく撫でる――――山姫はそれを瞳を潤ませてじっと見つめ、そして、ゆっくりと語りかけながら、ツキへと手を伸ばした。

「…………永遠に失われたと思っていた、山の子よ。そのように、しょげるな。……例え、闇落ちしていたとしても、その身が黒く染まっていたとしても、…………其方に会えて、妾は嬉しい――――!」

 自分めがけて近づいてくる山姫の白い左手に、初めは警戒していたツキだったが、慈愛に満ち溢れたその声、眼差し、表情に毒気を抜かれ、やがて大人しくその小さな頭を撫でられる――――そのことが余程嬉しかったのか、山姫は目を細めて本当に嬉しそうに微笑む。
 そして、山姫は何事かを呟きながら、ゆっくりと愛情を込めてツキの頭を撫でていくと――――段々とツキの身体から、少しずつ黒色が斑に抜け、山姫の白い左手へと移っていく…………

「や、山姫さん……?!何をしているの!」

 それに気づいた美月が驚き、声を上げると、山姫は……妾では、此処までかの、と寂しそうに笑い、すっと其処から身を離した。
 山姫の左手は、肘の辺りまで薄い灰色に染まっている。
 そして、その代わりにツキは――――漆黒であった身体に縞模様の茶が混じるようになっている。

「山姫さん?ツキ?…………これは、一体――――?」

 困惑の表情で見つめる美月に、山姫は穏やかに話しかけた。

「…………と、まあこの様にじゃな、モノ同士でも多少は闇を引き受けることは出来る。まあ、同意あってのことじゃが。ただそれにも、当然限度や制限はある。じゃがな~~美月殿の力はな~~…………そういうあやつらとて、大人しく縄張りの異界にて癒しの眠りにつけば、いつかは浄化され目覚めるのじゃが…………」
(そ、それは――!そうなのじゃが…………じゃが、じゃが)
(そうじゃ、そうじゃ――!それは、本当に本っ当の、…………)
(最後の最後の最っ後の手段なのじゃあぁぁーーー!!)

 どうして……?と小さく呟いた美月に取り縋らんばかりに、周りを取り囲み嘆願し始める深山のあやかし達。
 その中には、男泣きにうぉんうぉんと泣いている、一角鬼の三つ目も居た……。

(だって、だって…………!癒しの眠りに入ったら――――)
(いつ目覚めるか、全く分からんのじゃーーー!)
(じゃから、もし、……もしも目覚めて――――)
(美月殿が)(美月様が)
(居らんかったら……、と思うと)
(恐ろしゅうて……!)(悲しゅうて……!)
(とてもとても、おちおちと眠っておれんーーー!)

     
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