(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

文字の大きさ
70 / 80

落ちちゃう、一族 1

しおりを挟む
 緑雨理事長はぼんやりと車の窓から外の景色を眺め、ふう~っと大きく息を吐いた。

 …………何故、……何故このような事態になったのだ。
 私のプレゼンは、どこで間違ったのだ…………!

 美月への説得の比較的早いうちに、この騒動についての口止めが成立したことは、喜ばしいことだった。
 けれども、……肝心要の、特別寮への入寮については、どれだけ緑雨理事長が言葉を尽くそうにも、どれだけ条件を引き上げようとも、決して美月が了承することはなかった。

 美月の境遇についての報告書から、それが容易でないことは予測済。
 ならば、……心は多少痛むが、少々手荒な説得、若しくは甘言の類になっても、と心を入れ替え、本腰を入れて説得に当たろうとした途端、まるでそれを察知したかのような、山姫らの参戦。

 結果、緑雨理事長の思惑は外れ、最初の口止め以外何の成果も上げられなかった……。

 ああ、これで、……次の会議でも、つるし上げは確実だな…………。

 遠い目でふっと自嘲した緑雨理事長は、ふと思い立って美月の自宅へと車の中から電話をする。
 すると、ワンコールで祖母らしき女性が出たので、実力テストが終了し、今そちらへ車で送る途中の旨を手短に伝え、通話を終了させた。

 心底安堵し、孫の帰宅を心から喜んでいる女性のやわらかな声を聴き、緑雨理事長は少しだけ気が晴れる。

 ……今思えば、あの女性から愛孫を取り上げるような、そんな行いをせずに良かったのかもしれない。

 そう張りつめていた心が緩めば、車の揺れも心地よく感じられ、いつしか緑雨理事長はうとうとと眠りの中へと落ちて行った――――




 「住」グループ渾身のモノ対応燃料電池自動車は、流石の技術力で水素だけで動くとは思えない程、快調に美月の家近くの山を登っていく――――

「おお……!「住」ぐるーぷもなかなかやりおる!この車は、周りを傷つけぬな~~。妾も乗っていて快適だし、嫌な臭いも吐き出さん!善き事じゃ」
「そうでしょう、そうでしょう!この車は、環境にやさしいですからね。貴重な食材達の今後を守るためにも、環境問題の対策は不可欠。今後ますますの研究、発展、普及は欠かせません!」

 得意げに語りながらも、大森チーフの運転は全く危なげない。
 山道の急なカーブも見事なハンドル操作を行い、安定した運転で登って行った。
 すると、間もなく美月の家から最も最寄りのバス停が見えてくる。

「あ……!そこのバス停が、家から最も近いところです。……そこからは、右手にある舗装されていない小道を上がっていくのですけど」
「了解!お社とこの辺りとの道を繋ぐのは、帰りでも良いでしょう。このまま、君のお家までお届けしますよ?」
「……ありがとうございます!」

 段々と近づいてくる我が家を思って、思わず顔をほころばせる美月。

「……美月殿のお住まいも、この様な山じゃったか。なかなか良いところじゃな」
(深山、とまではゆかぬが、……本当に良きところ。空気も澄み、山も生気に満ちあふれておるわ……!)

 興味深げに窓から景色を見渡し、感動したように誉めてくれた二人に、美月は嬉しそうに答える。

「そうでしょう――?!わたし、この山が大好き!……だから、将来は大学の森林科学科で学び、地方公務員になって、ここや他の森林を守りたいの――!」

 目をきらきらと輝かせながら、将来の夢を語る美月を、うんうんと頷きながら優し気に見守る両隣。
 それに対し、ちょっと首を傾げながら黙り込む大森チーフとざわっと動揺の走る後ろ座席のあやかし達、そして、一人夢の中の緑雨理事長……。

(おい、良いのか?……起こさずに)
(しっ……!ようやく少し眠れたのじゃ。……少々、報告が遅れたところで、何ともなるまい)
(……不憫な坊よのう)

 そうしているうちに、小道の先に山に溶け込むような、木のぬくもりあふれる古民家風の家が現れた。
 家の前には、年配の女性と黒い大きな犬がウロウロと歩き回っている。

「クロ~~!!おばあちゃ~~ん!」

 美月は車が止まるや否や、すぐに飛び出す。

「美月ちゃん……!お帰りなさい」

 わぉん、とクロは尻尾を千切れんばかりに振って、美月の側から離れない。
 美月はパフっとクロに抱きつき、ツキを抱えていない方の手でクロをわしわしと撫で、小声で話しかける。

「……クロ、帰るのが遅くなって、ごめんね!でも、……留守中、おばあちゃんとお家を守っていてくれて、ありがとう」





しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...