71 / 80
落ちちゃう、一族 2
しおりを挟む
その時、美月の腕で微睡んでいたツキが目覚め、近接するクロに対し怯えたようにミィーと鳴く。
美月は慌てて大丈夫だよ、とツキをあやしながらも、クロと祖母に見えるように、ツキを差し出した。
「おばあちゃん、ただいま!……帰るの、結局遅くなっちゃって、ごめんね。この子は、ツキ。あの、色々あって……この子をツキって名付けたの。――――おばあちゃん、あのね、わたし、絶対にきちんとツキの面倒をみるから、お願いします。…………ここのお家で、ツキもこれから一緒に住んでも良い?」
美月の手の中の愛らしい子ネコと、緊張気味に一生懸命話す美月の様子に、祖母珠子はふっと微笑み、もちろん良いわよ、と言いかけた途端、あることに気付くと取り乱したように美月を凝視する。
「み、美月ちゃん!……あの眼鏡は?眼鏡をどうしたの?!」
ただならぬ祖母の様子に首を傾げながらも、美月は、ん、実は壊れちゃったの……残念だけど、と軽く流し、車から降りてきた者達へと向き直る。
それを見て、祖母もはっと姿勢を伸ばし、理事長や大森チーフに向かって頭を下げた。
「……この様な所まで、孫美月を送って頂き、本当にありがとうございました――!」
心を込めた珠子の礼に、大森チーフはいえいえ~これしきの事、何でもありません、と如才なく返したのに対し、緑雨理事長は雷にうたれたかのように、ぶるぶると細かく身を震わせ、その場からピクリとも動かない……。
その様子を後ろで見守っていた理事長の旧友達は、ま、まさか――?!とその状況の心当たりに慄いた。
(おい、これはひょっとして、……?)
(お、落ちたのか――?!今?此処で――?)
(該当者は――――お一人しか……!)
(………………守備範囲、広すぎだろう)
それを聴いた大森チーフは顔色を変え、反応を返さない緑雨理事長を困ったように窺う珠子に対し、殊更にこやかに話しかけながら、こっそりと思いっきり理事長に肘鉄を食らわせる……。
「こちらは、星野さん、いや美月さんが通う五月雨学園の理事長です。いや~彼は、なかなかハードな一週間を送ったところでしてね~~先程まで車の中で、如何やら転寝していたようでして、……いやはや、どうもまだ、ボーっとしているようですな!はっはっはっ!」
「――――まあ!……そんなお忙しい時に、わざわざ美月のためにご足労いただき申し訳ございませんでした」
物理的に大森チーフから強い刺激を受け、ようやく再起動を果たした緑雨理事長は、心底恐縮した珠子の様子に、がばっと身を乗り出し、否定する。
「いえいえいえ、そんなことは決してありません!かえって良い気分転換にもなりましたし…………」
そのまま、饒舌に祖母に語りかけている理事長を見ていた美月に、そっと近づいてきた山姫と三つ目が合図を送った。
それに軽く頷いた美月は、朗らかに祖母に話しかける。
「――おばあちゃん!わたしね、部屋に今日提出分の書類を置いてあるから、ちょっと取りに行ってくるね!」
「あらあら――私が取ってきましょうか?」
「ううん。……ちょっと分かりにくいところに置いちゃったけら、すぐぱぱっと自分で部屋まで行って、取って来る!」
「分かったわ…………本当に申し訳ありません。お忙しいところを――――」
「いやいや、本当にお気遣いなく…………美月さん、慌てないで良いので、ゆっくり探してきなさい」
「理事長さん、ありがとうございます。……それでは、ちょっと行ってきますね」
軽く会釈をした後、踵を返し、クロとツキと共に、自分の部屋を目指す美月。
その後を追う、山姫と三つ目。
後ろで会話に盛り上がる三人をこっそり確認した美月は、小声で二人に話しかける。
「山姫さん、こちらです。……例の件、よろしくお願いしますね?」
「確かに承った。大船に乗った気でおるが良い!」
ふんふんと上機嫌なまま、美月に続き玄関を通り抜けようとした山姫と三つ目だったが――――
パシーーーーーーーーン!!ガタガタガタッーーーーー!
突然、家中に鋭いラップ音のような家鳴りが走り、二人はその場から外へと飛びのいた。
美月は慌てて大丈夫だよ、とツキをあやしながらも、クロと祖母に見えるように、ツキを差し出した。
「おばあちゃん、ただいま!……帰るの、結局遅くなっちゃって、ごめんね。この子は、ツキ。あの、色々あって……この子をツキって名付けたの。――――おばあちゃん、あのね、わたし、絶対にきちんとツキの面倒をみるから、お願いします。…………ここのお家で、ツキもこれから一緒に住んでも良い?」
美月の手の中の愛らしい子ネコと、緊張気味に一生懸命話す美月の様子に、祖母珠子はふっと微笑み、もちろん良いわよ、と言いかけた途端、あることに気付くと取り乱したように美月を凝視する。
「み、美月ちゃん!……あの眼鏡は?眼鏡をどうしたの?!」
ただならぬ祖母の様子に首を傾げながらも、美月は、ん、実は壊れちゃったの……残念だけど、と軽く流し、車から降りてきた者達へと向き直る。
それを見て、祖母もはっと姿勢を伸ばし、理事長や大森チーフに向かって頭を下げた。
「……この様な所まで、孫美月を送って頂き、本当にありがとうございました――!」
心を込めた珠子の礼に、大森チーフはいえいえ~これしきの事、何でもありません、と如才なく返したのに対し、緑雨理事長は雷にうたれたかのように、ぶるぶると細かく身を震わせ、その場からピクリとも動かない……。
その様子を後ろで見守っていた理事長の旧友達は、ま、まさか――?!とその状況の心当たりに慄いた。
(おい、これはひょっとして、……?)
(お、落ちたのか――?!今?此処で――?)
(該当者は――――お一人しか……!)
(………………守備範囲、広すぎだろう)
それを聴いた大森チーフは顔色を変え、反応を返さない緑雨理事長を困ったように窺う珠子に対し、殊更にこやかに話しかけながら、こっそりと思いっきり理事長に肘鉄を食らわせる……。
「こちらは、星野さん、いや美月さんが通う五月雨学園の理事長です。いや~彼は、なかなかハードな一週間を送ったところでしてね~~先程まで車の中で、如何やら転寝していたようでして、……いやはや、どうもまだ、ボーっとしているようですな!はっはっはっ!」
「――――まあ!……そんなお忙しい時に、わざわざ美月のためにご足労いただき申し訳ございませんでした」
物理的に大森チーフから強い刺激を受け、ようやく再起動を果たした緑雨理事長は、心底恐縮した珠子の様子に、がばっと身を乗り出し、否定する。
「いえいえいえ、そんなことは決してありません!かえって良い気分転換にもなりましたし…………」
そのまま、饒舌に祖母に語りかけている理事長を見ていた美月に、そっと近づいてきた山姫と三つ目が合図を送った。
それに軽く頷いた美月は、朗らかに祖母に話しかける。
「――おばあちゃん!わたしね、部屋に今日提出分の書類を置いてあるから、ちょっと取りに行ってくるね!」
「あらあら――私が取ってきましょうか?」
「ううん。……ちょっと分かりにくいところに置いちゃったけら、すぐぱぱっと自分で部屋まで行って、取って来る!」
「分かったわ…………本当に申し訳ありません。お忙しいところを――――」
「いやいや、本当にお気遣いなく…………美月さん、慌てないで良いので、ゆっくり探してきなさい」
「理事長さん、ありがとうございます。……それでは、ちょっと行ってきますね」
軽く会釈をした後、踵を返し、クロとツキと共に、自分の部屋を目指す美月。
その後を追う、山姫と三つ目。
後ろで会話に盛り上がる三人をこっそり確認した美月は、小声で二人に話しかける。
「山姫さん、こちらです。……例の件、よろしくお願いしますね?」
「確かに承った。大船に乗った気でおるが良い!」
ふんふんと上機嫌なまま、美月に続き玄関を通り抜けようとした山姫と三つ目だったが――――
パシーーーーーーーーン!!ガタガタガタッーーーーー!
突然、家中に鋭いラップ音のような家鳴りが走り、二人はその場から外へと飛びのいた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…
senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。
地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。
クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。
彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。
しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。
悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。
――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。
謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。
ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。
この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。
陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる