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落ちちゃう、一族 1
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緑雨理事長はぼんやりと車の窓から外の景色を眺め、ふう~っと大きく息を吐いた。
…………何故、……何故このような事態になったのだ。
私のプレゼンは、どこで間違ったのだ…………!
美月への説得の比較的早いうちに、この騒動についての口止めが成立したことは、喜ばしいことだった。
けれども、……肝心要の、特別寮への入寮については、どれだけ緑雨理事長が言葉を尽くそうにも、どれだけ条件を引き上げようとも、決して美月が了承することはなかった。
美月の境遇についての報告書から、それが容易でないことは予測済。
ならば、……心は多少痛むが、少々手荒な説得、若しくは甘言の類になっても、と心を入れ替え、本腰を入れて説得に当たろうとした途端、まるでそれを察知したかのような、山姫らの参戦。
結果、緑雨理事長の思惑は外れ、最初の口止め以外何の成果も上げられなかった……。
ああ、これで、……次の会議でも、つるし上げは確実だな…………。
遠い目でふっと自嘲した緑雨理事長は、ふと思い立って美月の自宅へと車の中から電話をする。
すると、ワンコールで祖母らしき女性が出たので、実力テストが終了し、今そちらへ車で送る途中の旨を手短に伝え、通話を終了させた。
心底安堵し、孫の帰宅を心から喜んでいる女性のやわらかな声を聴き、緑雨理事長は少しだけ気が晴れる。
……今思えば、あの女性から愛孫を取り上げるような、そんな行いをせずに良かったのかもしれない。
そう張りつめていた心が緩めば、車の揺れも心地よく感じられ、いつしか緑雨理事長はうとうとと眠りの中へと落ちて行った――――
「住」グループ渾身のモノ対応燃料電池自動車は、流石の技術力で水素だけで動くとは思えない程、快調に美月の家近くの山を登っていく――――
「おお……!「住」ぐるーぷもなかなかやりおる!この車は、周りを傷つけぬな~~。妾も乗っていて快適だし、嫌な臭いも吐き出さん!善き事じゃ」
「そうでしょう、そうでしょう!この車は、環境にやさしいですからね。貴重な食材達の今後を守るためにも、環境問題の対策は不可欠。今後ますますの研究、発展、普及は欠かせません!」
得意げに語りながらも、大森チーフの運転は全く危なげない。
山道の急なカーブも見事なハンドル操作を行い、安定した運転で登って行った。
すると、間もなく美月の家から最も最寄りのバス停が見えてくる。
「あ……!そこのバス停が、家から最も近いところです。……そこからは、右手にある舗装されていない小道を上がっていくのですけど」
「了解!お社とこの辺りとの道を繋ぐのは、帰りでも良いでしょう。このまま、君のお家までお届けしますよ?」
「……ありがとうございます!」
段々と近づいてくる我が家を思って、思わず顔をほころばせる美月。
「……美月殿のお住まいも、この様な山じゃったか。なかなか良いところじゃな」
(深山、とまではゆかぬが、……本当に良きところ。空気も澄み、山も生気に満ちあふれておるわ……!)
興味深げに窓から景色を見渡し、感動したように誉めてくれた二人に、美月は嬉しそうに答える。
「そうでしょう――?!わたし、この山が大好き!……だから、将来は大学の森林科学科で学び、地方公務員になって、ここや他の森林を守りたいの――!」
目をきらきらと輝かせながら、将来の夢を語る美月を、うんうんと頷きながら優し気に見守る両隣。
それに対し、ちょっと首を傾げながら黙り込む大森チーフとざわっと動揺の走る後ろ座席のあやかし達、そして、一人夢の中の緑雨理事長……。
(おい、良いのか?……起こさずに)
(しっ……!ようやく少し眠れたのじゃ。……少々、報告が遅れたところで、何ともなるまい)
(……不憫な坊よのう)
そうしているうちに、小道の先に山に溶け込むような、木のぬくもりあふれる古民家風の家が現れた。
家の前には、年配の女性と黒い大きな犬がウロウロと歩き回っている。
「クロ~~!!おばあちゃ~~ん!」
美月は車が止まるや否や、すぐに飛び出す。
「美月ちゃん……!お帰りなさい」
わぉん、とクロは尻尾を千切れんばかりに振って、美月の側から離れない。
美月はパフっとクロに抱きつき、ツキを抱えていない方の手でクロをわしわしと撫で、小声で話しかける。
「……クロ、帰るのが遅くなって、ごめんね!でも、……留守中、おばあちゃんとお家を守っていてくれて、ありがとう」
…………何故、……何故このような事態になったのだ。
私のプレゼンは、どこで間違ったのだ…………!
美月への説得の比較的早いうちに、この騒動についての口止めが成立したことは、喜ばしいことだった。
けれども、……肝心要の、特別寮への入寮については、どれだけ緑雨理事長が言葉を尽くそうにも、どれだけ条件を引き上げようとも、決して美月が了承することはなかった。
美月の境遇についての報告書から、それが容易でないことは予測済。
ならば、……心は多少痛むが、少々手荒な説得、若しくは甘言の類になっても、と心を入れ替え、本腰を入れて説得に当たろうとした途端、まるでそれを察知したかのような、山姫らの参戦。
結果、緑雨理事長の思惑は外れ、最初の口止め以外何の成果も上げられなかった……。
ああ、これで、……次の会議でも、つるし上げは確実だな…………。
遠い目でふっと自嘲した緑雨理事長は、ふと思い立って美月の自宅へと車の中から電話をする。
すると、ワンコールで祖母らしき女性が出たので、実力テストが終了し、今そちらへ車で送る途中の旨を手短に伝え、通話を終了させた。
心底安堵し、孫の帰宅を心から喜んでいる女性のやわらかな声を聴き、緑雨理事長は少しだけ気が晴れる。
……今思えば、あの女性から愛孫を取り上げるような、そんな行いをせずに良かったのかもしれない。
そう張りつめていた心が緩めば、車の揺れも心地よく感じられ、いつしか緑雨理事長はうとうとと眠りの中へと落ちて行った――――
「住」グループ渾身のモノ対応燃料電池自動車は、流石の技術力で水素だけで動くとは思えない程、快調に美月の家近くの山を登っていく――――
「おお……!「住」ぐるーぷもなかなかやりおる!この車は、周りを傷つけぬな~~。妾も乗っていて快適だし、嫌な臭いも吐き出さん!善き事じゃ」
「そうでしょう、そうでしょう!この車は、環境にやさしいですからね。貴重な食材達の今後を守るためにも、環境問題の対策は不可欠。今後ますますの研究、発展、普及は欠かせません!」
得意げに語りながらも、大森チーフの運転は全く危なげない。
山道の急なカーブも見事なハンドル操作を行い、安定した運転で登って行った。
すると、間もなく美月の家から最も最寄りのバス停が見えてくる。
「あ……!そこのバス停が、家から最も近いところです。……そこからは、右手にある舗装されていない小道を上がっていくのですけど」
「了解!お社とこの辺りとの道を繋ぐのは、帰りでも良いでしょう。このまま、君のお家までお届けしますよ?」
「……ありがとうございます!」
段々と近づいてくる我が家を思って、思わず顔をほころばせる美月。
「……美月殿のお住まいも、この様な山じゃったか。なかなか良いところじゃな」
(深山、とまではゆかぬが、……本当に良きところ。空気も澄み、山も生気に満ちあふれておるわ……!)
興味深げに窓から景色を見渡し、感動したように誉めてくれた二人に、美月は嬉しそうに答える。
「そうでしょう――?!わたし、この山が大好き!……だから、将来は大学の森林科学科で学び、地方公務員になって、ここや他の森林を守りたいの――!」
目をきらきらと輝かせながら、将来の夢を語る美月を、うんうんと頷きながら優し気に見守る両隣。
それに対し、ちょっと首を傾げながら黙り込む大森チーフとざわっと動揺の走る後ろ座席のあやかし達、そして、一人夢の中の緑雨理事長……。
(おい、良いのか?……起こさずに)
(しっ……!ようやく少し眠れたのじゃ。……少々、報告が遅れたところで、何ともなるまい)
(……不憫な坊よのう)
そうしているうちに、小道の先に山に溶け込むような、木のぬくもりあふれる古民家風の家が現れた。
家の前には、年配の女性と黒い大きな犬がウロウロと歩き回っている。
「クロ~~!!おばあちゃ~~ん!」
美月は車が止まるや否や、すぐに飛び出す。
「美月ちゃん……!お帰りなさい」
わぉん、とクロは尻尾を千切れんばかりに振って、美月の側から離れない。
美月はパフっとクロに抱きつき、ツキを抱えていない方の手でクロをわしわしと撫で、小声で話しかける。
「……クロ、帰るのが遅くなって、ごめんね!でも、……留守中、おばあちゃんとお家を守っていてくれて、ありがとう」
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