結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ

文字の大きさ
44 / 69
第三章~真実~

なくなった繋がり

しおりを挟む
だって、学くんの言葉はいつでも暖かかった。
嘘をついてるようには思えなかった。



「……っ、スマホ返して」



諦めるなんてできなくて。
燿くんの手からスマホを奪い取る。



「ちとせ、もう20回もかけてる。やめろ」


「出てくれないんだもん」



そんなにかけてるつもりはなかった。
でも、学くんと話したくて。
繋がりがほしくて、必死になっていた。



「最後にしろ」


燿くんがはぁっとため息をつく。



「わかった」



さっきまでと同じように、耳にスマホを当てて学くんに電話をする。


──おかけになった電話は……



「電源切れてる……」


「わかったろ?あいつはお前と付き合うつもりなんてないんだよ」


「……っ」



どうしてだろう。
あんなに、優しくあたしを受け止めてくれていたのに。



「ちとせ」



力が抜けて、その場に座りこむあたしを燿くんが同じようにしゃがんで抱きしめる。



「なんでだろう……やっと見つけたと思ったのに」


「うん」



あたしを抱きしめている手は、ポンポンと背中をさすってくれる。



「こんなに辛いこともうないと思ってた」



あたしの人生は辛いことの連続だったから。
親戚の家にいたころの苦しみよりうえにくるものなんてないと思っていた。



「わかったから、もう喋るな。泣きたいだけ泣けばいいから」



燿くんの言葉に次から次へとボロボロと涙が落ちて止まらない。



「燿くんはいつもあたしの味方だね」


「バカ、当たり前だろ。俺を誰だと思ってるんだよ」



ドヤ顔で言う、燿くんにぷっと吹き出してしまう。



「やっと笑った。お前は笑ってるのが一番なんだから。泣くな」


「うん」


「でも、溜め込むなよ。お前は溜め込む癖があるから。どうしようもなくなる前に俺の前で泣け」



燿くんはいつだってこうだ。
ずっとあたしを見守ってくれている。



「ありがとう、燿くん」



燿くんがいたから、この辛い失恋からも立ち直ることができる。
すぐには無理だけど。
燿くんのおかげであたしは前を見れるんだ。


結局、あれから1度だけ学くんに電話をしてみた。
でも、学くんの電話番号はすでに使われていないものになっていて。
もう連絡をとる手段もなかった。

それから1年と少したって、あたしも森ノ宮を卒業してしまったし、学くんとあたしを繋げるものは何ももうなかった。

森ノ宮にいる間は、もしかしたら来てくれるかもなんて思ったりもしてた。
未練たらしいのかもしれないけど、あんなに人を好きになったことはなかったから。

だから、もう一生会うことはないと思っていた相手だった。
記憶の片隅でずっと生き続ける。ずっと好きな人。

だから、悲しい思い出じゃなくて、いい思い出として残しておきたくて、プリクラはずっと手帳に挟んでおいた。


プリクラをたまに見て、思い出す。
それ以上もそれ以下もないはずだった。

あの日までは。



「久しぶりだね、ちとせちゃん」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。 絶対に離婚届に判なんて押さないからな」 既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。 まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。 紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転! 純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。 離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。 それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。 このままでは紘希の弱点になる。 わかっているけれど……。 瑞木純華 みずきすみか 28 イベントデザイン部係長 姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点 おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち 後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない 恋に関しては夢見がち × 矢崎紘希 やざきひろき 28 営業部課長 一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長 サバサバした爽やかくん 実体は押しが強くて粘着質 秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...