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最終章~ずっと一緒に
好きだ
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「お前を使って、母さんの敵を取るつもりだった」
一通り、学くんに起きたこれまでの出来事を聞いた。
ゆっくりと、誠実に学くんは話してくれた。
そして、あたしを見上げる学くんの表情は辛そうで見ていられなかった。
「……っ」
なんて言ったらいいかなんて、わからない。
学くんの身に起こったことを想像してみても、やっぱり自分が経験したわけではないから同じ気持ちになることはできない。
あたしもお母さんを亡くして、お父さんは元々いないと言われていて。
他に兄弟姉妹なんていないと思ってた。
自分は天涯孤独のつもりでいた。
学くんは、家族はいた。
でも、家族がいるからと言って幸せなわけではない。
少なくとも、学くんは幸せだと思っていない。
「ちとせ」
向かいにしゃがんでいる、学くんがあたしの手に触れる。
「学くん……」
「敵を取るなんて、無理だったんだ」
深く息を吐く。
「無理?」
「うん。あの時も今も、1度も嘘でお前に気持ちを言ったことはない」
「……っ」
触れるだけだった手は、ぎゅっと握られて。
真剣な眼差しの学くんに、心臓がうるさくならないはずはなかった。
「ちとせが、好きだ」
ずっと欲しかった言葉。
2度と言ってもらえないと思ってた言葉。
その言葉に胸がぎゅうっと締め付けられる。
「ちゃんと、ちとせを幸せにできんの?」
ずっと横で見ていたタマが、学くんの腕を引く。
「するよ。絶対。もう、傷つけない」
「よく言うよ。散々傷つけておいて」
「なんか、タマ……お兄ちゃんみたい」
ついさっきまで、底抜けに明るかったタマ。
いま、こうして学くんに話してるタマはすっごくお兄ちゃんみたいだ。
「いや、俺。兄貴なんで」
自分のことを〝兄貴〟だというタマはどこか恥ずかしそうだった。
「ちとせ、俺のとこに帰ってきてくれるよな?」
いつも俺様で。
いつだって自信満々で、余裕があって。
そんな彼がいま、不安げな色を瞳に映してる。
「でも……」
ずっと学くんの元に戻りたいと思っている。
でも、そんなにすんなり戻ってもいいものかと思ってしまう。
学くんが嘘をついてるようには思えない。
でも、不安な気持ちがないとはいえない。
「お前がいないとダメだ」
「……っ」
あたしの両肩を掴んで、真剣な瞳であたしを見つめる。
ドキドキと胸が騒ぐ。
「なあ、俺のこともう好きじゃない?」
不安げな表情を浮かべながら、あたしの腕を引っ張って自分へと引き寄せる。
「……好き」
嘘なんてつけない。
この気持ちに嘘なんてつけない。
だって、ずっとずっとあたしは学くんのことが好きだから。
はじめて見たときからずっと大好きなんだ。
「なら、帰ってこい」
力強く言われ、ぎゅうっと抱きしめられる。
✱✱✱
「じゃあな、環」
「おお。ちとせ、傷つけられたら連絡しろよ」
「はは、うん」
全然カバンから出してなくて、片付けが簡単だったあたしと荷物。
学くんがあたしの部屋から持ち出して車に乗せたので、結城さんに挨拶をしたりしてから車にあたしも向かった。
「環はまたどっか行くのか?」
「うーん。そろそろ落ち着こうかなーとか考えてはいるけどね。妹も近くにいることだし」
「親父のとこ行けよ。待ってるぞあの人」
あたしは知らない二人が家族として生きてきた歳月。
お父さんのこともタマのことも嫌いだったっていうけど、話を聞く限りそうは感じられなかった。
「俺、普通に働ける気しねーもんな」
「まぁ、環が働いてるとこはたしかに想像つかねーな」
おかしそうに笑ってる学くん。
「タマはどうやって生活してるの?」
ふと、疑問に思ったことを聞く。
この1週間、シェアハウスで見てきたタマはどう見ても働いてるようには見えなかったから。
一通り、学くんに起きたこれまでの出来事を聞いた。
ゆっくりと、誠実に学くんは話してくれた。
そして、あたしを見上げる学くんの表情は辛そうで見ていられなかった。
「……っ」
なんて言ったらいいかなんて、わからない。
学くんの身に起こったことを想像してみても、やっぱり自分が経験したわけではないから同じ気持ちになることはできない。
あたしもお母さんを亡くして、お父さんは元々いないと言われていて。
他に兄弟姉妹なんていないと思ってた。
自分は天涯孤独のつもりでいた。
学くんは、家族はいた。
でも、家族がいるからと言って幸せなわけではない。
少なくとも、学くんは幸せだと思っていない。
「ちとせ」
向かいにしゃがんでいる、学くんがあたしの手に触れる。
「学くん……」
「敵を取るなんて、無理だったんだ」
深く息を吐く。
「無理?」
「うん。あの時も今も、1度も嘘でお前に気持ちを言ったことはない」
「……っ」
触れるだけだった手は、ぎゅっと握られて。
真剣な眼差しの学くんに、心臓がうるさくならないはずはなかった。
「ちとせが、好きだ」
ずっと欲しかった言葉。
2度と言ってもらえないと思ってた言葉。
その言葉に胸がぎゅうっと締め付けられる。
「ちゃんと、ちとせを幸せにできんの?」
ずっと横で見ていたタマが、学くんの腕を引く。
「するよ。絶対。もう、傷つけない」
「よく言うよ。散々傷つけておいて」
「なんか、タマ……お兄ちゃんみたい」
ついさっきまで、底抜けに明るかったタマ。
いま、こうして学くんに話してるタマはすっごくお兄ちゃんみたいだ。
「いや、俺。兄貴なんで」
自分のことを〝兄貴〟だというタマはどこか恥ずかしそうだった。
「ちとせ、俺のとこに帰ってきてくれるよな?」
いつも俺様で。
いつだって自信満々で、余裕があって。
そんな彼がいま、不安げな色を瞳に映してる。
「でも……」
ずっと学くんの元に戻りたいと思っている。
でも、そんなにすんなり戻ってもいいものかと思ってしまう。
学くんが嘘をついてるようには思えない。
でも、不安な気持ちがないとはいえない。
「お前がいないとダメだ」
「……っ」
あたしの両肩を掴んで、真剣な瞳であたしを見つめる。
ドキドキと胸が騒ぐ。
「なあ、俺のこともう好きじゃない?」
不安げな表情を浮かべながら、あたしの腕を引っ張って自分へと引き寄せる。
「……好き」
嘘なんてつけない。
この気持ちに嘘なんてつけない。
だって、ずっとずっとあたしは学くんのことが好きだから。
はじめて見たときからずっと大好きなんだ。
「なら、帰ってこい」
力強く言われ、ぎゅうっと抱きしめられる。
✱✱✱
「じゃあな、環」
「おお。ちとせ、傷つけられたら連絡しろよ」
「はは、うん」
全然カバンから出してなくて、片付けが簡単だったあたしと荷物。
学くんがあたしの部屋から持ち出して車に乗せたので、結城さんに挨拶をしたりしてから車にあたしも向かった。
「環はまたどっか行くのか?」
「うーん。そろそろ落ち着こうかなーとか考えてはいるけどね。妹も近くにいることだし」
「親父のとこ行けよ。待ってるぞあの人」
あたしは知らない二人が家族として生きてきた歳月。
お父さんのこともタマのことも嫌いだったっていうけど、話を聞く限りそうは感じられなかった。
「俺、普通に働ける気しねーもんな」
「まぁ、環が働いてるとこはたしかに想像つかねーな」
おかしそうに笑ってる学くん。
「タマはどうやって生活してるの?」
ふと、疑問に思ったことを聞く。
この1週間、シェアハウスで見てきたタマはどう見ても働いてるようには見えなかったから。
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