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最終章~ずっと一緒に
ずっと好きでいてくれて、ありがとう
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「環には甘い親父の金で暮らしてるよ」
「え!?」
学くんの言葉に驚いて、大きな声が出てしまう。
「うるせーな。父さんのとこ行ってちゃんとするって。これからは」
「はいはい。じゃあ行くぞ」
エンジンをかけて、ハンドル握る。
「じゃあまたな」
「バイバイ」
あたしも学くんもタマに手を振って、車は発車した。
「はぁーよかった」
少しだけ走らせて、学くんは車を路肩に停めた。
「学くん?」
このまま家に行くもんだも思っていたから、びっくりして首を傾げる。
「もう戻ってきてくれないかと思ってさ」
膝に置いていたあたしの手をぎゅっと握る。
「……学くん」
「もう1度言わせて。あの時も再会してからも……俺のせいで傷つけてばかりで本当にごめん」
あたしに向かって深々と頭を下げた。
「学くん!頭上げてよ!」
学くんの顔を上げようとすると、片手でシートベルトを外してそのままあたしの胸におでこをつけてくる。
「ずっと好きでいてくれてありがとう」
そのままあたしの背中に腕を回す。
「学くんも……ありがとう」
「正直、気持ち抑えんのまじでキツかった」
「え?」
「お前は気持ち隠さねぇし」
──人の気持ちも知らないで
と続けて、腕を解いた学くんはあたしの顔を見つめてくる。
「……っ」
今日、何度目かわからない胸の高まりを感じて、あたしは学くんの胸に自分の顔を押し付ける。
「俺さ、写真でみたときは憎しみしかなかったんだ」
森ノ宮に教育実習に行くことを決めたときのことを言ってるのだろう。
あたしをぎゅっと抱きしめて、ぽつりぽつりと話だす。
「うん」
あたしはその言葉のひとつひとつをきちんと受け止めたくて。
ただ相槌を打つ。
ほかの言葉なんて出てこない。
大切な人の大切な言葉を今度は逃したくないから。
「教育実習初日、体育館の壇上からお前を探した。1発でこの子だってわかった」
「そうなんだ……」
「ほら、目が合ったって言ったろ?多分あの時から俺はちとせが気になって仕方なかったんだ。恨んでたはずなのに」
「……っ」
あたしもだった。
目があったかもしれないと思ったときから、学くんにドキドキして仕方なかった。
同じ瞬間、同じ気持ちになったあたしたち。
想いが重ならないはずなんてなかった。
「実習最後の日に母親が危篤になって、ちとせに会いにいけなくて。俺がちとせを受け入れようとしたから、罰が当たったんだって思った」
「罰、なんて……」
そんなはずがない。
だって、絶対にお母さんは学くんのことを愛していたはずだから。
「だから、もうちとせに会わないと決めたんだよ」
「そっ……か」
ありきたりな返事しか出てこない。
自分のことを言われているのに、誰かほかの人の話をきいているみたい。
「でもさ、それからもずっとちとせのこと気にしてた。ストーカーかな、俺」
おちゃらけたように言う学くんだけど、反対にあたしの瞳には涙が溢れてくる。
「泣くなよ、笑うところだろ」
すこし乱暴に服の裾であたしの涙を拭う。
「だって……」
「あーもう。ちとせに泣かれると本当にどうしたらいいかわかんなくなる」
もう一度あたしをきつく抱きしめる。
「話の続き、して?」
「じゃあ泣くなよ。お前の涙に俺は弱いんだから」
「泣き止んだよ」
無理やり涙を引っ込めて、鼻をすする。
これは、悲しい涙なんかじゃないんだよ。
学くんと気持ちが通じ会えてたことの嬉しさが溢れた涙だよ。
「お前がどこの大学にいったかも、大学時代に彼氏ができたことも。そいつに浮気されて別れたことも……全部知ってる」
「すご……」
だから、彼が浮気をしたことを言ってないのに知ってたんだ。
あの時は、その後に行われる挨拶のせいでそんなこと気にしてもいなかった。
「俺としては、大学に入って付き合った彼氏にかなり嫉妬したけどな」
「ばか。そういう学くんだって……彼女いたじゃん」
──葉菜さん。
彼女のことを思い出すと同時に、出されていなかった婚姻届のことも思い出す。
「え!?」
学くんの言葉に驚いて、大きな声が出てしまう。
「うるせーな。父さんのとこ行ってちゃんとするって。これからは」
「はいはい。じゃあ行くぞ」
エンジンをかけて、ハンドル握る。
「じゃあまたな」
「バイバイ」
あたしも学くんもタマに手を振って、車は発車した。
「はぁーよかった」
少しだけ走らせて、学くんは車を路肩に停めた。
「学くん?」
このまま家に行くもんだも思っていたから、びっくりして首を傾げる。
「もう戻ってきてくれないかと思ってさ」
膝に置いていたあたしの手をぎゅっと握る。
「……学くん」
「もう1度言わせて。あの時も再会してからも……俺のせいで傷つけてばかりで本当にごめん」
あたしに向かって深々と頭を下げた。
「学くん!頭上げてよ!」
学くんの顔を上げようとすると、片手でシートベルトを外してそのままあたしの胸におでこをつけてくる。
「ずっと好きでいてくれてありがとう」
そのままあたしの背中に腕を回す。
「学くんも……ありがとう」
「正直、気持ち抑えんのまじでキツかった」
「え?」
「お前は気持ち隠さねぇし」
──人の気持ちも知らないで
と続けて、腕を解いた学くんはあたしの顔を見つめてくる。
「……っ」
今日、何度目かわからない胸の高まりを感じて、あたしは学くんの胸に自分の顔を押し付ける。
「俺さ、写真でみたときは憎しみしかなかったんだ」
森ノ宮に教育実習に行くことを決めたときのことを言ってるのだろう。
あたしをぎゅっと抱きしめて、ぽつりぽつりと話だす。
「うん」
あたしはその言葉のひとつひとつをきちんと受け止めたくて。
ただ相槌を打つ。
ほかの言葉なんて出てこない。
大切な人の大切な言葉を今度は逃したくないから。
「教育実習初日、体育館の壇上からお前を探した。1発でこの子だってわかった」
「そうなんだ……」
「ほら、目が合ったって言ったろ?多分あの時から俺はちとせが気になって仕方なかったんだ。恨んでたはずなのに」
「……っ」
あたしもだった。
目があったかもしれないと思ったときから、学くんにドキドキして仕方なかった。
同じ瞬間、同じ気持ちになったあたしたち。
想いが重ならないはずなんてなかった。
「実習最後の日に母親が危篤になって、ちとせに会いにいけなくて。俺がちとせを受け入れようとしたから、罰が当たったんだって思った」
「罰、なんて……」
そんなはずがない。
だって、絶対にお母さんは学くんのことを愛していたはずだから。
「だから、もうちとせに会わないと決めたんだよ」
「そっ……か」
ありきたりな返事しか出てこない。
自分のことを言われているのに、誰かほかの人の話をきいているみたい。
「でもさ、それからもずっとちとせのこと気にしてた。ストーカーかな、俺」
おちゃらけたように言う学くんだけど、反対にあたしの瞳には涙が溢れてくる。
「泣くなよ、笑うところだろ」
すこし乱暴に服の裾であたしの涙を拭う。
「だって……」
「あーもう。ちとせに泣かれると本当にどうしたらいいかわかんなくなる」
もう一度あたしをきつく抱きしめる。
「話の続き、して?」
「じゃあ泣くなよ。お前の涙に俺は弱いんだから」
「泣き止んだよ」
無理やり涙を引っ込めて、鼻をすする。
これは、悲しい涙なんかじゃないんだよ。
学くんと気持ちが通じ会えてたことの嬉しさが溢れた涙だよ。
「お前がどこの大学にいったかも、大学時代に彼氏ができたことも。そいつに浮気されて別れたことも……全部知ってる」
「すご……」
だから、彼が浮気をしたことを言ってないのに知ってたんだ。
あの時は、その後に行われる挨拶のせいでそんなこと気にしてもいなかった。
「俺としては、大学に入って付き合った彼氏にかなり嫉妬したけどな」
「ばか。そういう学くんだって……彼女いたじゃん」
──葉菜さん。
彼女のことを思い出すと同時に、出されていなかった婚姻届のことも思い出す。
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