結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ

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第三章~真実~

会えない約束の日

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「今日、1度も会えてないな」



月曜。
学くんの実習最後の日。

これが終われば、あたし達の関係に名前がつくという日。

学くんは、朝のホームルームにも授業にもいなかった。
いつもならいる、お昼休みの屋上にもいなかった。

ここのところ毎日、学くんと屋上でご飯を食べていたからかな。
慣れていたはずの1人も寂しく感じてしまう。



「帰りになれば……ね」



なんだか言いようのない不安がこみあげてきて、ポケットの中に入っているプリクラに手を触れる。


〝また、月曜ね〟


そうこの日は別れた。
だから、今は忙しいだけ。

放課後になれば、学くんはすべて終わる。
あたしにとってのはじめての彼氏ができるんだ。

この1週間。
学くんとしてきたたくさんのキスはどれもが優しくて、幸せだった。

だから、あたしはこの先にも幸せが待っていると信じて疑わなかった。



「鈴野どしたー?」



放課後。
学くんの元に行こうと、準備室を訪れる。

すると、いままで1度だっていなかった田代先生があたしを出迎える。



「まな……遊佐先生は?」


「今日はきてないぞー」


「え?」



田代先生の言葉に、今日1日見ていないことに納得をする。



「なんだー?最後だから挨拶か?」


「そんなとこです」



本当のことなんて言えないから。
だから、どうして来ていないかなんてことも聞けない。



「俺が伝えといてやるよ」


「あ、はい。じゃあ、あたしは生徒会室行きます」



田代先生に懸命に笑顔を作って、教室から出る。



「なんで……?」



あたしは、スマホを耳に当てて学くんに電話をかける。

でも、無機質な音が鳴るだけで一向に出てなんてくれない。



「あたしたち、変わるはずだったよね……?」



金曜日の学くんを思い出しても、ずっとずっと優しくて。
それが嘘だなんて思えない。



「お?ちとせ今日は来れないんじゃなかったのか?」



生徒会室に入ると、雑誌を読んでいた燿くんが顔をあげる。



「燿くん……」



燿くんの顔を見るだけで、こみあげてきそうになる涙。



「どした?」


「学くんが……いない」


「あぁ、あいつ最後の日を前にして終了したらしいな」



どういうことなのだろう。
わからなくて、あたしは何度も何度もスマホを耳に当て続けた。


だって、もう二度とあえないような。
そんな不安に駆られて仕方なかったから。



「さっきからめっちゃ電話してね?」



燿くんがあたしの手からスマホを奪う。



「お前……かけすぎ」



ディスプレイに表示されてる内容をみて、目を丸くする。



「だって……」


「だから言っただろ。あいつは本気じゃねぇって」



燿くんはあたしに何度も言ってきていた。

〝騙されてる〟とか〝信じるな〟とか。
でも、どうしてもあたしはそれを信じることはできなかった。
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