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another story②~彼らの長女の小話~
絶対に諦めたくない人
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「何度言ったらわかるんだ!音楽なんかやってなにになる!」
「俺は会社なんて、継ぐつもりねぇって言ってんだろ!!」
お風呂から上がって、リビングに行くとまた聞こえてくるお父さんとお兄ちゃんの喧嘩。
「お母さん、また?」
「うーん。お父さんも來輝も.......お互いもう少し歩み寄ってくれたらいいんだけどね」
「そうだね.......」
あたしのお父さんは、MMコーポレーションという会社の社長をやっていて、お兄ちゃんもあたしも小さなころから英才教育を受けてきた。
お兄ちゃんは、次期社長になるため。
あたしは、どこに嫁いでも恥ずかしくないため。
でも、高校生の時からお兄ちゃんはそれに嫌気がさして、そして、出会った音楽に魅了されてお父さんが敷いたルートから外れた。
「いいか、お前が継がないってことは代々築いてきた我が家の伝統が途切れることになる。わかってるのか?」
「は?そんな伝統どーでもいいよ。そんなの俺に関係ねーだ「いい加減にしろ」
お兄ちゃんの言葉を遮って、お父さんが、鋭い目でお兄ちゃんのことをみる。
「お前が音楽をやるのもいい。好きにさせてきた。でも、会社の伝統を途切らせることだけは許さない」
「なんなんだよ、伝統だかなんだか知らねぇけど、俺、その先祖とやらと血の繋がりのあるやつ父さんしか知らねぇもん。べつに会ったこともねぇような、お祖母様とかいうやつが守ってきた伝統なんかどうでもいい」
──パシンッ
鈍い音が部屋中に響く。
「.......っ、なにすんだよ!母さん!」
お兄ちゃんの頬を叩いたのは、お父さんではなく、お母さん。
「いい加減にしなさい。お父さんに謝って。分かってるよね?お父さんが1番なにが傷つくか」
「うるせーよ、出る」
お母さんを見ることもなく、お兄ちゃんはそのまま玄関に行く。
「.......お兄ちゃん」
「ごめんな、うるさくして。暖かくして寝ろよ」
ポンっとあたしの頭を撫でて、靴を履いて出ていく。
お兄ちゃんは、あたしにだけは優しかった。
お兄ちゃんが荒れはじめて、お父さんやお母さんに口答えをするようになっても、あたしにだけは普通に接してくれた。
「.......はぁ、ごめんな」
お父さんが肩を落として、お母さんに謝っている。
「いまのは來輝が悪いもの。学くんのお母さんのこと、あんなふうに言うなんて.......」
「まぁ、仕方ねぇよな。あったこともないのはたしかだから」
お父さんのお母さん、つまりあたし達の祖母に当たる人はお父さんが大学生の頃に交通事故で亡くなったらしい。
そして、現会長である元社長とお父さんには血の繋がりがない。
お祖母様が再婚して、社長に就任したらしい。
でも、その現会長とあたしのお母さんには血の繋がりがあるというなんとも不思議な関係だ。
「こうなったら、光架の結婚相手に継いでもらうか」
「え、やだ!」
「冗談だよ、何を本気にしてんだ」
お父さんが笑って、でも寂しそうにあたしの頭を撫でる。
「なんとなく.......」
あたしにだって付き合ってる人はいる。
その人にうちの会社を継いでなんてもらいたくない。
「光架、なんか落ち.......なんだこれ?」
あたしが持っていた手帳から落ちたものをお父さんが拾う。
「あ、それは.......っ」
あたしが彼氏と一緒にとったプリクラ。
「お前、彼氏がいたのか」
「う、うん」
お父さんにもお母さんにも言えてなかった彼氏の存在。
彼のことを知られたら絶対に反対されると思ったから。
「どっかで見たことあるんだよな.......」
お父さんが眉を潜める。
「あら、この子.......航くんじゃない?燿くんにすごく似てきたわね」
お母さんが目を細めて笑っている。
「お母さん、航のこと知ってるの?」
「.......なっ!お前、霧島の息子と付き合ってるのか!?」
あたしの質問にお母さんが答える隙もなく、お父さんが聞いてくる。
「うん、そうだよ」
航とは高校のとき、同級生だった。
その時から付き合っていて、もう5年になる。
航のお父さんは霧島物産の社長で、うちの会社とはライバル関係にある。
うちの会社は、代々続いてきた会社だけど、霧島物産は航が生まれた頃に設立して、航のお父さんが初代社長だ。
「分かってるのか?霧島とうちがライバル関係にあること」
「知ってるよ」
霧島物産は、割と新しめの会社だけど、勢いがすごくて業界ではうちに次いで2位だとかテレビでみたことがある。
「なんで、よりにもよって霧島の息子なんだ」
「しょうがないじゃん!好きなんだもん!お父さんだって、お母さんのことが好きで結婚したんじゃないの!?」
絶対に航と付き合ってることは家族には言うもんかって思ってた。
こうやって頭ごなしに反対されるのが目に見えていたから。
でも、どうしたって航のことは諦められない。
「勝手にしろ」
お父さんがため息をついて、そのまま書斎へと入っていく。
「お父さんも光架の気持ちが分からないわけじゃないのよ.......」
お母さんがあたしの頭を撫でる。
「分かってる.......でも、悔しいよ。航のこと何もしらないくせに」
お父さんとお兄ちゃんが喧嘩の毎日で。
お母さんが板挟みになって泣いていて。
そんな家にいるのが窮屈で仕方ないときも、いつだってあたしのそばにいてくれたのが航なんだ。
だから、航のことだけは絶対に諦めたくない。
「俺は会社なんて、継ぐつもりねぇって言ってんだろ!!」
お風呂から上がって、リビングに行くとまた聞こえてくるお父さんとお兄ちゃんの喧嘩。
「お母さん、また?」
「うーん。お父さんも來輝も.......お互いもう少し歩み寄ってくれたらいいんだけどね」
「そうだね.......」
あたしのお父さんは、MMコーポレーションという会社の社長をやっていて、お兄ちゃんもあたしも小さなころから英才教育を受けてきた。
お兄ちゃんは、次期社長になるため。
あたしは、どこに嫁いでも恥ずかしくないため。
でも、高校生の時からお兄ちゃんはそれに嫌気がさして、そして、出会った音楽に魅了されてお父さんが敷いたルートから外れた。
「いいか、お前が継がないってことは代々築いてきた我が家の伝統が途切れることになる。わかってるのか?」
「は?そんな伝統どーでもいいよ。そんなの俺に関係ねーだ「いい加減にしろ」
お兄ちゃんの言葉を遮って、お父さんが、鋭い目でお兄ちゃんのことをみる。
「お前が音楽をやるのもいい。好きにさせてきた。でも、会社の伝統を途切らせることだけは許さない」
「なんなんだよ、伝統だかなんだか知らねぇけど、俺、その先祖とやらと血の繋がりのあるやつ父さんしか知らねぇもん。べつに会ったこともねぇような、お祖母様とかいうやつが守ってきた伝統なんかどうでもいい」
──パシンッ
鈍い音が部屋中に響く。
「.......っ、なにすんだよ!母さん!」
お兄ちゃんの頬を叩いたのは、お父さんではなく、お母さん。
「いい加減にしなさい。お父さんに謝って。分かってるよね?お父さんが1番なにが傷つくか」
「うるせーよ、出る」
お母さんを見ることもなく、お兄ちゃんはそのまま玄関に行く。
「.......お兄ちゃん」
「ごめんな、うるさくして。暖かくして寝ろよ」
ポンっとあたしの頭を撫でて、靴を履いて出ていく。
お兄ちゃんは、あたしにだけは優しかった。
お兄ちゃんが荒れはじめて、お父さんやお母さんに口答えをするようになっても、あたしにだけは普通に接してくれた。
「.......はぁ、ごめんな」
お父さんが肩を落として、お母さんに謝っている。
「いまのは來輝が悪いもの。学くんのお母さんのこと、あんなふうに言うなんて.......」
「まぁ、仕方ねぇよな。あったこともないのはたしかだから」
お父さんのお母さん、つまりあたし達の祖母に当たる人はお父さんが大学生の頃に交通事故で亡くなったらしい。
そして、現会長である元社長とお父さんには血の繋がりがない。
お祖母様が再婚して、社長に就任したらしい。
でも、その現会長とあたしのお母さんには血の繋がりがあるというなんとも不思議な関係だ。
「こうなったら、光架の結婚相手に継いでもらうか」
「え、やだ!」
「冗談だよ、何を本気にしてんだ」
お父さんが笑って、でも寂しそうにあたしの頭を撫でる。
「なんとなく.......」
あたしにだって付き合ってる人はいる。
その人にうちの会社を継いでなんてもらいたくない。
「光架、なんか落ち.......なんだこれ?」
あたしが持っていた手帳から落ちたものをお父さんが拾う。
「あ、それは.......っ」
あたしが彼氏と一緒にとったプリクラ。
「お前、彼氏がいたのか」
「う、うん」
お父さんにもお母さんにも言えてなかった彼氏の存在。
彼のことを知られたら絶対に反対されると思ったから。
「どっかで見たことあるんだよな.......」
お父さんが眉を潜める。
「あら、この子.......航くんじゃない?燿くんにすごく似てきたわね」
お母さんが目を細めて笑っている。
「お母さん、航のこと知ってるの?」
「.......なっ!お前、霧島の息子と付き合ってるのか!?」
あたしの質問にお母さんが答える隙もなく、お父さんが聞いてくる。
「うん、そうだよ」
航とは高校のとき、同級生だった。
その時から付き合っていて、もう5年になる。
航のお父さんは霧島物産の社長で、うちの会社とはライバル関係にある。
うちの会社は、代々続いてきた会社だけど、霧島物産は航が生まれた頃に設立して、航のお父さんが初代社長だ。
「分かってるのか?霧島とうちがライバル関係にあること」
「知ってるよ」
霧島物産は、割と新しめの会社だけど、勢いがすごくて業界ではうちに次いで2位だとかテレビでみたことがある。
「なんで、よりにもよって霧島の息子なんだ」
「しょうがないじゃん!好きなんだもん!お父さんだって、お母さんのことが好きで結婚したんじゃないの!?」
絶対に航と付き合ってることは家族には言うもんかって思ってた。
こうやって頭ごなしに反対されるのが目に見えていたから。
でも、どうしたって航のことは諦められない。
「勝手にしろ」
お父さんがため息をついて、そのまま書斎へと入っていく。
「お父さんも光架の気持ちが分からないわけじゃないのよ.......」
お母さんがあたしの頭を撫でる。
「分かってる.......でも、悔しいよ。航のこと何もしらないくせに」
お父さんとお兄ちゃんが喧嘩の毎日で。
お母さんが板挟みになって泣いていて。
そんな家にいるのが窮屈で仕方ないときも、いつだってあたしのそばにいてくれたのが航なんだ。
だから、航のことだけは絶対に諦めたくない。
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