虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ

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逃亡編 三章:過去の仲間

傭兵ギルド

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 東港町の中央に位置する場所に、アリアとエリクの探す傭兵ギルドは存在した。
 大通りを遮る道の向こう側にそびえ立つ建物に、傭兵ギルドと書かれた巨大な看板が備えられ、多くの人々の出入りするのが見える。
 その看板が立つ建物の中に、アリアとエリクは入った。

「ここが、傭兵ギルドね」

「人が多いな」

「傭兵だけじゃないわね。商人や役人っぽいのもいる。傭兵を必要とする依頼人とかも多いんでしょうね」

「それで、どうするんだ?」

「とりあえず、傭兵ギルドで傭兵登録というものをしましょう。自称の傭兵よりも、南の国でも認められてる多国籍所属の傭兵ギルドの方が、肩書きとしては都合が良いわ」

「そうか。受付は何処だろうな」

「アレじゃない? ほら、商人っぽい人達が並んでる場所とは別に、傭兵っぽい姿の人達が並んでる場所があるでしょ」

「確かに、あるな」

「今回は偽名は無しで、登録する時は愛称と本名で行きましょう。登録した後に、依頼者や状況次第では偽名と本名を使い分ける感じで」

「分かった」

 入り口辺りで様子を見ていた二人が登録に際する話を取り決めると、傭兵達と思しき者達が並ぶ受付前の列に入った。
 二つの列にある一つに並び、徐々に消化されていく列が消えていくと、アリアとエリクの番が訪れた。
 そして受付に座るギルド職員らしき眼鏡の男性が、アリアとエリクを見ながら尋ねた。

「次の方、どうぞ。本日はどのようなご用件ですか?」

「私達は、傭兵ギルドへ登録する為に来ました」

「登録ですか。それでは、登録参加料に御一人様、銀貨十枚を頂きます」

「分かりました。……はい、二人で二十枚です」

「確かに受け取りさせて頂きました、では、こちらの用紙に名前と出身国、年齢とその他アピールしたい事を書いて下さい」

「アピールしたい事、ですか?」

「傭兵として売り込む為の自己紹介ですね。例えばどんな武器が得意だとか、魔法が使えるとか。そういう簡単なアピールでも構いません」

「なるほど、分かりました」

「用紙を書き込んだら、隣の受付に用紙を渡してください。ギルド加入の審査の為に必要ですので」

「審査ですか?」

「傭兵とは危険な仕事です。魔物や魔獣と戦う事も、人と戦う事も多い。実力が無い人を加入させて依頼を失敗した場合、ギルドの信頼に関わりますので」

「要は、ふるい落としということですね」

「そうですね。それでは、この用紙に二人の情報を書き込んでください」

 インクと羽ペンを用紙と共に渡した受付の職員は、次に並ぶ人を呼んで業務に戻った。
 受け取ったアリアとエリクは中央の机に立ったまま用紙を書き込み情報を書き込んでいく。
 出身国を互いに帝国出身として、それぞれに得意な武器と特技を書き込んだ。
 ある程度の文字の勉強が樹海の中で進んでいたエリクは、簡単で拙い文字ながらも、自分の事を書き込めるくらいに成長している。
 そんなエリクを横目で確認したアリアは、口元を微笑ませながら自分の用紙に書き込みを進めた。
 そして先程の隣にある受付に赴き、先程とは違う男性職員に用紙を渡した。

「コレとコレを、お願いします」

「確かに受け取りました。……アリアさんと、エリクさんで宜しいですね。二人とも、傭兵ギルドへの加入希望で間違いはありませんか?」

「はい」

「それでは、今日の審査は既に終了しておりますので、明日の昼前に、当ギルドの中に集まって下さい。加入の為に審査を行います」

「明日、ですか? 今日はもうやってないんですね」

「はい。加入審査はいつも昼から夕方頃まで行います。今日は試験は終了して、合格者に説明を行っている最中です」

「そうですか、分かりました。それでは明日の昼頃に、お伺いします」

「はい、またのお越しをお待ちしております」

 受付と話し終えたアリアは、エリクと共にギルドから歩み出た。
 そして町中を歩く中で、アリアはエリクに聞いた。

「エリク。傭兵ギルドを出てから、誰かが追って来てる様子は?」

「……今のところは、無いな」

「そう、良かった。……でも、明日の昼頃は、あのギルドに入る時に注意しないとね」

「追っ手の話か」

「それもあるけど。もし傭兵ギルドにも帝国の手が掛かってるなら、私とエリクが来た事を教えて、帝国に引き渡そうとするかもしれない。他の傭兵達も、賞金目当てで私を捕まえようとするかもしれない。だから、油断は禁物ね」

「……こういうのを、賭けと言うのか?」

「そう。私達が南の国マシラに行くには、傭兵登録をして依頼者に雇われるしかない。でも傭兵登録をするにも、私達の正体がバレる危険がある。バレずに登録を完了すれば万々歳で、バレてる上に帝国兵に捕まったらアウトの、大博打よ」

「いざとなったら、どうする?」

「逃げるしかない。でもギルドの屋内はともかく、よく知らない町中で逃げ切れる保証がない。……捕まるにしても、最悪の事態を避ける為に人死は避けましょう。大人しく捕まる覚悟はしてね。そうすれば情状的にエリクがすぐに処刑される事は無いだろうし、帝国兵に一緒に引き渡されれば、エリクは意地でも私専属のお抱えの騎士にしてあげるから」

「そういえば、そういう話だったな」

「そういう話よ。もし出来ないなんてお父様やお兄様が言うようなら、私もそれ相応の事をしてやるんだから」

「……ははっ」

 怒った表情で話すアリアを見ながら、珍しくエリクが声を出して笑う様子を見せた。

「珍しい。エリクが声を出して笑った」

「ん、そうか?」

「時々口を笑わせるのはしてたけど、声を出して笑うなんてほとんど無いじゃない」

「そうか。そういえば、そうかもな」

「エリクってさ。大笑いしたりするの? なんか、想像できないけど」

「……昔は、よくしていたかもしれない」

「へぇ、どんな時?」

「魔物や魔獣を仕留めた後に、その肉で焼肉を作って仲間達と食べた時。戦争に勝って、仲間と飲み食いしている時だと思う」

「仲間って言うと、王国の傭兵だった時の?」

「そうだ。……今、あいつ等はどうしてるだろうか」

「処刑されそうになった時、一緒に逃げたんだっけ。その後にどうなったか、知ってるの?」

「分からない。途中で追っ手を撒く為に別れて、バラバラになった。今はどうしているのか、俺にも分からない」

「そっか。王国に捕まってないと良いわね」

「……ああ」

 しんみりとした空気に陥った二人の空気を悟り、アリアは自分の両頬を叩いた。
 その音と行動にエリクは驚きながら、アリアが向ける表情と言葉を見て聞いた。

「今は、私達の事を考えましょう。最優先は、南の国マシラに行く商船に護衛として雇われる為に、傭兵ギルドに加入することよ」

「ああ、分かった」

「今日は宿に戻って休みましょ。審査があるらしいから、二人で武器と防具のチェックをして、万全の準備を整えなきゃね」

「そうだな」

 そんな会話を行いながらアリアとエリクは宿となる酒場へ赴き、食事を取って部屋に戻り、武具の確認と整備を行った。
 そして審査を想定した話をアリアが行い、エリクはそれに頷きながら同意する。
 準備を整えた二人はそれぞれに就寝し、明日の審査に備えたのだった。
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