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修羅編 閑話:裏舞台を表に
新たな雇い主 (閑話その六十七)
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盟約の交渉を無事に行い樹海に帰郷したパールは、驚きと呆れの中で文明が更に発展してしまったセンチネル部族の村を頭を悩ませる。
それはクラウスの無遠慮な干渉が主な原因だったが、パールが離れていた五ヶ月間に加速度を上げて発展した理由に、三ヶ月ほど前に樹海へ逃げ込んだ黒獣傭兵団達が関わっていた。
傭兵ギルドを通じて旧ベルグリンド王国から賞金首として指名手配された黒獣傭兵団は、クラウスが居る樹海へ逃げ込み、パールやログウェルと共に通った順路を通じてセンチネル部族の村に訪れる。
再び尋ねて来た黒獣傭兵団達の面々に、センチネル部族達は最初こそ使者であるパールを連れて戻って来たのだと思っていた。
しかし集団の中にパールは居らず、監視役を担う者達は黒獣傭兵団に警戒を抱き柵越しに弓矢を向けて警戒する。
そうした状況で武器や盾を手放し両手を上げて前に歩み出たのは、黒獣傭兵団の副団長であり団長代理を務めるワーグナーだった。
『――……村に居る、元ローゼン公爵のクラウス殿と話がある! 通してくれとは言わんから、あの人をここまで呼んでくれねぇか!?』
『……』
ワーグナーは柵越しにそう伝え、監視を行うセンチネル部族の者達に言伝を頼む。
アリアやクラウスに言葉を教えられていた者達はそれを理解し、警戒を向けながらもクラウスを呼んだ。
そうして呼び出しに応じたクラウスは柵を超え、戻って来たワーグナーや黒獣傭兵団に声を向ける。
『――……戻って来たか。やはりな』
『!』
その言葉を聞いた瞬間、黒獣傭兵団の一同が表情を強張らせる。
一同が表情で見せる言葉を代表して述べたのは、ワーグナーだった。
『……やはりってのは、どういう意味だ?』
『言っただろう? 黒獣傭兵団は何者かの策略に乗せられていると』
『!』
『その意図として、黒獣傭兵団を心身共に追い詰めているように思える。もし俺が追い詰める方法を考えるなら、まず居場所を奪うことから始めるだろう。お前達が王国を追われる立場になったようにな』
『……ッ』
『大方、王国側から傭兵ギルドを通じて指名手配にされたか。王国と和平を結んだ帝国側も、お前達を保護し続けれるのは無理だろう。海路も封じられ他国にも渡れない。だから樹海に逃げ込んで来たというところか?』
『……チッ、だいたい当たりだぜ。気に食わないことにな』
クラウスの述べる推測をワーグナーは肯定し、舌打ちを見せながらも渋い表情を見せる。
そんなワーグナーに対してクラウスは笑みを浮かべる事は無く、真剣な表情で尋ねた。
『それで、ここに匿って欲しいのか?』
『……いや、少し違うな』
『?』
『俺達を雇わないか?』
『……ほぉ?』
『前に来たにも思ったが、アンタはこの村で困ってることがあるだろ?』
『俺が困るだと?』
『アンタは樹海の連中を強くしようとしている。だが色々と足りていない。特に技術と技術者がな。違うか?』
『……』
『アンタ一人だけ連中を訓練しながら技術を教えるには、どうしても限界があるんだろ。それに鉄も樹海では作れない。武器や防具、建築物に使える金物の部品も揃わないから、中途半端な物しか作れない』
『……ふっ』
『俺達の中には、廃業しちまった大工や鍛冶屋の息子がいる。そして俺達自身、色々と作るのは得意だ。道具や罠、そして武具もな。それに俺達だったら、アンタが欲しがってそうな鉄や道具を仕入れて、他の連中にそうした物の作り方を教えられる』
『製鉄や道具を仕入れる? 追われているお前達がか?』
『黒獣傭兵団は確かに指名手配されてるが、顔がはっきり割れてるのはエリクや俺くらいだろ。追ってる連中も黒獣傭兵団の団員だと判別できてるのは、この外套のおかけだ。変装してバラければ、仕入れは出来る。樹海から出れないアンタと違ってな』
ワーグナーはそう述べ、クラウスに対して雇い入れの交渉を始める。
センチネル部族の村を中心に文明や思考を発展させていたクラウスだったが、一人だけではそれを広め伝える事は難しい。
更に製鉄を作れない樹海の者達にとって、作られる道具や武器は限度が知れている。
そうした状況でクラウスが最も欲していたのは、鉄などの資材と鉄が含まれる道具、そしてそれ等を扱い物を作りながら樹海の者達に教えられる技術者。
それを村の状況と自分の言動だけで察したワーグナーの思考力に、クラウスは口元を僅かに吊り上げてから口を開いた。
『……なるほど、悪くはない話かもしれんな。――……だが一つだけ、お前達を明らかにしておく必要はあるだろう』
『明かす?』
『お前達の目的だ』
『!』
『このまま俺に雇われ、隠れ潜みながら寿命を終えるまで樹海で暮らす事を考えているのか。それとも、お前達の状況を変える為に樹海を拠点としたいのか。……どちらだ?』
クラウスは裏も影も無い厳かな表情を浮かべながら、ワーグナー達に対して目的を尋ねる。
それを聞きクラウスの表情を見た一同は目つきを鋭くさせ、団長代理であるワーグナーに視線を向けた。
その視線を一身に受けたワーグナーは、口元を微笑ませながら鋭い眼光で黒獣傭兵団の目的を告げる。
『――……どっちかと言えば、後者だ。……王国でエリクや黒獣傭兵団を嵌めた奴等の悪事を暴き、そいつ等を俺達が狩る。その為だったら、どんな手段でも生き残ってやるつもりだ』
『なるほど。詰まるところは復讐か?』
『元公爵様は、復讐は無粋なモンだって思うのかい?』
『思わんな。復讐も生きる上で十分な目的となるだろう。……だが復讐が果たされるとして、お前達はどうする?』
『さぁな。まだそこまで考えちゃいないさ』
『復讐者の中には、目的さえ果たされればいいと思い行動する者もいる。お前達も、復讐が叶えば死んでも構わないと考える口か?』
『……んなワケないだろ。俺等は生き残る為に戦ってるんだ。わざわざ死ぬ為の戦いなんざ、やるつもりはねぇよ』
ワーグナーは力強くそう述べ、クラウスはその答えに満足したように微笑みを浮かべる。
そして更に前へ歩み出したクラウスは、ワーグナーの目前まで歩み寄りながら立ち止まり、右手を前へ差し向けた。
『……フッ、良いだろう。今日から俺が、黒獣傭兵団の雇い主だ』
『へっ。んじゃ、契約成立ってこった』
クラウスが述べる言葉と差し伸べられる右手を見ながら、ワーグナーは力強く右手で握手を交わす。
こうしてワーグナー率いる黒獣傭兵団は、樹海に棲むセンチネル部族達と暮らすクラウスに雇われる。
そして当然ながら、勝手に雇い入れられ村の中に入ろうとする黒獣傭兵団に対して、族長ラカムは強くクラウスに抗議したが、説き伏せられる形で敗北を喫した。
以降、黒獣傭兵団はクラウスを雇い主として指示を仰ぎ、少数で樹海を抜け出て近辺の村などに赴き資材や道具を僅かずつ買い付け、木材の切り取りや建築物の形が整えられると、センチネル部族の村は急速に技術力が高まり発展するに至る。
そうして変貌を迎える故郷の村に戻ったパールは、許容の心のある域にまで達してしまった父親が呆けたように微笑む姿を見て、頭を抱えながら苦悩を浮かべることとなった。
それはクラウスの無遠慮な干渉が主な原因だったが、パールが離れていた五ヶ月間に加速度を上げて発展した理由に、三ヶ月ほど前に樹海へ逃げ込んだ黒獣傭兵団達が関わっていた。
傭兵ギルドを通じて旧ベルグリンド王国から賞金首として指名手配された黒獣傭兵団は、クラウスが居る樹海へ逃げ込み、パールやログウェルと共に通った順路を通じてセンチネル部族の村に訪れる。
再び尋ねて来た黒獣傭兵団達の面々に、センチネル部族達は最初こそ使者であるパールを連れて戻って来たのだと思っていた。
しかし集団の中にパールは居らず、監視役を担う者達は黒獣傭兵団に警戒を抱き柵越しに弓矢を向けて警戒する。
そうした状況で武器や盾を手放し両手を上げて前に歩み出たのは、黒獣傭兵団の副団長であり団長代理を務めるワーグナーだった。
『――……村に居る、元ローゼン公爵のクラウス殿と話がある! 通してくれとは言わんから、あの人をここまで呼んでくれねぇか!?』
『……』
ワーグナーは柵越しにそう伝え、監視を行うセンチネル部族の者達に言伝を頼む。
アリアやクラウスに言葉を教えられていた者達はそれを理解し、警戒を向けながらもクラウスを呼んだ。
そうして呼び出しに応じたクラウスは柵を超え、戻って来たワーグナーや黒獣傭兵団に声を向ける。
『――……戻って来たか。やはりな』
『!』
その言葉を聞いた瞬間、黒獣傭兵団の一同が表情を強張らせる。
一同が表情で見せる言葉を代表して述べたのは、ワーグナーだった。
『……やはりってのは、どういう意味だ?』
『言っただろう? 黒獣傭兵団は何者かの策略に乗せられていると』
『!』
『その意図として、黒獣傭兵団を心身共に追い詰めているように思える。もし俺が追い詰める方法を考えるなら、まず居場所を奪うことから始めるだろう。お前達が王国を追われる立場になったようにな』
『……ッ』
『大方、王国側から傭兵ギルドを通じて指名手配にされたか。王国と和平を結んだ帝国側も、お前達を保護し続けれるのは無理だろう。海路も封じられ他国にも渡れない。だから樹海に逃げ込んで来たというところか?』
『……チッ、だいたい当たりだぜ。気に食わないことにな』
クラウスの述べる推測をワーグナーは肯定し、舌打ちを見せながらも渋い表情を見せる。
そんなワーグナーに対してクラウスは笑みを浮かべる事は無く、真剣な表情で尋ねた。
『それで、ここに匿って欲しいのか?』
『……いや、少し違うな』
『?』
『俺達を雇わないか?』
『……ほぉ?』
『前に来たにも思ったが、アンタはこの村で困ってることがあるだろ?』
『俺が困るだと?』
『アンタは樹海の連中を強くしようとしている。だが色々と足りていない。特に技術と技術者がな。違うか?』
『……』
『アンタ一人だけ連中を訓練しながら技術を教えるには、どうしても限界があるんだろ。それに鉄も樹海では作れない。武器や防具、建築物に使える金物の部品も揃わないから、中途半端な物しか作れない』
『……ふっ』
『俺達の中には、廃業しちまった大工や鍛冶屋の息子がいる。そして俺達自身、色々と作るのは得意だ。道具や罠、そして武具もな。それに俺達だったら、アンタが欲しがってそうな鉄や道具を仕入れて、他の連中にそうした物の作り方を教えられる』
『製鉄や道具を仕入れる? 追われているお前達がか?』
『黒獣傭兵団は確かに指名手配されてるが、顔がはっきり割れてるのはエリクや俺くらいだろ。追ってる連中も黒獣傭兵団の団員だと判別できてるのは、この外套のおかけだ。変装してバラければ、仕入れは出来る。樹海から出れないアンタと違ってな』
ワーグナーはそう述べ、クラウスに対して雇い入れの交渉を始める。
センチネル部族の村を中心に文明や思考を発展させていたクラウスだったが、一人だけではそれを広め伝える事は難しい。
更に製鉄を作れない樹海の者達にとって、作られる道具や武器は限度が知れている。
そうした状況でクラウスが最も欲していたのは、鉄などの資材と鉄が含まれる道具、そしてそれ等を扱い物を作りながら樹海の者達に教えられる技術者。
それを村の状況と自分の言動だけで察したワーグナーの思考力に、クラウスは口元を僅かに吊り上げてから口を開いた。
『……なるほど、悪くはない話かもしれんな。――……だが一つだけ、お前達を明らかにしておく必要はあるだろう』
『明かす?』
『お前達の目的だ』
『!』
『このまま俺に雇われ、隠れ潜みながら寿命を終えるまで樹海で暮らす事を考えているのか。それとも、お前達の状況を変える為に樹海を拠点としたいのか。……どちらだ?』
クラウスは裏も影も無い厳かな表情を浮かべながら、ワーグナー達に対して目的を尋ねる。
それを聞きクラウスの表情を見た一同は目つきを鋭くさせ、団長代理であるワーグナーに視線を向けた。
その視線を一身に受けたワーグナーは、口元を微笑ませながら鋭い眼光で黒獣傭兵団の目的を告げる。
『――……どっちかと言えば、後者だ。……王国でエリクや黒獣傭兵団を嵌めた奴等の悪事を暴き、そいつ等を俺達が狩る。その為だったら、どんな手段でも生き残ってやるつもりだ』
『なるほど。詰まるところは復讐か?』
『元公爵様は、復讐は無粋なモンだって思うのかい?』
『思わんな。復讐も生きる上で十分な目的となるだろう。……だが復讐が果たされるとして、お前達はどうする?』
『さぁな。まだそこまで考えちゃいないさ』
『復讐者の中には、目的さえ果たされればいいと思い行動する者もいる。お前達も、復讐が叶えば死んでも構わないと考える口か?』
『……んなワケないだろ。俺等は生き残る為に戦ってるんだ。わざわざ死ぬ為の戦いなんざ、やるつもりはねぇよ』
ワーグナーは力強くそう述べ、クラウスはその答えに満足したように微笑みを浮かべる。
そして更に前へ歩み出したクラウスは、ワーグナーの目前まで歩み寄りながら立ち止まり、右手を前へ差し向けた。
『……フッ、良いだろう。今日から俺が、黒獣傭兵団の雇い主だ』
『へっ。んじゃ、契約成立ってこった』
クラウスが述べる言葉と差し伸べられる右手を見ながら、ワーグナーは力強く右手で握手を交わす。
こうしてワーグナー率いる黒獣傭兵団は、樹海に棲むセンチネル部族達と暮らすクラウスに雇われる。
そして当然ながら、勝手に雇い入れられ村の中に入ろうとする黒獣傭兵団に対して、族長ラカムは強くクラウスに抗議したが、説き伏せられる形で敗北を喫した。
以降、黒獣傭兵団はクラウスを雇い主として指示を仰ぎ、少数で樹海を抜け出て近辺の村などに赴き資材や道具を僅かずつ買い付け、木材の切り取りや建築物の形が整えられると、センチネル部族の村は急速に技術力が高まり発展するに至る。
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