聖女転生? だが断る

日村透

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お仕置きのお時間

161. 秘密を探したければまず霧を探せ (5) -sideアロイス

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 聖女召喚の儀というものは、女神が人に授けた術ではなく、聖女を与えられなくなって困った権力者どもが編み出させたものだった。
 そもそも女神がどうして聖女を彼らからのか、都合の悪いことは一切考えずに。

「大昔は今より優れた魔法があって、魔法使いの数もちいとばかり多かったらしい」

 これまで聖女を出現させていた女神の『道』の痕跡を解析し、女神の御業みわざを模倣するという、これまた罰当たりな方法でその術は創り出された。
 だがその魔法使い達もまた、権力者達によって使い潰された。
 そこで数を大きく減らし、以降は新たな魔法使いの産まれる数も激減したという。

「その術はのちに禁忌の術とされ、どんな理屈で作られたかっちゅう過程も含め、すべての情報が消されることになった」
「まさか、術が失敗作だったのか?」
「いんや、それ自体はある意味で成功しとったんよ。作ったこと自体が大失敗でな。そんなもんが世界中のいろんな国にあるとどうなるか想像つくだろ」
「……世界中で節操なしに、聖女召喚を繰り返しそうだな」
「当たりだ。そんで、女神が本格的にお怒りになった。あっちこっちでとんでもない規模の瘴気が噴き出すようになってな」

 過去の聖女や今のロラン王国のように、『百年に一度』という縛りもなく、無節操に聖女召喚が行われた。
 ゆえに多い時は一国に十名ほども聖女がおり、瘴気がいくら増えようと、『こんなに聖女がいるのだ。何ほどのことか』と奴らは嗤い飛ばしたそうだ。――最初のうちは。

 強引に召喚した聖女は、確かに強力な神聖力を持っていたものの、かつて自然に現れていた聖女にはまったく及ばなかったのだ。
 同じことを求められてもできないのに強要され、聖女達はどんどん疲弊していった。
 使い物にならなくなった聖女は打ち捨て、奴らはさらに聖女召喚を行う。
 かつてのように、もっと優れた聖女は出てこないのかと。

 ところがやがてその術を使っても、新たな聖女がひとりも出現しなくなった。
 それだけでなく、世界中の聖女が忽然と姿を消した。
 病や事故ではなく、文字通りの神隠しだ。

「瘴気の被害は増える一方。なのにそれを浄化できる者がおらん。どうしてそんなことになったのかと、世界中の神官が祈りを捧げ続けた。するとある日、どこかの国で神託を受けた神官がおった」

 一人ではなく、同時期に各地で複数名の神官がそれを受けたらしい。
 女神は彼らにこう告げた。
 ――今日の事態はすべて、おまえ達が自ら招いたものだ、と。


 おまえ達に聖女を遣わすのをやめたのは、おまえ達が聖女を閉じ込め使い潰すからだ。
 聖女召喚の術が使えなくなったのは、おまえ達がのべつまくなし召喚を行ったことが原因で、大地の生命力が枯渇したためであり。
 瘴気溜まりが急激に増えたのも、大地が悪しき流れを癒やす力を失ったからだ。
 あの娘達には哀れを催し、全員己の元に召した。
 おまえ達がその不愉快な術を葬り、己の増長を捨て行動を改めねば、滅びゆくのみと心得よ。


 各国の王族は大慌てで聖女召喚の術を禁忌の術に定め、痕跡も残さず消すよう命じた。
 これまで聖女に頼り切り、何もかも聖女に押し付けてきた多くの神殿は、自らの力で浄化を行うことを思い出し。
 一部の王族と一部の神殿にその事実は語り継がれ、あるいは記録を厳重に保管されることになった。

 そうして長い年月が経ち――とある国で、『聖女召喚の儀』が復活した。

「気付かず破棄しそびれとったのか、阿呆がこっそり隠し持っておったのを誰かが発掘したのかもしれん」
「それがロラン王国ってわけか。ほかの国は止めなかったのかよ?」
「奴ら、最初はこっそりやっとったからな。それを表に出し始めたのは、本当に聖女が出現するようになってからだ。およそ百年から百数十年に一人現れるとなると、女神が遣わした『本物』かもしれんだろ? 変に手出しできんかったんよ」
「なるほど……」

 口伝か文献に残されていた聖女が、再び人の世に遣わされるようになったとあれば、一旦は静観するしかない。
 そしてセレスティーヌが誤解されていたように、歴代の聖女は大切にされていると思われていたはずだ。
 先代皇帝によるロラン王国の出兵が大失敗に終わったのも、『手出し無用』の考えを後押しする結果になった。

「いろいろ腑に落ちたが……聖女を虐げていたのは一部の権力者だろう? 無関係の者までひっくるめて『おまえ達が自ら招いた』と言われても、納得できんものがあるな」
「耐えかねて逃げ出した聖女を、民衆がとっ捕まえて王宮や神殿に戻しとったらしいぞ。『聖女なのに自分らを見捨てるのか』っちゅうてな」
「――――」

 ガツンと殴られた心地になった。
 そういえば、セレスティーヌも言っていたのだった。
 民は自分のことを崇めはする。ただし、何事かがあった時、真っ先にセレスティーヌのにするのもまた民なのだと。
 実際にそういうことがあったってわけかよ。

「第一におまえさん、相手が神だと忘れてはならん。神は神であって人ではない。おまえさんもわしも、女神にとっては『人』というひとくくり。女神が人の中で区別しとるのは、聖女と、それ以外だ」





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 読みに来てくださってありがとうございます!
 更新のお知らせ:8/14は投稿お休みししますm(_ _)m

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