聖女転生? だが断る

日村透

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お仕置きのお時間

162. 秘密を探したければまず霧を探せ (6) -sideアロイス

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 召喚聖女はそもそも、女神の意思でこの世界に訪れた存在ではなかった。
 文字通り、術を行使する者――王や神殿の都合でび出されたのだ。
 召喚を乱発していた頃、神聖力の弱い聖女しか現れなかったのは、この世界に満ちる生命力の一部を限界まで使っていたからであり。
 その土地の力を消費され尽くし大地が弱まることで、瘴気も増える結果になった。

 ロラン王国は毎年聖女召喚の儀を行っていたものの、必ずいつでも現れるわけではなかった。
 だから女神の意思で遣わされた本物である可能性も捨てきれず、歴史を知る各国の者は慎重になっていたようだ。
 もちろん単純に、およそ百年周期でロラン王国の地に力が戻り、召喚が成功しただけという可能性のほうが高くはある。
 ただ、断定はできなかった。

 もう一人の聖女『リリ』について、どの道はっきりしたことは言えないのだ。
 セレスティーヌについても、はっきりと言えるわけではない。
 だが『リリ』はどうやら聖女ではなく、そして紛い物であったはずのセレスティーヌこそが本物としか思えない……それだけが確かだった。

「『リリ』とやらが普通の魔法すらも使えんのは、溜まっとった力を召喚だけで使い尽くしたからかもしれん」

  短期間で何人もの乙女をんだ結果、能力の弱い聖女しか出現しなくなった。
 そのことから、異世界からばれた娘には、召喚と同時にこの世界の力がいくらか与えられる仕組みになっているのだと推察できる。
 もう一人の聖女『リリ』は召喚だけで精一杯であり、それ以上の余力がなかったのではないか。

「俺もそう思う。今回召喚された娘はだが、セレスティーヌいわく、形骸化した祭りの感覚で毎年『召喚の儀』をやっていたって話だからな。遠い昔に召喚が成功し、そこで蓄えが尽きたあと、ぎりぎり一人分を召喚できるぐらい回復したタイミングでまた儀式が行われた……ってとこじゃないのか」
「うむ、そんなところじゃなかろか」
「となると、つまりロランの奴ら、異世界から来たという『だけ』の普通の娘を召喚聖女だなんだと騒いでいるわけか」

 話に聞く『リリ』を普通の娘に分類していいのか躊躇ためらうが、その娘にとってはとんだ災難だったなと思――……いや、あんまり思わんな?
 どうにも同情が湧かんし、そもそも『誰』にとっての災難だろうと考えると、首を傾げざるを得ない。
 どっちかというとロラン王や神殿の奴らが振り回されているんじゃないか?
 そうであれば結構愉快なんだが。

「正確なところは女神に尋ねてみんとわからんがな。わしが説明できるのはここまでだ。地下の絵とやらも、誰が描いたのか知らん。以前この神殿に誰がおったのか、わしのほうでもちょいと調べておくとしよう」



 若干の謎が残りつつも、グスタフ大神官のおかげでかなりの部分がわかってきた。
 ただ、これをセレスティーヌにどう話すか。

「くっ……アロイス様にとってはどうということもないのでしょうけれど、わたくしにとっては耐えることが困難な状況であると承知しておいてほしいですわ……」
「なんだ、座り心地が悪いか?」
「とってもよろしいのが問題でしてよ……!」

 俺の操る馬の前に乗り、セレスティーヌがぶちぶちとそんな文句を垂れている。
 乗り心地はよろしいそうだ。
 可愛いな。
 ……本当、あれをこいつにどう説明しよう。


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