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未知の瘴気
136. 妃になればこっちのものでしょ -sideリリ
しおりを挟むぬかったわ。
マジぬかった。さいてー。
塔の最上階に閉じ込められて、毎日毎日、朝から晩まで勉強、勉強、勉強……
あんた達ねえ、あたし聖女様なんでしょ!? この国の歴史だの貴族の序列だの、覚えてどーなるってのよ!
だいたい、こんな女の子を監禁するとか頭おかしいんじゃないの!?
「ああもう、最悪! どうせならあたしじゃなく、セレスティーヌを閉じ込めときなさいよ……!」
そうよ、最初からあの女を閉じ込めときゃよかったんじゃないの。
あいつが逃げなきゃ、こんなことにはならなかったんだから。
「リリ様。お言葉遣いを……」
「ひとを監禁しといて言葉遣い? あんたら頭煮えてんじゃないの? セレスティーヌに逃げられた無能のくせに偉ぶってんじゃないわよ!」
「…………言葉で諭すだけでは、ご理解いただけないようですね」
教師のオッサンはそんなことを言い、その日の食事を抜きにしやがった。
やることなすこと陰険だっての!
前にあたしを鞭打とうとした女神官もいたけど、そいつは逆に鞭を奪って叩きのめしてやったわ。そしたら次から、あたしの教師は全員、そこそこ力の強そうなオジサンばかりになった。
さらに、授業の間はずっと椅子に縛り付けられてる。
比喩じゃなくほんとに縛られてんのよ!
暴れまくって椅子を三脚ぐらい壊してやったら、次から頑丈な鋼鉄製の椅子にクッションを載せたやつに変わった。
はぁ? あたしが野蛮? 狂暴? ――女の子を縛り付けてる自分らはなんだってのよ!
だけど正直、食事抜きが一番きつかったわ。
お腹に何も入ってないと、全然力が出ないんだもの。
あいつらそれで味をしめて、あたしの罰に食事抜きをちらつかせるようになったのよね。
どいつもこいつも、あたしが王子様のお妃になった暁には、牢にぶち込んで拷問してやるから楽しみにしてなさいよ。
そう。あたしはオーギュスト王子様と結婚する。
大々的に異世界からの召喚聖女だって公表しちゃっているから、もう取消しなんてできない。
それにセレスティーヌもいないから、やっぱあの女を正妃にっていうこともできないのはわかってるんだからね。
あんたらは、あたしを大事にするしかないの。
教師の奴らはちょっとそのへんを勘違いしてて、まるで自分が将来のお妃様より偉いつもりになってるみたいだけど、そんなのは今だけよ。
思い知らせてあげる。
そして結婚式当日。
あああ、やっとこの日が来た!
あたし好みにした可愛いキラキラのドレスが、ここのところつまらなかった気分を上げてくれる。
結婚しちゃえばこっちのものよ。まずはむかつく教師の奴らを全員捕えさせて……そうそう、セレスティーヌのことも捜させなきゃ。
あたしが未だに魔法をつかえないのって、多分あいつがストーリー無視していなくなっちゃったせいなんだから。
そうじゃなきゃおかしいでしょ。だってヒロインとして召喚されたのはあたし。
王様や大神官が余計なことをしたせいで、なんかあいつがヒロインっぽくなっちゃって、きっとそのせいであたしの聖女の力が出てこないのよ。
……だけど、すっごく久々に会った王子様、やけにげっそりしてない?
目が充血してるし、クマを化粧で隠してるっぽい。
おまけに何よその頭巾?
え、あたしも被るの? ああ、結婚の伝統衣装なのね。初耳だけど別にいいわ。
だけど、せっかく王子に話しかけようとしたのに、王様が『会話禁止』とか余計なことを言い出した。
なんか女神のお告げがあったんだって。……嘘くさ。
でも余計なことは言わないようにした。
この王様、聖女相手でも「首を刎ねよ!」とか平気で叫びそうなんだもの。
そして思ったよりショボくてつまらない結婚式で、全然楽しくないランチをしていたら、お客さん達から楽しそうなお喋りが聞こえてきた。
「……つい最近小耳に挟んだのですが、かの大国ウェルディエ皇国にて、白き髪と翡翠の瞳を持つ、実に美しい娘が保護されたそうですぞ」
「わたくしもその乙女の話は小耳に挟みました。なんでも素晴らしい魔法の才を持つがため囚われの身となり、朝から晩までこき使われ、命からがら逃げ出してウェルディエ皇国に助けを求められたとか」
「つい先日ウェルディエ皇国の皇帝が、麗しの乙女の後ろ盾になることを宣言したと聞き及びます。あの話は事実だったのですな」
――えっ。
ちょ、ちょっと待ってよ。それって、セレスティーヌのこと?
真っ青になった王子がフォークをお皿の上に落とし、王様の歯ぎしりの音が聞こえてきた。
……嘘でしょ。あの女、皇国に保護されてんの?
皇国ってあれでしょ、アロイスっていう商人の。王子と張るぐらいイケメンって言われてたキャラ。
アロイスって、あたしを助けてくれるキャラじゃないの? 平民だけどさ。
皇帝が後ろ盾って何よ。なんでそんな展開になるわけ?
お客さん達はその後もなんか喋ってて、王様がテーブルを揺らす勢いで両手を突いた。
やばい眼光でお客さん達を睨んだかと思ったら、そのまま荒っぽい早足で広間を出て行ってしまった。
……ちょっと、この微妙な空気をどうしてくれんのよ!
あたしの結婚式なんだけど!? フワフワ王妃は全然あてになんないし、王子はおろおろしてるしさ!
大神官も大神官で、顔色悪くして自分のお皿を見つめながら考え込んでるみたい。
むかついて、あたしはランチに集中した。
誰か勝手にどうにかしなさいよ。あたしの知ったこっちゃないわ。
そしてその夜。本当だったら、嬉し恥ずかしの初夜、だったはずなのに。
あたしの部屋は夫婦の寝室じゃなく、塔の最上階だった。
「ちょっと。王子妃用の部屋に案内しなさいよ!!」
「こちらが妃殿下のお部屋にございます」
「はぁぁ!?」
お妃様になったのに、相変わらず監禁。
しかも王子は来なかった。初夜すっぽかし。
ふざけんなーっ!!
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読んでくださってありがとうございます!
更新のお知らせ:7/11~12投稿お休みしますm(_ _)m
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