2 / 2
晴
しおりを挟む
甥が誕生した。兄と義姉との間に生まれた男の子はとても愛らしく、斎賀家の血を色濃く受け継いだ緋色の瞳の子だった。これで斎賀家も安心だと一族で安心していた時、私は突然父上に呼びだされた。
「晴、今から言うことは酷な事だ。だが斎賀の名を背負う者としてどうか受け入れてほしい」
父上は真剣な眼差しで私にそう言った。
「……嫡男に跡継ぎが産まれたからには無駄な争いを起こさぬ為にも、子を作らないで欲しいのだ」
「っ……!」
まさかそんなことを言われるとは思わなかった。実際、私には従兄弟が何人もいる。つまり父上の弟たちも家庭を持ち、子供をもうけているということだ。それなのに何故、私だけそんなことを言われるのだろうか。強い結婚願望がある訳では無いが、これまで何もかも兄に譲って来た人生だった。いきなりそんなことを言われて納得できるはずが無い。
「どういうことです?叔父上も父上の結婚後に家庭を作っていると記憶していますが……?」
「それは分かっている。だがそこに苛烈な後継者争いがあったことは知らないだろう?私はたった二人しかいない息子に争いをして欲しくはないのだ」
「だからと言って私に生涯独身を貫けと?あんまりではありませんか……!」
いきなりそんなことを言われても、そう簡単に受け入れられるものでは無い。結婚願望が強い訳では無いが、生涯独身が確定というのはあまりにも理不尽だろう。
「本当にすまないことをしたと思っている。だが、どうか理解して欲しい!」
「……納得できません!私は次男というだけで伴侶を得ることと叶わないというのですか!」
「そ、その代わりと言ってはなんだが、領地も爵位も用意した」
父上は多少の罪悪感はあるのか、執務机の上にあった封筒を手に取り私に手渡してきた。
「 景陽令府、知っているだろう?斎賀家の領地で領都に次ぐ豊かな土地だ。お前一人暮らすのであれば税収だけでも充分贅沢ができる。国防省を辞めたってかまわない」
爵位や領地に関する書類を見ながら、父の言葉に我が耳を疑った。私が難関と言われる国防省の総合職試験に合格し、ここまでやってきたのは斎賀の名に恥じぬ人間でありたかったからだ。"辞めたっていい"その言葉を言われて私の中で何かが吹っ切れた。
「……これだけでは不十分です。景陽令府と隣接する 翠嶺府も頂きます」
確かに景陽令府は豊かな都市だが既に帝都への人口一極集中が問題になっている現代において、これから税収が落ちる地方都市に過ぎない。一つの府だけで満足してなるものか。
「なっ、翠嶺は……」
渋られるのは分かっている。翠嶺府は現在運輸省が計画している国家プロジェクトに関わる重要な場所になっており、帝都と西部地方を結ぶマグレブトレインの建設予定地の一つになっているからだ。
「マグレブの建設は私にお任せ下さい。斎賀本家の介入は許しません。私も爵位を持つ貴族家当主になるのだからかまいませんね?」
「……良いだろう。私もお前を苦しめたい訳じゃない。翠嶺府はお前にやろう。補佐官に準備させる」
父上とはその後も少し話したが、親子の会話とは思えぬほど業務的で寂しい会話だった。それ以来、私は父のことを斎賀公と呼ぶようになり、父も私のことを名前で呼ぶことはなくなった。
◆◇◆
「翠嶺・景陽令府領主、斎賀晴子爵閣下、ご到着でございます」
独立してから初めての社交場では酷く注目された。これまでは斎賀家の公子として紹介されていたが、正式に帝に爵位を賜ったため案内人も呼び方を変えたようだ。
「独立したという噂は本当だったのか」
「斎賀家から追い出されるようにして子爵位を賜ったと聞いたけど……」
「国防省にはそのまま席を置いているらしいぞ。来年には大佐になるのではと噂されている。独り身なのによくやるよ」
「領地の収入だけで十分贅沢ができるだろうに。なぜ必死に働く必要があるんだ?領地がない宮廷貴族ならまだしも」
「家を追い出されて不安なのでは?」
「でも翠嶺府ってマグレブの建設予定地ですわよね?斎賀公もなにかお考えあってのことでは?」
「私も同意見だ。次男とはいえ彼は優秀な人だ。とても追い出されたとは思えんが……」
人混みが煩わしく感じ、柱の影に立って居るとコソコソと話す声がすぐ後ろから聞こえる。どれも今社交界で噂になっていることだ。説明するのも面倒なので、そのまま噂も放置しているが実際にこうして耳に入ると鬱陶しいことこの上ない。
結局私はすぐにその場を立ち去り、新しく用意した屋敷帰ることにした。本来であれば有力者たちに挨拶をして周りたかったが、あまりそういった気分になれなかった。車に乗り込んで運転手に屋敷まで帰るように伝えその日は帰路についた。
色々な噂が広がった社交界での肩身は狭い。人々からの好奇の目は不快で、ただでさえ疑心暗鬼になっていた私の心をさらに蝕んでいった。年二回行われる全国領主会議では斎賀本家の面々とは別の場所に座る私の発言権などないに等しく、自分の無力さを思い知った。
そんな時、瀬川伯爵に声をかけられたのだ。
「今宵は良い風が吹きますなぁ」
人の良さそうな笑みを浮かべる彼から敵意は感じられなかった。しかし、彼が何を考えて私に声をかけて来たのか分からない。
「……」
「……貴殿は回りくどい言い方を好まないとお見受けする。単刀直入に言いましょう」
瀬川伯爵は笑みを浮かべながらも真剣な表情を浮かべて私に向き直った。
「当家の三男、凛と婚約を結びませんかな?」
「……急なご提案ですね」
「私の時とは違い、同性婚が法律として認められた時代ですからな。何らおかしいことではありますまい?」
婚約によって瀬川伯爵が得るものは何か。私はそれを必死に考えた。
「あぁ、あまり深く考えないでくだされ。当家はマグレブトレイン建設を推し進める運輸省の官僚と懇意にしておりまして、斎賀子爵とは縁を深めたいと思っていたのですよ」
本心はどうであれ、悪意があって近づいた訳では無さそうだ。
「この婚約、卿にとっても悪いことではありますまい?」
そうやって結ばれたのが私の運命の相手、瀬川凛との婚約だった。
◆◇◆
彼は私の心に安らぎを与えてくれた。
瀬川邸に赴き顔合わせをした時から相手を気遣いゆっくりと発言する姿勢はとても好ましかったし、控えめな印象を与えるその容姿も庇護欲を駆り立てた。週に一度、短い時間共にお茶をするだけでも私は十分に癒された。彼は高校生ということもあり、私に対して踏み込んだ話はしなかった。仕事の話やマグレブトレインに関する話は政界でも社交界でも嫌という程聞かれるが、彼とは純粋な会話を楽しむことが出来た。彼は強く自己主張をするタイプではないため私の話に必死に耳を傾けてくれるのはなんだか兎のようで可愛らしく思えたし、学校に関して質問するとオドオドしながらも答えてくれるのが面白かった。
彼は高校を卒業すると同時に社交界にデビューを果たした。彼の控えめな容姿は社交界で大きく注目されることはなかったが、一部不純な感情を抱いている輩はいたようで私は彼の隣で常に睨みをきかせていた。婚約者という関係に安心していた私も悪いのだろうが、彼は大学に進学してからというものあまり私に会ってくれない。多くの友人ができて、私に構う暇が減ってしまったのかもしれない。そう思った私は大学卒業と同時に結婚することを瀬川伯爵に提案し、了承してもらう事が出来た。帝国一の花嫁として迎える準備をして結婚しようと思った私は内裏にあがった際、帝に頼み込んで帝室の血筋の者しか使うことを許されない北霊殿の使用許可をもぎ取った。
しかし、ここでまた問題が発生してしまった。彼が卒業する年に北霊殿は第二皇子殿下の婚約式に使われるため、その一年後でないと使用許可が降りなかったのだ。私はこの時これを大きな問題だと思わずにいた。だがそれは誤りであったと社交界に広まる噂の数々を知り、今は後悔している。
「凛公子は婚約者に捨てられた」
「平凡な三男ではなく美男の次男が良かったのではないか」
「斎賀子爵は凛公子のことを好いていない」
「凛公子は金で斎賀子爵を買った」
腸が煮えくり返るような噂の数々を放置していた私が悪かった。こんなものは無視して早く彼に求婚していれば彼の名は帝国全土に知れ渡り、こんなことにはならなかった。
腕の中で気絶してしまった凛をみて私はここ数年の自分の行動を酷く後悔した。
「貴様、殺される覚悟はできたか?」
「なっ!なんだテメェ!」
凛のことを殴った男は反省する様子もなく、汚い口を大きく開けて威嚇してくる。
「平民如きが生意気な。凛は本来であればお前が口を聞くことも許されない身分なのだぞ。大内裏に入ることを許されているこの私と婚約を結ぶことが出来る尊き華族の身に傷をつけたこと、あの世で後悔しろ」
私は男を撃ち殺し、凛を家に連れて帰った。もちろん瀬川邸ではなく私の屋敷に連れて帰った。
目を覚ました凛は酷く混乱していたがすぐに結婚しようと迫る私の気迫に負けたのか、すぐに首を縦に振ってくれた。そこから私は怒涛の勢いで必要な手続きを全て終わらせて結婚式にまで持ち込んだ。
「北霊殿の使用許可をとるとは、流石は帝の血を引くお方だ」
「……知ってるか?斎賀子爵は北霊殿を予定より早く使わせて貰うために秘密裏に帝に何かを献上したって噂だ」
列席者からは帝との密約に関する噂が囁かれていたが、凛にさえ聞こえなければ痛くも痒くもない。帝には多少面倒な仕事を押し付けられたというだけだし、明るみになったとて面倒なことになるのは帝室の方だ。凛の前で完璧な夫としていれればそれでいい。
「は、晴様?どうかされましたか?」
可愛い我が婚約、いやたった今から妻になった凛は少し考え事をしていた私をみて不安げに問いかけてきた。私としたことが有象無象の参列者共に気を取られてしまっていたようだ。
「いいや、君と結婚できた幸福を噛み締めていたところさ」
凛は何も知らなくていい。鳥籠の中で、永遠に微笑んでくれていたら私が全てを捧げて君のことを守るから。
─────────────
思いつきで二時間くらいで書いた爆速執筆物語です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ではまた逢う日を願って 紅林
「晴、今から言うことは酷な事だ。だが斎賀の名を背負う者としてどうか受け入れてほしい」
父上は真剣な眼差しで私にそう言った。
「……嫡男に跡継ぎが産まれたからには無駄な争いを起こさぬ為にも、子を作らないで欲しいのだ」
「っ……!」
まさかそんなことを言われるとは思わなかった。実際、私には従兄弟が何人もいる。つまり父上の弟たちも家庭を持ち、子供をもうけているということだ。それなのに何故、私だけそんなことを言われるのだろうか。強い結婚願望がある訳では無いが、これまで何もかも兄に譲って来た人生だった。いきなりそんなことを言われて納得できるはずが無い。
「どういうことです?叔父上も父上の結婚後に家庭を作っていると記憶していますが……?」
「それは分かっている。だがそこに苛烈な後継者争いがあったことは知らないだろう?私はたった二人しかいない息子に争いをして欲しくはないのだ」
「だからと言って私に生涯独身を貫けと?あんまりではありませんか……!」
いきなりそんなことを言われても、そう簡単に受け入れられるものでは無い。結婚願望が強い訳では無いが、生涯独身が確定というのはあまりにも理不尽だろう。
「本当にすまないことをしたと思っている。だが、どうか理解して欲しい!」
「……納得できません!私は次男というだけで伴侶を得ることと叶わないというのですか!」
「そ、その代わりと言ってはなんだが、領地も爵位も用意した」
父上は多少の罪悪感はあるのか、執務机の上にあった封筒を手に取り私に手渡してきた。
「 景陽令府、知っているだろう?斎賀家の領地で領都に次ぐ豊かな土地だ。お前一人暮らすのであれば税収だけでも充分贅沢ができる。国防省を辞めたってかまわない」
爵位や領地に関する書類を見ながら、父の言葉に我が耳を疑った。私が難関と言われる国防省の総合職試験に合格し、ここまでやってきたのは斎賀の名に恥じぬ人間でありたかったからだ。"辞めたっていい"その言葉を言われて私の中で何かが吹っ切れた。
「……これだけでは不十分です。景陽令府と隣接する 翠嶺府も頂きます」
確かに景陽令府は豊かな都市だが既に帝都への人口一極集中が問題になっている現代において、これから税収が落ちる地方都市に過ぎない。一つの府だけで満足してなるものか。
「なっ、翠嶺は……」
渋られるのは分かっている。翠嶺府は現在運輸省が計画している国家プロジェクトに関わる重要な場所になっており、帝都と西部地方を結ぶマグレブトレインの建設予定地の一つになっているからだ。
「マグレブの建設は私にお任せ下さい。斎賀本家の介入は許しません。私も爵位を持つ貴族家当主になるのだからかまいませんね?」
「……良いだろう。私もお前を苦しめたい訳じゃない。翠嶺府はお前にやろう。補佐官に準備させる」
父上とはその後も少し話したが、親子の会話とは思えぬほど業務的で寂しい会話だった。それ以来、私は父のことを斎賀公と呼ぶようになり、父も私のことを名前で呼ぶことはなくなった。
◆◇◆
「翠嶺・景陽令府領主、斎賀晴子爵閣下、ご到着でございます」
独立してから初めての社交場では酷く注目された。これまでは斎賀家の公子として紹介されていたが、正式に帝に爵位を賜ったため案内人も呼び方を変えたようだ。
「独立したという噂は本当だったのか」
「斎賀家から追い出されるようにして子爵位を賜ったと聞いたけど……」
「国防省にはそのまま席を置いているらしいぞ。来年には大佐になるのではと噂されている。独り身なのによくやるよ」
「領地の収入だけで十分贅沢ができるだろうに。なぜ必死に働く必要があるんだ?領地がない宮廷貴族ならまだしも」
「家を追い出されて不安なのでは?」
「でも翠嶺府ってマグレブの建設予定地ですわよね?斎賀公もなにかお考えあってのことでは?」
「私も同意見だ。次男とはいえ彼は優秀な人だ。とても追い出されたとは思えんが……」
人混みが煩わしく感じ、柱の影に立って居るとコソコソと話す声がすぐ後ろから聞こえる。どれも今社交界で噂になっていることだ。説明するのも面倒なので、そのまま噂も放置しているが実際にこうして耳に入ると鬱陶しいことこの上ない。
結局私はすぐにその場を立ち去り、新しく用意した屋敷帰ることにした。本来であれば有力者たちに挨拶をして周りたかったが、あまりそういった気分になれなかった。車に乗り込んで運転手に屋敷まで帰るように伝えその日は帰路についた。
色々な噂が広がった社交界での肩身は狭い。人々からの好奇の目は不快で、ただでさえ疑心暗鬼になっていた私の心をさらに蝕んでいった。年二回行われる全国領主会議では斎賀本家の面々とは別の場所に座る私の発言権などないに等しく、自分の無力さを思い知った。
そんな時、瀬川伯爵に声をかけられたのだ。
「今宵は良い風が吹きますなぁ」
人の良さそうな笑みを浮かべる彼から敵意は感じられなかった。しかし、彼が何を考えて私に声をかけて来たのか分からない。
「……」
「……貴殿は回りくどい言い方を好まないとお見受けする。単刀直入に言いましょう」
瀬川伯爵は笑みを浮かべながらも真剣な表情を浮かべて私に向き直った。
「当家の三男、凛と婚約を結びませんかな?」
「……急なご提案ですね」
「私の時とは違い、同性婚が法律として認められた時代ですからな。何らおかしいことではありますまい?」
婚約によって瀬川伯爵が得るものは何か。私はそれを必死に考えた。
「あぁ、あまり深く考えないでくだされ。当家はマグレブトレイン建設を推し進める運輸省の官僚と懇意にしておりまして、斎賀子爵とは縁を深めたいと思っていたのですよ」
本心はどうであれ、悪意があって近づいた訳では無さそうだ。
「この婚約、卿にとっても悪いことではありますまい?」
そうやって結ばれたのが私の運命の相手、瀬川凛との婚約だった。
◆◇◆
彼は私の心に安らぎを与えてくれた。
瀬川邸に赴き顔合わせをした時から相手を気遣いゆっくりと発言する姿勢はとても好ましかったし、控えめな印象を与えるその容姿も庇護欲を駆り立てた。週に一度、短い時間共にお茶をするだけでも私は十分に癒された。彼は高校生ということもあり、私に対して踏み込んだ話はしなかった。仕事の話やマグレブトレインに関する話は政界でも社交界でも嫌という程聞かれるが、彼とは純粋な会話を楽しむことが出来た。彼は強く自己主張をするタイプではないため私の話に必死に耳を傾けてくれるのはなんだか兎のようで可愛らしく思えたし、学校に関して質問するとオドオドしながらも答えてくれるのが面白かった。
彼は高校を卒業すると同時に社交界にデビューを果たした。彼の控えめな容姿は社交界で大きく注目されることはなかったが、一部不純な感情を抱いている輩はいたようで私は彼の隣で常に睨みをきかせていた。婚約者という関係に安心していた私も悪いのだろうが、彼は大学に進学してからというものあまり私に会ってくれない。多くの友人ができて、私に構う暇が減ってしまったのかもしれない。そう思った私は大学卒業と同時に結婚することを瀬川伯爵に提案し、了承してもらう事が出来た。帝国一の花嫁として迎える準備をして結婚しようと思った私は内裏にあがった際、帝に頼み込んで帝室の血筋の者しか使うことを許されない北霊殿の使用許可をもぎ取った。
しかし、ここでまた問題が発生してしまった。彼が卒業する年に北霊殿は第二皇子殿下の婚約式に使われるため、その一年後でないと使用許可が降りなかったのだ。私はこの時これを大きな問題だと思わずにいた。だがそれは誤りであったと社交界に広まる噂の数々を知り、今は後悔している。
「凛公子は婚約者に捨てられた」
「平凡な三男ではなく美男の次男が良かったのではないか」
「斎賀子爵は凛公子のことを好いていない」
「凛公子は金で斎賀子爵を買った」
腸が煮えくり返るような噂の数々を放置していた私が悪かった。こんなものは無視して早く彼に求婚していれば彼の名は帝国全土に知れ渡り、こんなことにはならなかった。
腕の中で気絶してしまった凛をみて私はここ数年の自分の行動を酷く後悔した。
「貴様、殺される覚悟はできたか?」
「なっ!なんだテメェ!」
凛のことを殴った男は反省する様子もなく、汚い口を大きく開けて威嚇してくる。
「平民如きが生意気な。凛は本来であればお前が口を聞くことも許されない身分なのだぞ。大内裏に入ることを許されているこの私と婚約を結ぶことが出来る尊き華族の身に傷をつけたこと、あの世で後悔しろ」
私は男を撃ち殺し、凛を家に連れて帰った。もちろん瀬川邸ではなく私の屋敷に連れて帰った。
目を覚ました凛は酷く混乱していたがすぐに結婚しようと迫る私の気迫に負けたのか、すぐに首を縦に振ってくれた。そこから私は怒涛の勢いで必要な手続きを全て終わらせて結婚式にまで持ち込んだ。
「北霊殿の使用許可をとるとは、流石は帝の血を引くお方だ」
「……知ってるか?斎賀子爵は北霊殿を予定より早く使わせて貰うために秘密裏に帝に何かを献上したって噂だ」
列席者からは帝との密約に関する噂が囁かれていたが、凛にさえ聞こえなければ痛くも痒くもない。帝には多少面倒な仕事を押し付けられたというだけだし、明るみになったとて面倒なことになるのは帝室の方だ。凛の前で完璧な夫としていれればそれでいい。
「は、晴様?どうかされましたか?」
可愛い我が婚約、いやたった今から妻になった凛は少し考え事をしていた私をみて不安げに問いかけてきた。私としたことが有象無象の参列者共に気を取られてしまっていたようだ。
「いいや、君と結婚できた幸福を噛み締めていたところさ」
凛は何も知らなくていい。鳥籠の中で、永遠に微笑んでくれていたら私が全てを捧げて君のことを守るから。
─────────────
思いつきで二時間くらいで書いた爆速執筆物語です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ではまた逢う日を願って 紅林
773
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)
姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった
近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。
それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。
初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる