天の求婚

紅林

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本編

閑話〜とある新聞記者の記録

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 俺は新聞記者として初めて単独取材にやってきた。初の単独任務に気を引き締めて参加していたんだが、今回の仕事は上司が急なインフルエンザにならなければ俺みたいな初心者なんかに任せられないくらいの大仕事だったから俺はすごく緊張していた。周りを見ても選び抜かれたライバル新聞社やウェブニュース運営会社、週刊誌記者、国外の主要メディアの記者がここ江流波宮殿の中にある首相官邸の記者会見室に集まってたんだ。それに最前列にはマニュレー大使もいて、室内は緊張に包まれてたんだ。まぁ当たり前だよな、だって今日は第一天子殿下が国内外に向けて天帝に即位することを宣言する「宣誓の儀」をするんだから。つい先月の一般公開されなかった「帝位継承の儀」ですら国内外から大注目だったし、国営テレビで生放送もあるくらいだから注目度の高さは前のよりやばいかも

「皆様、ご起立願います」

 内閣府の職員っぽい人の声掛けによりずらりと並べられたパイプ椅子に座る各メディアの記者たちは立ち上がり腰を曲げ、目線を下に落とした。多分天王殿下たちが入場するんだと思う

「流星天王殿下、にこ内天王殿下、喜美子内天王殿下、宏昌天王殿下、奈津子内天王殿下、虎太郎天王殿下、綾斗天王殿下、華内天王殿下、恵子内天王殿下、璃玖天王殿下、椋天王殿下、豊内天王殿下、里子内天王殿下、佑馬天王殿下のご入場にございます」

 やっぱり流星殿下が入場した瞬間、みんな震えてた。もちろん俺も緊張で震えた。だって大天族が目の前にずらりと並んでるなんて現実味があまりにも無さすぎて、俺は視線を中々上げることが出来なかった

「続きまして桃子ももこ第二天子殿下、元輝げんき第三天子殿下のご入場です」

 内閣府の職員がそう言うと会場内が一気にザワついた。当たり前だよな、俺もビックリしたし。だって帝位継承争いに敗れて失脚したはずの桃子天子がなんで朝廷の公式の場に出てくるんだ?

 しかし俺たちのざわめきもすぐに収まることになった。なぜなら大天族全員が静かに頭を下げたためだ。ついに新たなる天帝陛下が御姿をお見せになるのだ

「「「「……」」」」

 記者会見室は静まり返った。部屋には一人の足音だけが響き渡り俺はあまりの緊張に震えた

「お直り下さい」

 端に控える職員が記者たちに呼びかけられたが完全に頭をあげる記者は居なかった。ほとんどの記者が目線を床に落としたままだった。陛下と直接視線を合わせるのは失礼な行為に当たるから当たり前と言えば当たり前だよな。華族ですら視線を合わせるのは無礼な行為なのに。天帝を含め大天族という一族は俺たち帝国臣民にとってそれくらい絶対的な存在だからな

「まずはここに国内外より集まってくれたメディア関係者の皆様に感謝の言葉を述べさせて頂きます」

 陛下は丁寧な言葉でそう述べた

「そして直接お越しくださったマニュレー共和国大使殿にも感謝します」

 その言葉に俺の三列前に立っていたマニュレーの大使が深く頭を下げた
 そしてようやくボイスレコーダーの電源を入れる許可がおりた。多分天帝陛下の宣誓の御言葉があるのだろう。俺は素早く胸ポケットからボイスレコーダーを取り出して電源ボタンをタップした

「偉大なる我が父である先帝陛下のご崩御に伴い、先帝陛下のご遺言に相反する不足の事態が発生し、帝国臣民及び国交を持つ友好国の皆様に多大なるご迷惑をおかけしたことをここに謝罪致します。先帝陛下は戦後の戦勝国の君主として国際社会が不安定になる中で懸命に国の舵取りを行い、帝国を世界の強国の一つに成長させました。私はその意志を受け継ぎ、太平天帝国憲法にのっとり最高国家君主としてのつとめを果たすことをここに宣誓いたします」

 陛下が即位の言葉を読み終えると再び室内は静寂に包まれた。そしてしばらくすると何人かの有力華族が集められた右側の列から枢密院議長、沢中公爵が陛下の前に設置されたマイクスタンドの前に立った。深く頭を下げてからジャケットの胸ポケットから紙を取り出して読み始める

「新たな帝国の太陽であらせられる天帝陛下に謹んで申し上げます。天帝陛下は本日先帝陛下のご意志を受け継ぎ、めでたく帝位につかれました。帝国臣民を代表してお喜び申し上げます。我々帝国臣民を思い、我が国の平和と世界の平和を常に願いながら政をなされた先帝陛下の思いを尊重し、太平天帝国憲法にのっとり最高国家君主となられるとのお考えに深く感銘を受け、天帝陛下への尊敬の念を今一度新たに致しました。我々帝国臣民一同は天帝陛下を帝国の新たなる太陽とし、誇りある太平天帝国の輝かしい未来、そして人々が飢えることなく豊かに暮らし、帝国の文化がより一層の発展を遂げる時代を創り上げていくため、最善の努力を尽くします。ここに天帝陛下と大天族の皆様の更なる繁栄をお祈り申し上げ、宣誓の儀のお祝いの言葉と致します」

 続いて華族と宮内省の幹部が沢中公爵の背後に並び万歳三唱が行われた。平民の俺たちは顔を上げることすら出来なかったが陛下は宣誓の儀が終わると直々に記者の俺たちに御言葉を発せられた

「記者の皆様、お仕事お疲れ様です。素敵な記事をよろしくお願いします」
「「「「「……」」」」」

 俺を含め席に並んでいた各社の記者は更に頭を下げて天帝陛下への敬意を表した
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