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本編
東の庭
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江流波宮殿の中でも大天族が住み政務を行う建物は中央宮殿と呼ばれ厳重なセキュリティの元に帝国で最も安全な場所となっている。そんな中央宮殿の東の庭は帝国古来よりの伝統技術を使って庭師がつくりあげた美しき紅葉が広がる場所でまさに十一月になった今見頃を迎えていた。
「美しいだろう」
「えぇ、本当に素晴らしい庭です」
蒼士にそう言われた大貴は庭を埋め尽くす紅く色付いたカエデの葉を見渡し深く頷いた。二人は庭の中に点在しているガゼボの一つに用意された椅子に腰かけていた。二人が挟むテーブルには色とりどりのスイーツやサンドイッチが並べられておりそのひとつひとつが非常に美しく、宮内省の膳部によって丁寧に作られた物であるとひと目でわかる
「本当はカエデよりイチョウの方が好きなんだがな。庭園管理部に言ったら『銀杏臭くなる』って断られたよ」
「はははっ、確かにイチョウは銀杏が下に落ちて雨が降ったりすると凄く臭いですよね。庭園管理部の方の気持ちも分かります」
「私は銀杏が大好きだから問題ないって言ってやったら、『宮殿を臭くする訳にはいきません』って言われてしまったよ」
「ははっ、庭園管理部の方の顔が目に浮かびます。陛下に命令されれば植えざるを得ませんから」
「流石に私もそれくらいは分かっているさ。だから命令はしてない」
蒼士はイタズラっ子のような笑顔を浮かべた。その後もたわいもない話を続けていると、急に蒼士が真剣な表情を浮かべた
「それで、子爵は言いたいことがあるんだろう?公爵から聞いているぞ」
「……小出子爵と中川子爵のことです」
事前に横田川公爵から話を聞いていたのだろう。大貴は話をいつ切り出そうか迷っていたが、タイミングよく向こうから話を振られたことに驚きながらもつい先日の出来事について伝えた
「なるほど。まぁ小出子爵と中川子爵が君に抗議をしたのは当たり前と言えば当たり前だな」
「……」
「よし分かった」
「え?」
当たり前の抗議と言われてしまいどうすれば良いのかと大貴が考えていると、蒼士がそう言った
「中川子爵は確か法務省の民事局に務めていたな?彼には民事局長補佐のポストを約束しよう」
「え!?」
「小出子爵は総務省の国家情報管理局だから、彼女にも同じく局長補佐のポストを与えよう」
「よ、よろしいのですか!?」
「彼らは堀江家の流れを汲む純血華族だ。何千年にも渡り帝国を支えてきた実績があるし、多少の昇進があってもおかしくないだろう?」
蒼士は胸ポケットから取り出したスマートフォンを操作してPDF化された任命書が映った画面を大貴に見せた。
「実は公爵から聞いた時にもう枢密院に命じて決定させていたんだ」
「本当ですか!?もう枢密院に?」
「そうだ。それにそれだけじゃないぞ。分家だけ優遇したら堀江侯爵が可哀想だろう?だから彼女には枢密院顧問官の席を用意した。幸い定員は三枠ほど空いていたからちょうど良かったからな」
「っ……!」
枢密院は立法からも行政からも司法からも独立した帝国第四の権力と呼ばれる組織で天帝直属の顧問機関だ。百年ほど前に大天族の失策が続き権威が地の底に落ちた頃は枢密院がこの国を支配していたと言われるほどだ。
「そんな重要なポストに智子様を?」
「堀江侯は長年この国に尽くし、貴族院議員としてよく働いてくれた。顧問官になる資格は十分にある」
「ありがとうございます!智子様も大変お喜びになると思います!」
大貴は目先の問題が解決したことに喜び、顔を綻ばせた
「堀江一門を味方に付けれるなら安いものだ」
「良かったです。これで母も安心すると思います」
「義母上にもよろしく伝えてくれ」
「はい!もちろんにございます!」
そうして抱えていた問題を解決することができた大貴はようやく心を落ち着かせることができたのだった
「美しいだろう」
「えぇ、本当に素晴らしい庭です」
蒼士にそう言われた大貴は庭を埋め尽くす紅く色付いたカエデの葉を見渡し深く頷いた。二人は庭の中に点在しているガゼボの一つに用意された椅子に腰かけていた。二人が挟むテーブルには色とりどりのスイーツやサンドイッチが並べられておりそのひとつひとつが非常に美しく、宮内省の膳部によって丁寧に作られた物であるとひと目でわかる
「本当はカエデよりイチョウの方が好きなんだがな。庭園管理部に言ったら『銀杏臭くなる』って断られたよ」
「はははっ、確かにイチョウは銀杏が下に落ちて雨が降ったりすると凄く臭いですよね。庭園管理部の方の気持ちも分かります」
「私は銀杏が大好きだから問題ないって言ってやったら、『宮殿を臭くする訳にはいきません』って言われてしまったよ」
「ははっ、庭園管理部の方の顔が目に浮かびます。陛下に命令されれば植えざるを得ませんから」
「流石に私もそれくらいは分かっているさ。だから命令はしてない」
蒼士はイタズラっ子のような笑顔を浮かべた。その後もたわいもない話を続けていると、急に蒼士が真剣な表情を浮かべた
「それで、子爵は言いたいことがあるんだろう?公爵から聞いているぞ」
「……小出子爵と中川子爵のことです」
事前に横田川公爵から話を聞いていたのだろう。大貴は話をいつ切り出そうか迷っていたが、タイミングよく向こうから話を振られたことに驚きながらもつい先日の出来事について伝えた
「なるほど。まぁ小出子爵と中川子爵が君に抗議をしたのは当たり前と言えば当たり前だな」
「……」
「よし分かった」
「え?」
当たり前の抗議と言われてしまいどうすれば良いのかと大貴が考えていると、蒼士がそう言った
「中川子爵は確か法務省の民事局に務めていたな?彼には民事局長補佐のポストを約束しよう」
「え!?」
「小出子爵は総務省の国家情報管理局だから、彼女にも同じく局長補佐のポストを与えよう」
「よ、よろしいのですか!?」
「彼らは堀江家の流れを汲む純血華族だ。何千年にも渡り帝国を支えてきた実績があるし、多少の昇進があってもおかしくないだろう?」
蒼士は胸ポケットから取り出したスマートフォンを操作してPDF化された任命書が映った画面を大貴に見せた。
「実は公爵から聞いた時にもう枢密院に命じて決定させていたんだ」
「本当ですか!?もう枢密院に?」
「そうだ。それにそれだけじゃないぞ。分家だけ優遇したら堀江侯爵が可哀想だろう?だから彼女には枢密院顧問官の席を用意した。幸い定員は三枠ほど空いていたからちょうど良かったからな」
「っ……!」
枢密院は立法からも行政からも司法からも独立した帝国第四の権力と呼ばれる組織で天帝直属の顧問機関だ。百年ほど前に大天族の失策が続き権威が地の底に落ちた頃は枢密院がこの国を支配していたと言われるほどだ。
「そんな重要なポストに智子様を?」
「堀江侯は長年この国に尽くし、貴族院議員としてよく働いてくれた。顧問官になる資格は十分にある」
「ありがとうございます!智子様も大変お喜びになると思います!」
大貴は目先の問題が解決したことに喜び、顔を綻ばせた
「堀江一門を味方に付けれるなら安いものだ」
「良かったです。これで母も安心すると思います」
「義母上にもよろしく伝えてくれ」
「はい!もちろんにございます!」
そうして抱えていた問題を解決することができた大貴はようやく心を落ち着かせることができたのだった
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